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夢幻水滸伝

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第四十二話 西国統一その二

「九州、西国での戦は終わりじゃ」
「そういうことですのう」
「ほなわし等もこのまま攻めますわ」
「攻めて攻めてそうして」
「勝ちますわ」
 兵達もこう応えて果敢に攻める、戦は完全に彼等のものになっているのを感じ取っているその中で。
 戦は実際に完全に関西の流れになっていた、彼等はその勢いのまま攻めていた。そして朝になった時にだ。
 戦場の状況が旭日により照らし出された、美鈴はその戦局を見て苦い顔で呟いた。
「もうこれでは」
「決まりですね」
「ええ、そう言うしかなかとよ」 
 八房に思わず出た九州の言葉で返した。
「これは」
「では今から」
「棟梁のところに行くばってん」
 また九州の言葉が出た。
「ついてきんしゃい」
「棟梁のところに術で行きますね」
「そうするとよ」
 美鈴はこの時も九州弁だった、その九州の言葉を残してだった。
 その場の采配を部将達に任せて自身は北原のところに向かった、北原はこの時も中里と激しい一騎打ちを行っていた。
 両者の戦いは続いていたが星としての力の違い、戦に使える神具の数と力の差が出ていた。北原は明らかに押されていた。
 だがまだ立っている、中里はその北原を見据えて彼に問うた。
「意地でやな」
「そうでごわす、おいどんにも意地があるでごわす」
「それでそこまで戦うか」
「ここで凌いででごわす」
「まだ戦うつもりか?」
「まだ一撃あるでごわすよ」
 北原は既にかなり傷ついている、しかし自身の二本の足で立っていて目も死んでいない。金棒もしっかりと持っている。
「その一撃で御前さあを倒すでごわす」
「出来ると思ってないやろ」
「可能性は無に近いでごわす」
 それも限りなくとだ、北原自身認めた。
「しかしでごわす」
「それでもか」
「無でないのならでごわす」
「やるんやな」
「今はそうした時でごわす」
 だからこそだというのだ。
「やるでごわす」
「もう戦は決まったわ」
 中里は鬼人の神通力で戦局を見渡して言った。
「こっちの勝ちじゃ」
「それも大勝利でごわすな」
「そや、もう自分等は戦う力はないわ」
「だからでごわすな」
「降るんや」
 北原を見据えて彼自身に告げた。
「そうして九州も自分等もな」
「関西に入ってでごわすな」
「一緒にやっていくんや」
 この世界で、というのだ。
「日本、そして世界を統一して世界を救うことをな」
「おいどんの望みはでごわすな」
「棟梁としては捨てるんや」
 即ち世界に号令するそれはというのだ。
「綾乃ちゃんの下に入れ、もうな」
「納得するにはもう一撃でごわすよ」
「全力を出しきって負けてか」
「そうしたらおいどんも納得するでごわす」
「そうか、ほなその一撃を出してくるんや」
 中里はまだ闘おうとする北原に確かな声で応えた。
「そしてそれをや」
「今からでごわすか」
「僕のやり方で弾き返したる、それで終わらせたる」
「ではでごわす」
 北原は今の自分の最後の力を振り絞った、そしてだった。
 全身を駒の様に激しく回転させてそのうえで中里に向かって突進した、それはまさに小さな竜巻で周りに土埃さえ起こった。
 中里はその竜巻を冷静に見ていた、そのうえで。
 彼は一言も出さず両手にある双刀を手に竜巻に向かった、そうしてその二本の神具を竜巻に対して放った。
 それぞれの刀に雷、気が宿っていた。その二振りの攻撃が竜巻を打つと。
 空中に金棒が跳んだ、金棒は空中でくるくると回転しそうして地面に先から突き刺さった。それを見てだった。 
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