夢幻水滸伝
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第三十九話 熊本城孤立その十四
「若し銭がないとな」
「その場合どうなる」
「略奪したら終わりやろ」
「そんなんしたら現地の民衆の反感買うやろ」
「それで政どころやなくなるな」
「それをやった時点で終わりや」
略奪をすればそれでというのだ。
「そやからな」
「あいつが銭も用意してくれててか」
「ほんまに助かってるわ」
「略奪する位ならな」
「退くな」
「それやったら終わりやからな」
中里もこのことはわかっていた。
「それやったらな」
「もう退くしかないわ」
「若し略奪までして戦うならな」
「もう政は諦めた方がええ」
その後領地にしても治めることにかなりの支障が出るからだ。
「欧州ではかつては軍税制度があったけどな」
「占領した現地から税金を取るんか」
「それが現地調達やったがな」
「それあれやろ」
「そや、ていのいい略奪になることもな」
実際にはそう言っていい場合もというのだ。
「あったわ」
「酷い話やな」
「放火せんから金出せとかな」
「ヤクザの恫喝じゃのう」
井伏もその話を聞いてこう言った。
「それはもう」
「というか当時の傭兵はヤクザより酷かった」
「やりたい放題やったんじゃな」
「戦争には儲ける為に来ていた」
担保は自分の命だ、中には食い詰めた者がなっている場合も多くそうした者は最早生きる為に手段を選んではいなかったのだ。
「それでや」
「無茶苦茶やってたんじゃな」
「そや、そやからうちは傭兵雇ってもな」
瑠璃子達四人がそうである。
「ちゃんと報酬払ってな」
「略奪とかさせへんのな」
「そうしてるんや、これもな」
「太宰の考えでな」
「あの人じゃな」
「このこともな」
彼が考えているというのだ。
「そうなってるわ」
「ほんま政は太宰やな」
傭兵のことも含めてだ、中里は感心した様に言った。
「傭兵にも報酬払ってやな」
「変なことはさせんからな」
「それな、ほんまな」
「軍律を厳しくするだけでもな」
「あかんねんな」
「人は食わなあかん」
このことは絶対だというのだ。
「それで飯を手に入れる為に銭が必要やろ」
「傭兵はその為に軍に入るしな」
「それやったらや」
「報酬を弾んでやな」
「飯も食わせてな」
それも忘れないというのだ。
「略奪とかはさせん」
「あと軍税もか」
「そや」
そちらもというのだ。
「後で自分の領民になるのにな」
「領地にもやな」
「せんことや」
「それよりも領地にしてか」
「そこからどう治めるかや」
軍税を取り立てるよりもというのだ。
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