夢幻水滸伝
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第四十話 高城への進軍その三
「尚且つな、雨でも降ったら」
「増水してやな」
「余計に水の量が増える、実際にこの前あの辺りで大雨が降った」
「水の量は増えてるか」
「尚且つ茂みもある」
「背の高い茂みが多いな」
「隠れるにはもって来いや、これは昼だけやないで」
今度は時間の話だった。
「夜もや」
「夜か」
「昼やったら上からもよお見えるが」
「夜はそうはいかん」
「空船や飛べる奴に上から見させてもや」
「夜やとな」
「例え月夜でも中々見えん」
その明かりがあろうとも、というのだ。
「上から照らしてもな」
「夜か」
「条件揃ってきたな」
「ああ、夜に攻めて来る可能性が高いか」
「そや、相手はな」
「夜襲やな、それは普通にあるわ」
戦ではとだ、中里は強い声で返した。
「特にこうした時は」
「相手が追い詰められていてそのうえでの決戦やとな」
「それをやって来るな」
「相手は万全の状況で奇襲を仕掛けて来る」
芥川は鋭い目になり中里に話した。
「自分等にとってな」
「確実に奇襲が成功する」
「そうした状況でや」
「こっちの軍勢も来たらやな」
「わかるな、それやったら」
「ああ、相手は僕等が高城を攻める時に夜にな」
「茂みに隠れて後ろや横に回り込んでな」
兵を割いてそうさせてというのだ。
「おそらく正面からな」
「一旦軍勢が来るな」
「この連中を攻めたら退く」
正面から来た兵達はというのだ。
「そうしたらこっちは攻めるな」
「追ってな」
「視界の悪い夜に敵地でな」
「しかも高台になって川がややこしい感じで流れてる場所で」
「そうなればこっちの陣形は乱れる」
攻めたその時にというのだ。
「そしてその時にこそや」
「横、後ろから伏兵が攻めて来て」
「高城の兵もうって出てや」
「奇襲から総攻撃や」
「そうして来る、釣り野伏や」
その戦術は何か、芥川は言った。
「島津家がここぞって時に使ってきた戦術や」
「島津家か」
「そや、これで耳川で大友家を破ったし竜造寺家も破った」
大友家に続いて彼等にも決定的な勝利を収めたのだ、この沖田畷の戦いで竜造寺家は多くの兵と優れた将、特に主の竜造寺隆信の首を取られるという耳川の大友家以上の決定的な敗北を被ってしまった。
「そうしてきたまさに必殺戦術や」
「それをしてくるか」
「北原は鹿児島出身やな」
相手である九州の棟梁の彼の話もした。
「当然この戦術は知っててや」
「その強さも知ってる」
「それでや、美鈴ちゃんも一番効果のある策やってわかってるしな」
「北原も決めるか」
「そや」
その通りだというのだ。
「まさにな、そやからな」
「こっちはその裏をかいてやな」
「勝つ」
まさにというのだ。
「そうするで」
「敵が必殺の奇襲で来るならか」
「それを破ってや」
そのうえでというのだ。
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