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武装神姫 ~心と心の最前線(Front Line)~

作者:太陽と月
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第一章 『ユウナ』
  第2話 戦い

 
前書き
第1話にて結奈(ユウナ)登場につき、第2話より章に名前を追加します。 

 
第2話 戦い

 「結奈」との生活が始まって1ヶ月が過ぎた。はじめの1週間ほど私の生活を見てきた彼女は、容赦なく指摘やら、説教やらをしてくるようになった。

 「マスター! 8時ですよ、休みだからといっていつまでも寝ていたら生活リズムが乱れてしまいます!」

 そうか、8時か・・・。おやすみ・・・

 「もう、マスター。 今、絶対起きましたよね。 ・・・ぐすん。酷いですマスター。そうやって私をひとりぼっちにするのですね。私はもっとマスターと一緒にいたいのに・・・。」

 泣いた!? 驚いて起き上がると、そこにはニコニコしながら彼女が立っていた。

 「おはようございます!マスター!今日もいい天気ですね!」

 彼女は演技派である。彼女のおかげで私はだいぶ規則正しい生活になってきた。時計を持たずとも彼女が寸分違わず教えてくれる。頼りすぎているのかもしれないが・・・。今日は午後から神姫バトルの練習に行こうと約束していた。


 バトルコーナーにて・・・


 「マスター、今日のバトルではわたしがそこまで介入しないようにします。私の体を預けますのでかんばってくださいね。」

 ライドオン神姫バトルでは一人のマスターが一体の神姫に対してライドできるようになっている。感覚的には神姫が見たり聴いたりしたことをライドしている者と共有できる。この時、思考はそれぞれで可能でありどのように立ち回るかも各々で自由にできる。あるものは神姫にバトルを任せ迫力のある戦いを第一視点で観戦したり、またあるものはライドしたマスターが全権を握り神姫に体を借りて戦ったりしている。今回のバトルのスタイルは後者になりそうだ。そもそも神姫バトルに興味があっただけであり、戦いはあまり上手な方ではなかった。「結奈」に任せていた面が強かったが彼女も神姫バトルのためだけに調整しているわけではない。今までのバトルも必ず勝てているわけではなかった。今日の戦法をどうしようか考えていると・・・。

 「自分、今日も来とったんか!ワシのバトルでも見学していくか? ・・・と、そうか!今日はお嬢ちゃんも一緒か!じゃあ一戦交えていくか!」

 彼の名前は「ゲン」。私の神姫バトルでの先輩だ。学校帰りに立ち寄った神姫ショップのバトルコーナーで知り合って以来、時々お世話になってもらっている。ちなみに彼にはまだ一度も勝てたことがない。

 「マ、マスター・・・。声が大きいですよぉ・・・。皆さん見ていますよぉ・・・。」

 「あいちゃん!そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫やって!」

 そんなゲンさんの胸ポケットで周りの視線を気にしながらビクビクしているのは、
天使コマンド型MMSウェルクストラ。天使型アーンヴァルをもとに開発された機体である。量産型アーンヴァルとも言われており、軽量化された武装を施している。型名に『コマンド』と付くだけあり、武装状態の風貌は特殊部隊の突入隊員を連想するものがある。ゲンさんは神姫バトルにライドオンシステムが実装され始めた時からその神姫を所持していたらしい。それにしてもギャラリーが多い。あいの言うとおりゲンさんは声が大きい。あっという間にイベントか何かだと勘違いした人達が集まってきてしまうのだろう。彼に勝てる自信はないがこのギャラリーだ。逃げ切ることは難しそうだ。

 「ゲンさん、あいさん。こんにちは。皆さんを退屈させないためにもバトルの準備を始めましょうか!」

 結奈はノリノリだった。この展開は私に厳しい。今日は初めて自分で調整をかけたレールアクションを使う予定だった。まずはシミュレーションからと思っていたが・・・、いきなり実践できるものなのだろうか。神姫バトルを行う専用の筐体に神姫をセットし武装をしていく。マスター側は専用のヘッドギアを装着し備える。

 「RIDE ON」 「READY GO!!」

 開幕から攻め立てようと接近するレールアクションを使った。『あい』の装備は機関銃にナイフ。中距離からの盾を構えながらの接近、ナイフで近距離戦が行えるという突入隊員さながらである。レールアクションを途中で崩され、そのままあいの射程圏内で翻弄される。いつの間にか目前まで接近しているのに気づかず近距離戦に持ち込まれた。最初は自ら近距離戦に向かおうとしていたのに相手のペースで来られると思うように立ち回ることができないのがもどかしい。なんとかナイフの剣戟をシールドで受け流し反撃に回れる隙ができた。その時だ。あいは盾を自身の目の前に構えた。おそらくそのまま攻撃が来ると思ったのだろう。今ならこちらの様子を伺うことはできないはず・・・。このチャンスを逃さないために新しく調整をかけたレールアクションを使う。あいのその行動が罠だとも知らずに・・・。ブーストを多用しての高速多段移動からの攻撃である。道筋としてはまずその場で急上昇、相手の上空を多段で水平移動、相手の背後に立ち回れる位置に来たとき、一気に急降下し連続切りを行うという手はずなのだが・・・。

 「マスター! スピードが足りていません! もう見切られています! 回避を! 
・・・っ!?」

 しまった・・・。結奈と意思が違えてしまった。レールアクションに乗った移動がうまくいかない。ブーストを多用してしまうことを結奈はぎりぎりで気づいたが、あいはもう近くまで接近していた。無理な姿勢からの回避により残りのブーストを使い切ってしまった。回避の時間もいつもより短い。回復するまでにはしばらく時間がいる。

 「そこです!」

 隙を作るつもりはなかった。だが高出力なゆえに失敗してしまったときのことを想定しきれていなかった。あいのナイフでの一撃が結奈にヒットする。

「FINISH」 「LOSE」

 「ふぅ、なんとか勝てましたぁ・・・。」

 「遠慮はあかんぞ、あい。言うべきことは言っておかんといかん。」

 「そう、ですね・・・。あの・・・」

 「待ってください!今日の戦い方にはマスターなりの考えがあったと思うのです!私から・・・、私から話しますのでどうかおふたりは目をつむって頂けませんか?」

 「・・・。そうか・・・。まぁ、その方がよさそうやな。ええか、自分、神姫バトルは己一人で戦っとるわけやない。戦術がどうのこうの言う前に・・・」

「マ、マスター。あの、結奈さんの言うとおりに・・・。」

「おぉ、そうやったな・・・。じゃあ、あんまり気ィ落とさんでな。また今度な!」

負けた。だが、ただ負けたわけではない。結奈に負荷をかけ、結果傷つけてしまった。ゲンとあいはあまりにも強すぎたように思える。もう少し手加減というものを知らないのだろうか・・・。

 「流石だぜ、今の見てたかよ。」 「あぁ、半端ねえ一撃だったぜ。やっぱF2常連者となると格がちげぇなぁ!」
 F2常連者!?通りで一度も勝てないわけだ。こっちは初心者だというのに・・・。普段彼の周りにギャラリーが集まることが多い理由がはっきりした気がする。今更ながらすごい人と知り合いになっていたのだと驚きつつも、今までのバトル結果が負けばかりだったことへのいらだちと不満で心が押しつぶされそうになった。その時、

 「マスター! 先程は失礼しました。 初めにマスターに任せると言っておきながら手出ししてしまったこと・・・。バトルに夢中で考慮しきれていませんでした。」

 そうだ、結奈が・・・。いや、彼女は何も悪くない。むしろ適切な判断ができていたはずだろう。今はとりあえず頭を冷やそう。正常な判断ができなくなってしまう。いわゆるリフレッシュってものが必要だ。

 「あの・・・。 マスター? よろしければですが、少しだけ公園に寄っていきませんか?」

 結奈の意見を尊重し、私たちはバトルコーナーを後にした。

第2話 完
 
 

 
後書き
今回の話はバトルに関して書いてみました。戦闘を表現するのは難しいです…。ゲームをやったことのある方はわかると思いますが、だいたい基本戦法としては、戦闘開幕後、ロックオン範囲内まで接近し、ロックオン状態のまま戦うといった感じです。レールアクションという光のレールを伝いながら高速移動するアクションがありますが、これを使用すると相手から自分にかかっているロックオンを外す事ができます(逆も然りです)。自分も慣れない間はこのシステムのせいで、だいぶ翻弄されました。ちなみにこれは余談ですが、赤ちゃんの泣き声を聞いて飛び起きた事があり、その体験から冒頭のエピソードを書きました。いやぁ…、ほんとあれ心臓に悪いですね。でも、飛び起きた自分にびっくりしてケロッと態度が変わった赤ちゃん、可愛かったなぁ。 
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