夢幻水滸伝
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第四十一話 耳川の合戦その六
「それやったらな」
「全部の力を使わなな」
「鉄砲や大砲、それに神具に」
「術もや、全部使って勝つで」
「わかったわ」
中里は確かな顔で答えた。
「そやからやな」
「このまま攻めるで、しかし二万の援軍貰ってな」
「ああ、領地の守りは手薄やな」
「そうなってるわ」
このことが問題だというのだ。
「三万の兵で守ってるけどな」
「それで東海、北陸が攻めてきたらな」
「結構辛い」
そうした状況だというのだ。
「佐藤兄妹が張り付いてて都には綾乃ちゃんが控えていてもな」
「そして太宰もおってな、堺には中原もおる」
「けど三万の兵で領地全体を守ってるんや」
五万から二万の援軍を出した、簡単な足し算である。
「おおよそやけどな」
「あの広さで三万か」
「東海、北陸に備えてな」
「山賊とか海賊もある」
彼等はこれまでの徹底的な征伐で減っているがだ。
「そやからな」
「三万では辛いか」
「そや、そやから出来るだけな」
「戦を早いうちに終わらせる」
「今日やな」
「そや、今日や」
まさにこの日もというのだ。
「終わらせるで」
「その為にやな」
「あらゆる備えを置いた、ほなな」
「戦うか」
「そうするで」
こう話してだ、そしてだった。
彼等は敵の動きを把握していたが今はそれに気付かないふりをしていた、それを見ても九州の軍勢はというと。
高城にいる軍師の美鈴もだ、自軍の動きをだけを見ているだけだった。
「いい動きです」
「抜かりはないですか」
「敵を囲む様に動いている」
「そう動いていてくれていますか」
「そして前からも」
「又吉さんが動いていますね」
「はい」
そうだとだ、美鈴は鼠の暗闇でも見える目で両軍の動きを見つつ部将達に話した。
「ですから私達もです」
「うって出る」
「その心構えはですね」
「しておけと」
「そうです、我々も攻めます」
このことにも考えを向けていた。
「ですから」
「その時はですね」
「敵を囲んでそのうえで」
「一気に攻める」
「そうしますね」
「そうです、敵には気付かれていません」
気付かれては破られる、このことに恐怖を感じていたのだ。それは即ち自分達の敗北となるからだ。釣り野伏は敵を散々に破られるだけに気付かれればそれで意味がなくなる、そうしたリスクもあるからだ。
だが関西の軍勢に気付いている素振りはない、美鈴にはそう見えていてこのことに安堵しているのだ。
「ですから」
「ここはですね」
「一気に攻める」
「敵が誘き出されれば」
「その場所に」
「そうします、敵がその場所に誘き出されれば」
その時はというのだ。
「いいですね」
「はい、攻めましょう」
「一気に」
「そうしましょう」
「是非」
美鈴はここで八房を呼んだ、すると八房も美鈴に答えた。
「攻める時になれば」
「共に」
「わかってますよ、ご主人」
微笑みさえしてだ、八房は主に答えた。
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