夢幻水滸伝
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第三十九話 熊本城孤立その十六
「絶対にな」
「それでもやな」
「最悪の事態は常に考えていく」
「負けもやな」
「その時はここでまたや」
「態勢を立て直して」
「また戦うで」
「その為の府内城でもあるんやな」
「そや」
まさにというのだ。
「あそこはそのことも考えてな」
「日向での戦の拠点にしてる」
「自分もそれはわかってたやろ」
「それはな」
六将星つまり戦う星の一人としてだ、中里もこうしたことは本能的に察していた。
「わかってたわ」
「そやろ、そやからな」
「どうなっても安心してやな」
「戦うんや、あらゆる手は打ってる」
負けた場合すらもというのだ。
「それやったらや」
「よし、高城やな」
「そして耳川の辺りで決戦や」
芥川の声がここで強いものになった。
「負けた場合の用意もしてるけれどな」
「それでもやな」
「勝っていくで」
「それもボロ勝ちやな」
「それを目指すで」
「それで今夜もじゃのう」
正岡は馬の顎を己の右手で摩りつつ笑って話した。
「たらふく食うか」
「それもなくてはですね」
「戦は出来んからのう」
「まさに腹が減ってはですね」
「それでじゃ」
まさにというのだ。
「食わんとじゃ」
「いけませんね」
織田も正岡に応えて話す。
「常に」
「そういうことじゃな、うちはこうしたこともしっかりしてるからのう」
「戦えていますね」
「まっこと食わんと駄目ぜよ」
正岡はこのことをはっきりと言い切った。
「人間は」
「はい、本当に」
「その通りぜよ、それでじゃ」
「それで、ですね」
「飯を何時でもたらふく食える」
「そうした軍でないと駄目ですね」
「餓えてる軍は論外じゃ」
正岡ははっきりと言い切った。
「だからこの軍隊はええんじゃ」
「常に腹一杯食べられるからですね」
「そうじゃ、今夜も鳥鍋たらふく食うてな」
「明日も進軍ですね」
「そうするんじゃ」
こう言って仲間達と共にその鳥鍋を食べるのだった、関西の軍勢は日向でも順調に兵を進め決戦の地に向かっていた。
第三十九話 完
2017・10・25
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