儚き想い、されど永遠の想い
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485部分:最終話 永遠の想いその七
最終話 永遠の想いその七
「幸せを感じている間は短く感じるものですから」
「そうですね。だから私達の人生は」
「短いです。百年生きていても」
「はい。ではこの桜達を」
二人は何時しか寄り添い合っていた。そうしてだった。
寄り添い合ったまま桜達を見る。何時しかだ。
桜の花びら達が舞いだ。二人の周りを漂う。その香りもだ。
優しく二人、それに義幸も包んでだ。漂い続けていた。
そしてその中でだ。また言う義正だった。
「ではです」
「このまま見ているのですね」
「はい、貴女が心ゆくまで」
そうするというのだ。
「そうしますか」
「そうですね。それでは」
二人は寄り添い合ったまま桜を見ていく。そうして暫く過ごしだ。
どれだけ時が経ったかわからない。しかしだ。
真理はやがて満ち足りた、今は何の名残もないといった顔になりだ。そのうえでだ。
義正に顔を向けて。そうしてだった。
微笑みもその満足に加えて。告げたのである。
「では」
「それではですね」
「今から貴方の中に入ります」
義正のだ。その中にだというのだ。
そしてだ。さらに言うのだった。
「あの子の中にも。その他の方々の中にも」
「全ての方々の中に入られてですね」
「私は生きます」
そうすると答えて。そしてだった。
義正にだ。微笑み静かに告げたのだった。
「さようなら。そして」
「そしてですね」
「これからも宜しくお願いします」
微笑の中で言い。そのうえで。
真理は目を静かに閉じてゆっくりと後ろから倒れていった。その彼女の身体を受け止めてだ。
義正もまた微笑みだ。こう告げたのである。
「これからも宜しくお願いします」
微笑んで真理に告げたのである。その彼等を見てだ。
誰もが笑顔になっている。その笑顔を見てだった。
看護婦はだ。涙を流していた。その涙の顔でだった。医師に言ったのだった。
「わかりました」
「そう、君もだね」
「全てがわかりました」
そうなったというのだ。彼に対して。
「こういうことなのですね」
「奥様はこれからも生きるよ」
「そうですね。全ての方の中で」
「人は肉体だけではないからね」
「心も、ですね」
「奥様は身体はなくしたけれど」
それでもなのだった。彼女は。
「これからはね」
「全ての方の中でお心が生きられますね」
「それが今はじまったんだ」
まさにそうだというのだ。
「今ここでね」
「そうですね。はじまったのですね」
看護婦は涙を流しながら微笑みになっていた。そうしてだ。
義正は感じていた。真理とのこれからの人生を。それもまた満ち足りたものなることを感じながらだ。そうしていたのである。
最終話 完
2011・12・18
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