夢幻水滸伝
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第四十一話 耳川の合戦その三
「そういうことだね」
「そやな、文字通りに」
「まあ痛い思いしたくなかったらね」
「勝手に動くなっちゅうことやな」
「そういうことやな、ほな城を囲んだままでや」
攻めずにというのだ、これまで話した通りに。
「いつも通りの時間に飯を食うで」
「わかりました」
「今日も頂きます」
兵達も応えた、そして実際に彼等は城攻めは行わず飯は食ってそうしてだった。布陣したままで休息に入った。
その彼等を山から見つつ北原は言った、犀人は夜目は利かないが城を囲んでいる軍勢の無数の篝り火は見えていた。
その火達を見てだ、まずは雪路に言った。他の星達は彼の後ろに控えているのだ。
「今からでごわす」
「私がだね」
「横敵の後ろに密かにでごわす」
「回り込んでね」
「そして御前さあもでごわす」
今度は純奈に声をかけた。
「動いてもらうでごわす」
「私が横からとね」
「そうでごわす」
敵のというのだ。
「右手、敵から見て左手でごわす」
「わかったたい」
純奈は北原に確かな声で答えた。
「すぐに行くたい」
「御前さあは釣りでごわす」
最後に又吉に声をかけた。
「頼むでごわす」
「はい、敵を攻めてですね」
「一旦退くでごわす」
そうしろというのだ。
「そこからでごわす」
「一旦退いて」
「釣ってでごわす」
「敵を誘き出して」
「おいどんは本軍を率いて後ろに潜んで待っているでごわす」
「そこまで誘い込む」
「そしてでごわす」
誘い込みそうしてというのだ。
「後ろと横、そして城からも軍勢がうって出てでごわす」
「囲みそうして一気にですね」
「攻めるでごわす」
そうするというのだ。
「いいでごわすな」
「わかりました、それでは」
又吉が応えてだった、九州の軍勢はそれぞれ動きだした。それは闇夜に紛れて影の様に見えなかった。
だが芥川は関西の軍勢の本陣の中で配下の忍達の報告を聞いていた、本陣に腕を組んで立ち篝り火に照らされた中でだ。
「そうか、遂にか」
「はい、動きだしました」
「我等の横と後ろに回り込もうとしています」
「そして正面からも来ていてです」
「その後ろには大軍がいます」
「三方から来てるのは多くても五千位やな」
芥川は兵の数のことも聞いた。
「それ位やな」
「後ろ、横に回り込もうとしている兵はそれぞれ三千です」
「それ位です」
忍達はこのことについても芥川に答えた。
「そして正面からは五千」
「全て足軽です」
「騎馬隊は元々少ないですが」
九州の軍勢の特徴だ、実は彼等は騎馬隊は多くはない。それよりも鉄砲や個人の強さで戦う勢力なのだ。
「全て本陣にある様です」
「城の兵はおおよそ四千です」
「本陣は二万五千」
「その二万五千の兵も既にこちらに向かって動いています」
「今彼等の本陣は空です」
「篝り火は見せ掛けです」
軍勢がいる様に見せているそれに過ぎないというのだ。
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