夢幻水滸伝
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第四十話 高城への進軍その四
「勝つで、しかもな」
「大勝やな」
「それを目指すんや」
ただ勝つだけでなく、というのだ。
「ここで九州での戦を終わらせる為にもな」
「絶対にやな」
「大勝ち目指すで」
「そうするか」
「それでな、今夜な」
「軍議を開くな」
「そしてや」
そのうえでというのだ。
「皆に話すで」
「釣り野伏をどうして破るか」
「そのことをな」
「もう考えはあるんじゃな」
「そうなんじゃな、軍師さんには」
井伏も山本も芥川の言葉を聞いて言った。
「もう既に」
「そうなんじゃな」
「そうや、相手の考えを読んでその裏をかく」
不敵な笑みを浮かべてだ、芥川は二人に答えた。
「それが戦の場での軍師の務めやな」
「それで、じゃな」
「裏をかいてか」
「そうや」
まさにというのだ。
「そうして戦うからな」
「今夜の軍議でか」
「話してくれるか」
「そうするからな」
「今夜の軍議はやな」
「重要やで、多分な」
ここでだ、芥川は空を見上げた。見れば先程よりも幾分か雲が多くなっている。その空を見上げて言うのだった。
「感じるやろ、神通力で」
「鬼のやな」
「僕も天狗やからな」
二人共最初から神通力が備わっている種族である、それでこのことからわかることだ。
「わかる、天気は悪くなってくるわ」
「そやな、これからな」
中里は己の角に感じるものから答えた。
「まだ雨にはならんけどな」
「天気は悪くなってな」
「雲が多くなるな」
「それで夜になるとな」
「月が隠れるな」
「それであまり見えん様になる」
月明かりが消えた分だけというのだ。
「そうなるからな」
「だからやな」
「あっちにとっては余計にや」
「奇襲の仕掛け時やな」
「夜でしかも茂みが多くて月もない」
「何よりも地の利は向こうにある」
「条件揃い過ぎや、もう確実に釣り野伏で来る」
一気に勝負を決める為にというのだ。
「というかあっちは確実に釣り野伏を成功させようと必死や」
「必死やな」
「僕等以上にな」
「今の劣勢を一気に覆す為にやな」
「そや、もう一気にや」
それこそというのだ。
「兵力も装備も劣勢でしかも大宰府からここまで攻め込まれてる」
「それであっちは自分等が思ってるよりもやな」
「必死や、必死に釣り野伏を成功させようとな」
「考えに考えてか」
「用意もしてな」
「仕掛けて来るか」
「自分達の状況を万全にさせてな、ただな」
芥川の目が光った、そのうえでの言葉だった。
「自分達のことで必死でもな」
「それでもやな」
「僕等の考えまで充分に読んでるか」
「それやな」
「奇襲は相手の裏をかく」
奇襲の本質、芥川はそれを指摘した。
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