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夢幻水滸伝

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第四十四話 山と海その五

「それか」
「はい、そして」
 さらに言う田中だった。
「切った木を担いで」
「そうしてか」
「村に運びたいので」
「それだけ大きな木をか?」
「はい、一人で運びます」
 何でもない声で答える田中だった。
「いつもそうしています」
「それだけの力があるってことやな」
「力には自信がありますので」
「そうか、僕もこれ位の木は持てるけどな」
 中里も鬼だ、しかも神星であるのでかなりの膂力も備えている。そして膂力よりも足腰の力が強い。
「自分もか」
「植林もして」
 切った後はというのだ。
「それはもうしましたので」
「切った木を山まで持って行ってか」
「それからで宜しいでしょうか」
「ええで、ただな」
「ただ、とは」
「自分も志賀と一緒で真面目やな」
 このことを言うのだった。
「随分と」
「そうでしょうか」
「ああ、自分の仕事やるさかいな」
 それでというのだ。
「最後まで」
「さもないとです」
「収まりがつかんか」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「はじめた仕事は出来るだけです」
「最後までしたいか」
「そう考えています、ただ何かあれば」
 その時はとだ、田中は大木に鉞を入れつつ中里に話した。鉞を入れる度に山の中に強い音が響き渡る。
「その時はです」
「予定を変更してやな」
「そちらにあたります」
「それが林業、そして農業やな」
「突然のことは付きものです」
 即ちアクシデントはというのだ。
「ですから」
「それでやな」
「はい、その時はです」
 まさにというのだ。
「優先順位を突然変えてです」
「やるべきことをしてるか」
「そうしてます」
「そやねんな」
「ですが今はです」
「木を切ってその木を村まで運んでやな」
「それから都に向かっても宜しいですね」
「ええで、来てくれるんやったら別に急がんしな」
 中里は田中に笑って答えた。
「こっちもな」
「では村に戻れば転移の術で」
「来てくれるか」
「そうさせてもらいます」
「ほなそういうことでな」
「それでは」
 ここでだった、田中は大木を完全に切った、切られた木はメキメキと音を立ててそのうえで倒れた。そうしてだった。
 田中はその切った木を軽々と右手に立てて持って中里と鵺、そして二人をここまで案内したコボルトと共に村までの帰路についた、その帰路に中里は木を軽々と持っている田中に唸る様にして言った。
「自分戦でも活躍出来そうやな」
「この力と鉞で、ですね」
「金太郎の鉞やったな」
「そうです、この鉞で切れないものはありません」
 鉞は左肩に担いでいる。 
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