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儚き想い、されど永遠の想い

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486部分:エピローグその一


エピローグその一

                               エピローグ
 私は話を聞き終えた。そうしてだ。
 目の前にいる紳士に対してだ。こうお願いしたのである。
「あの、よければ」
「その桜のある場所にですね」
「案内して頂けるでしょうか」
 こうだ。紳士に頼んだである。
 紳士もだ。その私の願いを受けてだ。まずはだ。
 優しい笑みになりだ。そうして私に言ってきたのである。
「それではです。今から」
「案内して頂けますか
「ここから近いですし」
「近いのですか」
「はい、すぐ傍です」
 そうだというのだ。私達が今いる場所からだ。
 そう私に話してくれてだ。それからだった。私にこう言うのだった。
「今は桜の季節ではありません」
「はい、それでもです」
「その桜を御覧になられたいですね」
「そう。どうしても思えまして」
 だからだった。今はだ。
 そのことを紳士にお話してだった。紳士の快諾を受けて。
 私はその桜の場所に向かった。今は桜の咲く季節ではない。緑の、他の木々と何の変わりもない木々がそこにあるだけだった。
 その緑の木々の前に二人で立つ。それからだ。 
 私はだ。その木々を見つつ紳士に尋ねた。
「この桜達の前であの方々はですか」
「私の曽祖父と曾祖母がです」
「おられてですか」
「はい、祖父と共に見たのです」
 この桜の満開をだというのだ。
「当時労咳は死に至る病で。曾祖母は残り僅かの命と告げられましたが」
「それを。何とかですね」
「生きました。桜が咲くまで」
 まさにだ。春になり桜達が咲き誇るまでだった。
「肉体は生きたのです」
「そして心はですね」
「それからもずっと。祖父が語ってくれました」
「貴方のお爺様がですか」
「母に会った記憶はない筈なのに。全て覚えていると」 
 そうだというのだ。覚えているとだ。
「こうよく語ってくれました」
「覚えているのはおそらく」
「どうして覚えていたと思いますか、祖父が」
「心に残っていたのだと思います」
 記憶ではなくだ。それにだと。私は思った。
 それでだ。紳士に思ったことをそのまま告げたのだった。
「そう思うのですが」
「そうですね。やはりそうですね」
「記憶で残っているものは限度があると思います」
「しかし心に残っているからこそ」
「お爺様も覚えておられたのでしょう」
「その祖父もです。二十年前に亡くなりました」
 紳士は私に話してくる。そしてだ。
 私はその話を聞いてだ。わかったことがあった。そのことをだ。
 紳士にだ。こう言ったのである。
「そのお爺様ですが」
「はい、八条儀幸です」
 こうだ。祖父の名前を私に教えてくれたのだ。
「そのです」
「お二人の御子息だった」
「そうです。その祖父だったのです」
「だからこそ覚えておられたのですか」
「祖父は曾祖母とはです」
 幼い頃に別れている。それは確かだった。
 
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