夢幻水滸伝
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第四十三話 内政の人材その十三
志賀は友達に暫しの別れを告げそうして都に向かった、中里はその彼を見送るとすぐに吉野の方に向かった。
吉野にも鵺に乗って進む、その鵺が中里に言ってきた。
「吉野までもすぐやからな」
「そやな、飛んで行くからな」
「ほんまにすぐや、ただな」
「ただ?何や?」
「空の旅はどないや」
鵺は中里に今の様な進み方について問うた。
「それで」
「ええな、あっちの世界で飛行機には乗ったことがあったけどな」
「空船みたいなもんやな」
「まあ近いな、けれどな」
「こうして何かに乗って直接ってことはなかったやろ」
「ああ、馬に乗ってるみたいにな」
鵺を馬に例えての言葉だ。
「そういうのはなかったわ」
「そやな、ええ感じやろ」
「これもな、まあ落ちたら死ぬけどな」
「落とす様にはさせん」
それは安心しろという返事だった。
「大丈夫や」
「主を落とさせんか」
「そんな下手なことはせん、そしてな」
「そして?」
「自分いざとなったら浮遊の術使えるやろ」
「ああ、術でも飛べるで」
魔術師の術も使える武士の中でも最強の強さを誇るからだ、既に術も極めていてこの術も使えるのだ。
「ちゃんとな」
「ほな落ちそうになったらな」
「その時はやな」
「術を使ってや」
その時にというのだ。
「危機から逃れるんや」
「そうするわ」
このことを約束した中里だった。
「ほな今から吉野にな」
「行こうな」
まだ吉野は見えていない、下には大和の盆地とその中にある街と田畑が見えている。そして三山もそこにあった。
その三山も見てだ、中里は言った。
「こっちの世界にもあの三つの山あるねんな」
「ああ、けったいな山やな」
「ぽつんぽつんって一つずつあってな」
「不思議やな」
「起きた時の世界では古墳って言われてるけどな」
「こっちの世界でもそうなんか?」
中里は鵺に三山のことを問うた。
「やっぱりおかしな山やからな、どれも」
「そんな話もあるか?」
「少なくとも自然な感じではないな」
「そやな、ほんまに」
中里と鵺は眼下にある三山も見た、どの山も中里達の本来の世界にある姿そのままで不思議な姿を見せていた。
第四十三話 完
2017・11・22
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