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夢幻水滸伝

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第四十五話 神戸の大工その七

 その中の白犬の頭と人と犬を合わせた毛深い身体を持つ一六五程の背丈の西洋の農民のそれを思わせる服とブーツの犬人、フォークで牧草の手入れをしている者のところに行ってだ、芥川はその犬人に声をかけた。
「有島美奈代、人短星やな」
「それが何か」
「僕は関西の芥川宗介っていうんやけどな」
「四智星、神捷星の」
「そや、自分に話があってきた」
「といいますと」
 丁寧な口調でだ、その犬人有島美奈代は作業を中断して芥川と狐と向かい合ってそのうえで本格的に応えた。
「私に紫さんがですね」
「用があってな、関西の勢力としてな」
「私の酪農つまり畜産の知識とですね」
「神具の力を借りたいんや」
「神農書のですね」
「そうや、畜産関係のあらゆる知識が入った書もや」
 彼女と共にというのだ。
「勿論自分とな」
「私は戦えないですが」
「戦えへんでもや」
「私の畜産の知識で、ですか」
「国を豊かにして欲しいんや、そして民もな」
「戦に勝つ為ではないのですね」
「それもある、しかしそれは第一やない」 
 あくまでとだ、芥川は美奈代にこのことは確かに話した。
「日本と太平洋、世界を統一する為の手段の一つでな」
「主ではなく」
「主はあくまでや」
「国と民を豊かにして」
「そしてこの世界を救う」
 芥川はここでも確かな声を出した。
「その為に自分の力が必要なんや」
「それで、なのですね」
「ここに来たんや」 
 美奈代の目の前、そこにというのだ。
「こうしてな」
「そうですか、その為に私に」
「今うちは自分以外にもそれぞれの内政の分野の専門家の星の奴を入れてる」
「国と民を豊かにし世界を救う為に」
「世界を一つにする為に戦もするけれどな」
「私は戦は好きではありません」
 美奈代は芥川にこのことを話した。
「しかし人が沢山の肉や卵を食べて笑顔になるのを見るのは好きです」
「多くの民がやな」
「日本全土そして太平洋に世界で」
「その為に自分を呼んだんや、ええ家畜がようさんおればな」
 それでというのだ。
「その分民がええことになるな」
「多くの肉や乳製品、卵があれば」
 そうしたものを食べてというのだ。
「腹が満ち栄養も摂れます」
「そして家畜は農作業にも使える」
「牛や馬も、そして毛や皮も使えます」
「それでや、自分にはや」
「国と民にですね」
「そうしたものを生み出す為に頑張って欲しい」
「畜産から国を豊かにする」 
 美奈代は確かな声で言った。
「その為に」
「そうしてもらいたいんや、ええか」
「そういうことでしたら。若しもです」
 美奈代は芥川の話を受けたうえでこうも言った。
「戦の為に来てくれと言われますと」
「その時はやな」
「はい、断っていました」
 今の誘いをというのだ。
「そうしていました」
「そやったか、それは僕等は持ってない」
「戦を主とする考えはですね」
「それなしでことを進めていけばそれに越したことはない」
「戦なくしてですね」
「それで日本も太平洋も世界も統一出来たらな」
 それでというのだ。
「最高や、まあそれは無理やけどな」
「戦なくしての統一はですね」
「無理や、けど出来るだけな」
 戦をせずにというのだ。 
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