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夢幻水滸伝

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第四十一話 耳川の合戦その十

「正岡と織田は陣に残ってな」
「僕等の攻めを助ける」
「そうする、それで敵を散々に破るで」
「今夜でな」
「それで勝負を一気に決める」
「この九州での戦を終わらせるな」
「そこまでの勝ちにするで」
 まさにと言ってだ、そしてだった。
 中里は鵺、芥川は九尾の狐にそれぞれ乗った、そうして本陣は正岡と織田に任せてそれぞれ一万の兵を率いて前に出た。そのまま玲子と彼女が率いる先陣と合流してだった。
 攻めを防いだ九州の軍勢の主力、今は北原と又吉が率いる軍勢に向かって突っ込んだ、まずは先頭を進む中里がだ。
 両手にそれぞれ持つ童子切と千鳥を振るった、すると前にいる九州の兵達が気の凄まじい嵐と乱れ飛ぶ雷を受けてだった。
 百人単位で吹き飛ぶ、そして芥川も。
 左手に持つ三光手裏剣を投げる、一つの手裏剣が忽ち何百にもなりそれぞれが縦横無尽に舞い敵陣を襲う、そこにさらに右手の大通連を振って衝撃波を繰り出して攻める。そうして彼もまた百人単位で敵兵達を吹き飛ばした。
 吹き飛んだ兵達が空にも舞う中に玲子は突っ込んだ、そうして朱槍を振るうと今度は敵兵達が真っ二つになりその一撃で薙ぎ倒されていく。
 その状況を見てだ、北原は叫んだ。
「怯んではならんでごわす!」
「はい、今こそです!」
「九州モンの力見せてやるべき時ですたい!」
「やったるとよ!」
「ここで負けたらいかんとね!」
 九州の兵達も口々に叫ぶ、そうしてそれぞれの武器や術を繰り出す。中には風水師もいて地形を使った攻撃もするが。 
 その術の攻撃も関西の方が多い、正岡と織田が率いる主力が攻める中里達を巧みに援護していたのだ。
 正岡は自らも短筒から攻撃を放ちつつ兵達に言っていた。
「総大将と軍師さん、玲子ちゃんを援護するんじゃ」
「こうしてですね」
「鉄砲と術で」
「そうじゃ、弓矢も使ってぜよ」
 こう兵達に言うのだった。
「攻めるのを助けるんじゃ」
「回復も忘れないで下さいね」
 織田も兵達に言う。
「そちらも、そして後ろを攻めている井伏さんと山本さんも」
「わかってますわ」
「後ろの援護もします」
「そして回復も忘れません」
「そっちのことも」
「そうして下さい、ここは」
「援護どころか攻める勢いでやるぜよ」
 正岡は言いつつ自らも攻撃を続けている、彼の短筒から放たれる一撃も敵兵達を次々と倒している。
「そうしてわし等も敵を倒すんじゃ」
「この戦の勝ち方で九州がどうなるかが決まります」
 織田は兵達にこのことも話した。
「ですからここはです」
「敵を徹底的に叩く」
「そうしますね」
「そうです、我々の軍勢は狙わない様にして下さい」
 夜の戦といえどというのだ。
「目印を見て」
「はい、具足に白いものがあるとです」
「自軍ですから」 
 そうした目印もしっかりと用意していたのだ、芥川はそうしたことも忘れていなかったのである。これもまた軍師の務めだからだ。
「攻めてはなりません」
「承知してますわ」
「白は攻めません」
「わし等も攻める直前に付けてますさかい」
 見れば関西の軍勢のどの者も具足の上から白い襷をかけている、それをお互いの目印にしているのである。
「自軍は攻めません」
「それは守ります」
「そうして下さい、今は敵をです」
 その彼等をというのだ。
「徹底的に攻めます」
「ほなそうして」
「勝ちましょう」
 兵達もこう応えてだ、そしてだった。 
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