夢幻水滸伝
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第四十五話 神戸の大工その八
「政で進めていけたらええわ」
「そうしたお考えならです」
美奈代はにこりと笑って芥川に応えた。
「私も是非。これまで紫さんはどうした方かと見てきましたが」
この牧場で働きながらだ、美奈代も見ていたのだ。
「そうかもと思っていました」
「綾乃ちゃん実際好戦的やないで」
「ご自身が戦の場に出られてもですね」
「それでもや」
戦は好きではない、これは実際にその通りである。
「そやから戦自体はいつもあっさり終わってるやろ」
「伝え聞く限りではそうですね」
「民衆とか田畑には手を出さへんしな」
このことは関西の星の者も誰もが注意していることでもある、彼等の迷惑と国に及ぶ害を考えてのことだ。
「綾乃ちゃんは戦よりも政やで」
「そちらのお考えの方ですね」
「それでその政もな」
「国と民を豊かにする」
「そうして世界を救うことを考えてるんや」
「立派なことです、では」
その立派、見事と言っていいその政にとだ。美奈代は自ら申し出た。
「私もまた」
「入ってくれるか」
「及ばずながら」
「ほなな」
「では牧場の方々にお別れを告げて」
「それからか」
「すぐに都に向かいます」
こう芥川に話した。
「そうさせて頂きます」
「転移の術を使ってやな」
「はい、すぐに」
「ほなな、また都で会おうな」
「そしてお会いしてですね」
「一緒にやってこな」
「是非共」
美奈代は白犬、秋田犬のその顔でにこりと笑って応えた。こうして牧童である彼女も関西の陣営に加わった。
美奈代も迎え入れることに成功した芥川は彼が声をかけるべき最後の者がいる石見に向かった。それでまた狐に乗って空を飛ぶが。
狐はここでもだった、自身の主に話した。
「石見まで遠いけどな」
「それでもやな」
「わしに乗ってたらすぐや」
「ほんまにすぐに行けてるな、もう美作位か」
「そんなところや」
狐は下をちらりと見て芥川に答えた。
「大体な」
「そうか、もうか」
「このまま安芸から行くんやな」
「石見の銀山にな、あそこはな」
その石見の話もする芥川だった。
「ほんま凄い銀山でな」
「金山は佐渡と甲府でやな」
「銀山はあそこや」
「そう言われてるな」
「実際あそこで採れる銀はうちの重要な収入源の一つや」
そうなっているというのだ。
「重罪人とか賊の中でも特に悪い連中を放り込んで掘らせてるけどな」
「文字通り死ぬまでこき使ってやな」
「そうして掘らせてるけどな」
「そこにおるんやな」
「別に悪いことしてないけどな」
罪人ではないがというのだ。
「そこにおって現場監督みたいなことしてるんや」
「そうなんか」
「とはいってもまだうちの勢力には入ってへんからな」
そこで働いていても正式にそうはなってはいないのだ、言うならば民として働いているのだ。
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