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エアツェルング・フォン・ザイン

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そのにじゅうはち

「フラン、来たぞ」

「お帰り!お兄様!」

地下室に入ると、お帰りと言われた。

「普通いらっしゃいじゃね?」

「いいの!お帰りなの!」

「お、おう、ただいま」

すると嬉しそうにフランがはにかんだ。

天蓋付きのベッドに座るフラン、その隣に腰をおろす。

「今日は何を教えてくれるの?」

ここに来るようになって、フランには勉強を教えている。

主に数学だ。

社会科は教える意味が無い、語学は悪魔の権能でペラペラ、科学を教えるのは御法度。

よって数学程度しか教えられる事が無い。

科学が御法度な理由?

科学を教えるのは幻想を暴く事と同義、つまり妖怪の力を削いでしまう。

寺子屋で働くようになって、一番始めに慧音から言われた事だ。

「いや、今日はお前に貰った羽の使い道を考えたくてな」

ストレージから羽を一つ取り出す。

「羽?」

フランが羽をぴこぴこ動かし、シャラン…と澄んだ音色が響いた。

「そう。羽。
パチュリーが言うには魔法の触媒にする。
食べてパワーアップ。
っていう使い方が出来るらしい」

「へ~…どうするの?」

「んー…正直どっちでもいい。
今作ってる人形に仕込むのもありだし、食べるのもありだと思ってる」

「じゃぁどっちもやってみようよ!」

あ、この顔あれだ。

飲み会とかでイッキ進めてくる顔だ。

「ほら!早く食べてみてよ!」

すごくキラキラした眼でこちらを見てくる。

「はぁ…わかったよ」

羽を口に含み、咀嚼する。

脆い飴のように、口の中で崩れる。

飲み込むと、体の奥底から、暖かい何かが溢れて来た。

「どう?」

「んー…なんか…暖かい感じがするけど、特にそれがどうという事は無いな…
フランは何か感じるか?」

「んー…よくわかんない」

ストレージから追加で五つ取りだし、食べてみたが、大した変化は無かった。

「………」

「………」

「何も変わらんな」

「そうだね…」

「どうする?」

「どうしよう?」

うーん…何かしら変化があると思ったんだがなぁ…

「試しに何かやってみよーよ!」

「何かって?」

「弾幕ごっことか?」

「あー…や、弾幕ごっこってあんまり好きじゃなくてな…」

「どうして?」

「加減が難しいし、俺本来のバトルスタイルと真逆でな」

「?」

「弾幕ごっこって当たったらアウトだろ?
俺のバトルスタイルは防御力を高めた上で受けるか受け流すやり方なんだよ」

剛気功で硬化させた肉体に相手の攻撃を這わせて受け流す、もしくはそのまま受けてやり過ごす。

紅霧異変の際にパチュリーの戦闘用全力攻撃を耐えたように、避けずにガードするのが俺のスタイルだ。

「そうなの?」

「おう。それに心意は手加減不可能だしなぁ…」

「心意?」

「『心ヨリイヅル意シ』すなわち『心意』。
意志の力で世界を書き換える技術だ。
だから心意を使うなら、強くイメージしなきゃいけない。
相手を斬るイメージを、撃ち抜くイメージを。
イメージが揺らげば心意の力は消滅する。
だから手加減は不可能だ」

一応、星騎士の忠誠剣と剛気功は即時展開できる。

ただし星騎士の忠誠剣は詠唱無しではその半分も力を発揮しない。

「他には無いの?妖力とか、魔力とか」

「有るには有るが、ちと苦手でな…
魔法は多少扱えるが妖力はからきしでな」

「妖精なのに?」

「妖精なのに」

今、俺が使えるのは神聖術のエレメントで作る弾幕、ALO式の魔法、心意、GGOで使っていた銃火器だ。

妖力弾やら魔力弾とかの使い方は知らん。

神聖術以外では、スペルカードを作るのは不可能。

否、作ったとしても薄すぎる。

ALOでは物理アタッカーだったので攻撃魔法は最小限だし唯一使えそうなのはレーザー(月光波)だけだ。

銃火器では線か点の攻撃しか出来ない(ショットガンを持ってないため)。

心意で弾幕を張るのは不可能。

かろうじて神聖術のエレメント大量生成で張っている状態だ。

「じゃぁシンイ見せてよ!」

「心意をか?」

「うん!」

心意を見せろ…か。

五指を揃え、抜き手の形を作る。

それを正面に向け…

「レーザーランス!」

第一段階正方向射程拡張系心意技レーザーランス。

心意の基礎中の基礎の技で、騎士長ベルクーリの十八番『心意之太刀』の劣化版である。

本来は手甲や鎧、籠手を着け、揃えた五指を剣や槍に見立てる技なので、今は少し威力が落ちている。

「それがシンイ?」

「基礎の基礎だがな」

「シンイの他には何が出来るの?」

「あー…そうさなぁ…」

スカーレット・シスターズ、召喚。

手の中二つの拳銃が現れる。

「銃ってわかるか?」

「ちっさい玉を飛ばすやつ?」

「そうそう、で、これが銃」

フランに二つを見せる。

「スカーレット・デビルとGrip&breakdown。
俺が昔使っていた銃だ。
遊びとはいえ、コイツらには随分と助けられたよ」

「スカーレット・デビル?お姉様の呼び名?」

「あー…まぁ、偶然だよ偶然」

そう言うことにしておこう。

「ふーん」

そんな風に、前世での得物やそれに関するエピソードをフランに話した。

そして…

「ねぇねぇ」

「なんだ?」

「お兄様って元は人間なんだよね?」

「そうだが…?」

「じゃぁさ!








血を飲ませて!」 
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