エアツェルング・フォン・ザイン
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そのにじゅうなな
午後五時
「今日は紅魔館いくけど、アリスも来るか?」
「いえ、いいわ。フランの相手は疲れるもの」
「それもそうか。玉藻、行くぞ」
「は~い!」
玉藻がヒトガタ形態で応えた。
という訳で…
「やって来ました紅魔館!」
門の前に行くと案の定美鈴が居眠りしていた。
「ご主人?」
「ああ、いや、なんでもないぞ」
えーっと…
ストレージからアイテムを取り出す。
そして、とりだしたアイテムを…
「相手の顔面にシュゥゥゥーッ!
超!エキサイティン!」
ばちゃ!と音がして、美鈴の顔面に白いクリームが叩き付けられた。
そう、取り出したアイテムはパイだったのだ!
「よし、玉藻、入るぞ」
「う、うん。わかった」
そして、紅魔館の門をくぐり、敷地内に入ろうとした時…
「入らせると思ったんですか?」
地獄から聞こえて来るような低い声が聞こえた。
瞬時に玉藻が何処かへ走っていった。
主人を置いて逃げるなんて…酷いヤツだ…
「おお、美鈴じゃないか。その顔面の白いクリームはどうしたんだ?」
「さぁ?大方どこかの妖精がやったんじゃないですかねぇ…!」
「それは御愁傷様」
「ええ…そうですね……死ね!くそ妖精!」
と美鈴が殴りかかってきた。
それも気を纏わせ、虹色に輝く拳で…
「やってみろや居眠り門番!」
GGOストレージオープン。
ナックルダスター召喚!
「剛気功!」
心意を纏わせたナックルダスターで迎撃する。
二つの力が衝突し、爆音が鳴り響いた。
『気』と『心意』。
肉体に宿る力と魂に宿る力。
似ているようで、根源の異なる力。
相反する力の衝突で、爆発が起こり、俺も美鈴もはね飛ばされた。
「ぐぅ…!」
翅を展開し、空中で制動。
「あーあ…腕が逝ったな…」
右腕に力が入らない、ズキズキと痛む。
幸い、着ていた着物に傷は無い。
「ジェネレート ルミナスエレメント リカバリー ライトアーム」
神聖術で右手を治し、再び構える。
見れば美鈴も構えていた。
二回目の激突…とはならなかった。
なぜなら…
「にゃぁー!?ナイフが!ナイフが頭に!?」
美鈴の頭にナイフが刺さっていたからだ。
「美鈴、貴方何をしていたのかしら?」
「さ、咲夜さん!?」
「妹様の客人に手を上げるとは言語道断。
少し反省なさい」
トストス、と美鈴に追加でナイフが突き刺さった。
「さ、ザイン様。コチラへどうぞ」
「あ、あぁ、うん」
恨めしそうにコチラを睨む美鈴を尻目に、咲夜に連れられ、紅魔館に入った。
そういえば玉藻は何処行ったんだろうか。
「なぁ、一つ聞いていいか」
「はい、何でしょうか?」
「美鈴に容赦無いけど、咲夜って幾つなんだ? 」
見た目は十代後半から二十代前半だが…
「そうですね…そろそろ百…三十ですかね」
「百三十!?」
嘘だろおい!
「ええ、能力の影響で体の時間が酷く遅く流れるのです。
パチュリー様によれば、時間の遅延化は今も進んでいるそうです」
なるほど…咲夜の能力にそんな副作用があるとは…
「このまま行けば、お嬢様と同じくらい長生きするそうです」
「マジで?不死身の吸血鬼と同等?」
「はい。肉体の老化はいずれ止まるそうですから」
肉体の老化が止まる…?
それって…
「アリスとかパチュリーが使ってる術と同じなんじゃ?」
「いえ、あくまで伸びるのは寿命だけで、殺されれば死にますし食べなくても死ぬそうです」
捨虫の術、捨食の術。
前者は代謝を止め、後者は魔力で体を動かす術だ。
この二つはセットで扱われる。
しかし咲夜は老化が止まるだけで代謝はあるらしい。
老化=代謝の筈なのだが…細胞分裂とかどうなってるんだろうか…。
それにしても、130かぁ…
「どうされましたか?」
「いや、俺が130の時って何してたかなーと思ってな」
「失礼ながら、おいくつですか?」
「えーっと、たしか…二百……四十くらい…?」
「私よりも年上なんですね」
「ああ、俺は少しおかしな人生送ってから妖精になったからな」
「おかしな人生…ですか?」
「そう。
17までは普通の人間だったけど、その夏に異世界に飛ばされてな。
その異世界で二百年以上過ごした。
そして元の世界に帰ったあと、また別の世界に…この世界に来たのさ」
「元は人間だったのですか?」
「そうだよ」
と、話している内に、図書館に到着した。
フランの部屋は未だに地下室だ。
理由は面倒くさいかららしい。
「あら、来たのね、ザイン」
「パチュリーか」
「フランに会いに来たのかしら?」
「ああ。出来ればお前にも来て欲しいがな」
「何かあったの?」
「以前フランから貰った羽の使い道を少しな」
「貴方とフランで決めなさい」
「いや、使い方を知らんのだが」
「あれは高純度魔力結晶よ。魔法の触媒なり、食べて力をつけるなり好きになさい」
「食えるのか?」
「食べたのでしょう?貴方から僅かにフランの力を感じるわ」
そういえば、文が来たときに一欠片飲み込んだな…
「あー…あれは事故みたいな物でな」
「そう。使い方は話したわ。後は自分達で決めなさい」
なんか…パチュリーって放任主義だなぁ…
「そか、じゃ、フランの所行ってくるぜ」
パチュリーにそう言い残し、フランの部屋へ向かった。
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