夢幻水滸伝
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第四十一話 耳川の合戦その九
「これは完全にでごわす」
「我々の攻めを先に読んでいて」
「既にですね」
「備えをしていて」
「攻めて守っている」
「そうしていますか」
「そうでごわすな、しかし」
北原は全てを察して歯噛みした、しかしだった。
今彼が九州の棟梁としてどうすべきかはわかっていた、それで全軍に命じたのだった。
「ここはこのまま攻めるでごわす!」
「はい、ここは!」
「一気に攻めましょう!」
「それしかありません!」
「今は!」
部将達も北原に応えた。
「そうしてです!」
「ここは勝ちましょう!」
「それしかないでごわす」
彼等の取るべき策はというのだ。
「ですからここは」
「はい、それでは」
「これから」
「攻めましょう」
九州の軍勢も止まる訳にはいかなかった、それで槍や鉄砲、弓矢に術まで駆使して幾重にも守りを固める関西の軍勢に攻め込んだ、もう彼等も迷っていなかった。
そうして攻めてきた九州の軍勢を見てだ、中里は冷静に言った。
「流石やな」
「九州モンやな」
「ああ、そう思ったわ」
隣にいる芥川に言った。
「これはな」
「もっともここで怯んでたらやな」
「こっちの攻め時やからな」
「攻めてたわ」
そうしていたとだ、芥川は躊躇なく答えた。戦は守る関西と攻める九州となっていたが数で倍以上優り備えも万全だった関西の軍勢が押していた。
その状況を見つつだ、芥川はさらに話した。
「攻める用意もしてるしな」
「騎馬隊やな」
「ああ、それもある」
「空船もあるしな」
中里は上を見た、見れば船達だけでなく翼人達同士の戦もはじまっている。九州の軍勢は空からも攻めたがそちらも防がれている。
「今は防いでるけどな」
「それでもや」
「余裕が出来たらな」
「攻めるつもりやしな」
「そや、そやから攻めたのはな」
九州の軍勢が自分達の守りに怯むことなくだ。
「正解や、しかしな」
「それでもやな」
「出鼻は完全に挫いた、奇襲は出鼻を挫いたらや」
「それで終わりや」
「そういうことっちゃ、それでな」
「こっからやな」
中里は芥川に鋭い目で返した。
「逆に僕等がやな」
「そや、攻めるで」
芥川は確かな顔で返した。
「そうするで」
「わかったわ、ほな今からやな」
「二人で正面攻めるで」
この言葉を言った芥川の身体の周りに風がつむじ風の様に起こった、彼の気が風となって出たものだ。
「ええな」
「ああ、わかったわ」
中里の周りには稲妻がバチバチと音を立てた、これもまた彼の気が実体化して出たものである。
「ほなな」
「今から一気に攻める」
「そして後ろの方もやな」
「そっちは井伏と山本が行く」
この二人がというのだ。
「それぞれ左右からな」
「手筈通りやな」
「正面は玲子ちゃんも行くしな」
最初から先陣を務め釣り野伏にかかったふりをした彼女がというのだ。
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