八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百四十七話 ワニとイルカその三
「あのスパゲティはね」
「もっと昔かと思ってましたけど」
「スパゲティ自身十九世紀の最初の頃に出て来て」
うどんや蕎麦よりも後だ、パスタ自体はフェットチーネみたいなものがマルコ=ポーロより先にあったらしいけれど。
「それからだし」
「十九世紀ですね」
「案外早いよね」
「ですわね」
ジョーンさんもスパゲティはもっと昔からあったと思っていたらしい、僕の話にかなり驚いていることからわかった。
「どうも」
「最初はフォークもソースもなくて」
「どちらもですの」
「粉チーズをまぶしたのを手で持ってね」
「食べていましたの」
「そうらしいんだ」
「それはまた」
ジョーンさんは驚きを隠せないまま僕に応えた。
「早いですわね」
「そこからソースも生まれてきたんだ」
「フォークも使う様になって」
「そうなっていったらしいよ」
「成程」
「それでカルボナーラも」
こちらのスパゲティもだ。
「生まれて八十年も経っていない」
「若いですわね」
「そうした料理だね」
「何といいますか」
ジョーンさんは驚きを隠せない顔で僕に言ってきた。
「スパゲティ自体が若いお料理ですのね」
「みたいだね」
「そしてナポリタンも」
「ナポリになくて」
そしてだ。
「終戦直後にね」
「出て来たともですね」
「言われているよ」
「早いのですね」
「これもアメリカ軍の人達に合わせて作ったってね」
「言われていますか」
「カルボナーラと同じでね」
外見は全然違うけれどだ。
「言われているよ」
「そうですか」
「まあイタリアにあってもね」
ナポリタンを想像するとだ。
「あっても不思議じゃないかな」
「それは言えますわね」
「ミートソースは実際にあるし」
ボロネーゼだ、あれがミートソースだと僕はジョーンさんに話した。
「ナポリタンもね」
「あちらにありましても」
「不思議じゃない気がするよね」
「お答えした通りに」
「だよね、本当にナポリはね」
つまり南イタリアではだ、長靴の膝から少し下から足首にかけての部分だ。シチリアはその先の石だろうか。
「ありそうだよね」
「イタリア自体に」
「まあケチャップじゃなくて」
それではなくだ。
「トマトだろうけれど」
「トマトで赤くしまして」
「そこにマッシュルームやソーセージを入れて」
「細かく刻んだピーマンは」
「それは唐辛子かな」
イタリアのパスタにこだわるとだ。
「ピーマンもあるかもだけれど」
「唐辛子ですわね」
「そちらかな」
「トマトにマッシュルーム、ソーセージに唐辛子」
「イタリアって言えるね」
「はい」
そうだとだ、僕に答えてくれた。
「言われますと」
「食材は違っていても」
「イタリアで実際にナポリタンはあってもおかしくない」
「しかも美味しい」
「そう思えるけれど」
それでもとだ、僕はまた言った。
「ないんだよね」
「それでイタリアの方がナポリタンを召し上がって」
「美味しいって言うんだ」
イタリアにはなくともだ。
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