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夢幻水滸伝

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第四十一話 耳川の合戦その四

「音もなく動いています」
「今我々を誘き出そうとしています」
「囲んで攻めるその場に」
「わかったわ、考え通りやな」
 芥川は忍達に確かな顔で応えて言った。
「こっちの」
「ほな、やな」
 ここで芥川の横で腕を組んで座していた中里が言ってきた、既に兜を被っている。
「今からやな」
「そや、敵が攻めてくる」
「わざと攻められてやな」
「不意を受けた形でな」
 そのふりをしてというのだ。
「そのうえでや」
「反撃やな」
「そや」
 それに移るというのだ。
「それでも全軍でな」
「奇襲を受けて感情が昂ってか」
「そうして攻めるんや」
「陣形も乱して」
「それでや、まさに死地に入るんや」
「そしてそこでやな」
「敵が来るからな」
 このことは間違いないというのだ。
「四方八方から」
「一気に来るな」
「そうなる、けどな」
「こっちはやな」
「僕の策通りにな」
「僕が兵を率いて動かしてやな」
「戦ってもらうで、幾ら完璧な策を立ててもな」
 それでもというのだ。
「実際にそれが出来んとや」
「絵に描いた餅やな」
「文字通りのな」
 まさにそれだとだ、芥川は中里に言い切った。
「それや」
「そやから決めて動かすモンが必要か」
「それが総大将や」
 この立場にいる者だというのだ。
「つまりな、今はや」
「僕やな」
「そやから戦は軍師だけや出来ん」
「軍師の言うことを理解して決断する人間が必要やな」
「そして指示を出す人間がな」
「つまり総大将の方が資質が必要やな」
「わかって決めて動かす」
 この三つを行う者が総大将だというのだ。
「そう思うとな」
「軍師よりも能力が必要か」
「そや」 
 こう中里に話すのだった。
「僕も総大将する時あるけどな」
「その時はやな」
「実際に策があったらその策を理解していいか悪いかどうか判断せなあかんし」
「そこから軍勢を動かす」
「そうせなあかんからな」
「軍師よりも資質が必要でか」
「一番大事や」
 軍勢の中でというのだ。
「そやから自分にはな」
「その一番大事なことをやな」
「果たしてもらうで」
 強い声でだ、中里に告げた。
「ええな」
「わかったわ、ほなな」
「今からな」
「敵は動いた」
 このことがわかっていた。
「横に後ろに回り込んで来る」
「僕等が敵が誘き出す場所に来た時にはそこにおる」
 この二つの軍勢はだ。
「後ろから来るのは雪路ちゃん、こっちから見て左に来るのは純奈ちゃんで城からも美鈴ちゃんがうって出るで」
「まさに三方から攻めて来るな」
「しかも横から来るのは正確には斜め後ろからや」
 横は横でもというのだ。 
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