夢幻水滸伝
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第四十一話 耳川の合戦その十一
敵を徹底的に攻めた、そうしてだった。
正面から敵の主力を芥川と共に攻める中里はそのまま敵陣に突っ込みさらに戦っていた、だがその二人の前にだ。
馬に乗った北原が出た、そうして二人に言って来た。
「見事と言っておくでごわす」
「出て来たな」
「まさか裏をかかれるとは思わなかったでごわす」
「僕やなかったら完全にやられてたわ」
芥川は狐の背中から笑って話した。
「完全にな」
「そうでごわすか」
「そや、僕は四智星の一人や」
「それだけに智恵がある」
「そやから見破れた、若し僕がおらんかったら」
それこそというのだ。
「今頃こっちが散々に破られてるわ」
「今のおいどん達の様に」
「そうなってたわ、そしてや」
「今からでごわすな」
「どうするんや?」
これからのことをだ、芥川は北原に問うた。
「降るか?それともまだ戦うか?」
「戦う為にここに来たでごわす」
これが北原の返事だった。
「降るにはまだ意地があるでごわす」
「棟梁として、そして勢力としてやな」
「だから戦うでごわす」
「そうか、ほなな」
「一騎打ちや」
こう言ったのは中里だった。
「今からな、軍勢の指揮は任せたで」
「ああ、わかった」
芥川はその中里に一言で答えた。
「任せるんや」
「ほなな」
「僕はこいつと一騎打ちや」
中里は北原を見据えていた、視線と視線がぶつかっている。
「そうするで」
「北原は頼むな」
「ああ、ほなな」
「戦は任せるんや」
「そうするわ」
こう言って芥川を行かせた、そのうえでだった。
中里は対峙する芥川にだ、こう言った。
「ほなはじめよか」
「望むところでごわす」
強い声でだ、北原も応えた。
「お互い全力で戦うでごわす」
「負けるつもりはないで」
「こちらもでごわす」
両者共言い合う。
「負けるつもりはないでごわすよ」
「その神具で戦うか」
「そうするでごわす」
北原は鬼の金棒、彼が戦いの際に使う神具を手にして言った。
「久し振りに戦うでごわすよ」
「その神具でな」
「この金棒はあらゆるものを破壊するでごわす」
その金棒を構えつつ中里に話す。
「勿論御前さあもでごわす」
「言うな、ほなな」
「どちらが強いか今ここで決めるでごわす」
北原から言ってだ、彼は中里の前に瞬時に来てだった。両手に持っているその金棒を右から左に思いきり振ってだった。
中里を打たんとした、だが中里は。
真上に跳んでそうしてかわしてだ、両手に持っている千鳥と童子切を繰り出す。だがその二刀の斬撃をだ。
北原は姿を消した、そうして逆に宙に舞う中里の前に出てまた金棒を振るう。それを見た中里もまた。
姿を消した、そのうえで地面に表れて言った。
「転移の術を一騎打ちでも使うか」
「おいどんはそうしているでごわす」
「確かに有効やな」
それはとだ、彼も話した。
「僕も今使ったけど」
「だから使ってるでごわす」
「確かに使ってみるとええ」
中里も今しがた転移の術を使ったのでわかったことだ。
「すぐにかわせる」
「そうでごわすな」
「ほんまに頭も切れるな」
「戦も政も頭と力でごわす」
その二つが共にあって成る、北原は己の考えも述べた。
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