エアツェルング・フォン・ザイン
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そのにじゅうきゅう
「じゃぁさ!血を飲ませて!」
「は?」
血…?
「血って俺の血をか?」
「うん!」
フランがすげーキラキラした眼でこちらを見る。
「何で俺の血を?」
「あのねー、私今まで人から血を吸った事ないんだよねー」
え?まじで?
「ならどうしてたんだ?」
「時々咲夜が狩ってきた人間の血をグラスに入れて持ってきてたよ」
うわぁ…マジか…咲夜大変だな…ん?
「時々って言ったか?」
「うん」
「吸血鬼って血を飲まないと死ぬんじゃないのか?」
「そんな事ないよ。えーっとね、お姉様は"たばこ"みたいな物だって言ってたけど…。
"たばこ"ってなぁに?」
なるほど…つまり嗜好品って事か…
「たばこって言うのは葉っぱに火を着けて、出てきた煙を吸う物だよ」
「それって何が楽しいの?苦しくないの?」
「慣れれば美味しいらしいぞ。俺は好きじゃないがな」
たしか、レミィは少食であんまり血を飲めなくて、溢れた血で服が赤くなるんだっけ…それが由来でスカーレット・デビルって呼ばれてるんだったはず。
フランは大丈夫なんだろうか…?
「えーっと、フラン」
「なぁに?」
「血、飲めるのか?」
「さぁ?」
さぁ?って…まぁ…やらせてみるか…
「じゃぁやってみるか?」
「いいの!?」
「お前が言い出したんだろうが」
帯を解き、着物をはだけさせる。
「ほら、飲んでいいぞ」
首を傾け、フランに差し出す。
「本当にいいの?」
「おう」
フランがベッドから立ち上がり、俺の膝の上に、向き合って座った。
対面座…ゲフンゲフン何でもない。
「じゃぁ…いただきまーす!」
フランが俺の首に顔を近づけ…
かぷっ…
「ぐぁ!?」
「んっ…」
体の奥から、強烈な快感と苦痛が生じた。
「ちょ!フラン!あぁん!待って!マジ…ひぁ!?」
「んく…んく…んく…」
頭がチカチカする…!
「頼む…待っ…ひぅ!?…フラ…ん…」
あ…マジ…もう…
「ぐっ…がぁぁぁぁぁ!」
「わ!?」
体の中で、快感とも苦痛ともつかない何かが弾け、後ろに倒れ込んでしまった。
「あっ…ぐ…あ……」
何…だ…?いま…の…?
「お兄様!お兄様!」
「ふ…らん…」
「お兄様大丈夫!?」
あー…
「色々大丈夫じゃないけど…取り敢えず、大丈夫」
なんか…主にプライドとかそこら辺が大丈夫じゃない気がする。
「で、俺の血の味はどうだった?」
「美味しかったよ!またやっていい?」
馬乗り状態のフランが、嬉しそうに尋ねた。
「……………………」
「?」
俺の上で、フランがコテンと首を傾げた。
「いい…ぞ」
「やったぁ!」
この顔を見てNOと言えるヤツは恐らく人格破綻者だろう。
「だが今はダメだ。少し休ませろ…」
「うん、わかった」
ストレージからヒールクリスタルを取り出す。
クリスタルを掲げ、ボイスコマンドを唱える。
「ヒール!」
パキン!とクリスタルが砕け散り、淡い光と共に、気だるさが消えていった。
気だるさは解消されたが、起き上がる気力が無い。
ベッドに寝転んだまま、フランと話していると、部屋のドアが叩かれた。
「妹様、ザイン様、失礼します」
「咲夜?どうしたの?」
「食事の用意ができました。ザイン様は如何致しますか?」
えーっと?
「お兄様!一緒に食べよっ!」
うーん…今…だいたい零時か…
「頂こうかな」
「かしこまりました。
ご案内致します」
俺とフランは、咲夜に案内され、地下室を後にした。
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