夢幻水滸伝
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第四十話 高城への進軍その五
「裏をな、しかしな」
「それでもやな」
「相手の考えや行動を予測してもな」
「それが充分かどうか」
「問題はそこやな」
「僕等の考えを充分に読み切れてるか」
奇襲を仕掛ける九州の軍勢はというのだ。
「奇襲は相手に気付かせん、そしてな」
「相手の考えを読み切る」
「それで成功するもんや」
それが奇襲だというのだ。
「この二つが及第出来てないと失敗する」
「そして自分はか」
「もう気付いてるし読んでる」
「ここまで話した通りやな」
「これでわかるやろ」
「うちの勝ちか」
「九州の戦はな、とにかく戦はな」
芥川は今度は前を見た、自分達が向かう先を。
「相手の動きや考えは完全にや」
「読み切ることか」
「そや、これはこっちが劣勢でも同じや」
「今やと九州の連中やな」
「必死になるのは当然やけどな」
「必死になり過ぎて視野が狭くなったらあかんか」
「劣勢を覆そうとな」
そうなってというのだ。
「完璧な布陣や奇襲を考えて実行に移すのは一流、しかしな」
「超一流はか」
「その一流のさらに裏をかいてな」
そのうえでというのだ。
「徹底的に打ち破るんや」
「そしてその超一流が自分か」
「伊達に四智星の一人やないわ」
芥川は笑って中里に話した。
「今夜はその具体的な内容を皆に話すで」
「それやったらな」
「そや、それで今日は軍議の後でや」
「食って飲むか」
「大事な話やから飲むのはな」
「軍議の後やな」
「それからや」
酒を飲まずそうして話をして軍を率いる星の者達全員に頭に叩き込んでもらいたいというのである。
「それでええな」
「わかった、そしてやな」
「それから飲むで、しかしうちはな」
「今この軍勢におる星の連中はな」
笑って応えた中里だった。
「全員飲むな」
「玲子ちゃんといい正岡といい井伏といいな」
「山本も飲むしな」
「織田も結構な」
「般若湯とか言うて飲むな」
「かく言う僕等もやしな」
「日本酒どんどん飲むわ」
つまり大酒飲みが揃っているというのだ。
「何かな」
「そやな、けど綾乃ちゃん程やないな」
「綾乃ちゃんはまた特別や」
自分達の棟梁であり今は都にいる彼女はというのだ。
「もうざるかうわばみか」
「そんな調子やな」
「あの娘の飲み方は格が違うわ」
「酒豪の中の酒豪か」
「将の中の将でな」
それと共にというのだ。
「もう何かがちゃうわ」
「そうした体質やねんな」
「日本人は結構下戸多いけどな」
これは弥生系の遺伝のせいだと言われている、弥生人はアルコールを分解するものが身体の中になくそれで下戸が多いというのだ。
「織田信長さんとかな」
「実は全然飲めんかったらしいな、あの人」
「実は甘党やったんや」
「如何にも飲みそうな人やけどな」
史実に残る性格から考えてだ。
「それでもやな」
「違ったんや」
それどころか飲めなかったのだ。
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