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夢幻水滸伝

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第三十九話 熊本城孤立その十二

「わし等も引けんわ」
「この話とあっちの世界のカープのことはのう」
「カープはカープでええ」
 芥川、ひいては中里も阪神ファンだが広島東洋カープについては極めて寛容だった、実は井伏達も阪神タイガースには優しい。
「こっちの世界の関東の連中も巨人は一人も応援してへんしな」
「そうじゃ、巨人はあかんのう」
「あのチームは球界の癌じゃ」
「それも恐ろしく悪性の癌じゃ」
「とにかくやばい癌じゃ」
「そや、留学組も巨人好きな奴おらん」
 八条学園は関西にある為に巨人ファンは極めて少ない、巨人教という邪悪極まるポルポトに匹敵する危険思想は存在していないのだ。
「太平洋におるな」
「何でそんなこと知ってるんだよ、軍師さん」
「僕の耳は地獄耳やからな」
 玲子に即座に答えた。
「好きなチームが何処かはな」
「太平洋の星の連中のはかい」
「全員把握してる、レッドソックスとかドジャースもあるけれどな」
「巨人ファンは一人もおらんかった」
「それはいいことだね」
「巨人なんか応援してもな」
「いいことないからね」
 それこそ一つもだ。
「巨人が優勝してもね」
「巨人優勝してどっかの百貨店やスーパーが安くなるか」
 中里はこのことから話した。
「新聞も安くならん」
「そうだね、絶対に」
「西武が日本一になったら西武百貨店が安売りになる」
 西部黄金時代は毎年の様にバーゲンがあった、ただしファンでない者はもう西武の日本一は一生分観たと言った。
「ソフトバンクや広島やと地域の経済や」
「そっちがよくなるね」
「楽天もな、けど巨人はどや」
「何もないね」
「テレビのうざい巨人ファンのタレントがはしゃぐだけや」
 そしてそうしたタレントの不快度が常に高いのはどうしてだろうか。
「観てて腹立つわ」
「本当にそれだけだね」
「何がええねん」
 巨人が優勝してもだ。
「最下位になるのが一番ええんや、巨人は」
「それも未来永劫ね」
「そや、巨人は一億年は最下位になるんや」
 皆中里のその正論に無言で頷いた。
「こっちの世界は巨人ないけどな」
「野球はあってもな」
「あるんか」
「アメリカでやってるわ、ただな」
 その野球はというと。
「かなり初期の野球やで」
「初期の?」
「十九世紀後半位のな」
「ベーブ=ルース以前か」
「そや、グローブやミットも小さくてな」
 今現在あちらの世界で行われている野球で使われているグローブやミットよりも遥かに小さいものだというのだ。
「ユニフォームも野暮ったい」
「そんなのか」
「ほんまかなり昔や」
 そうした野球だというのだ。
「そんな野球や」
「正岡子規さんの頃ですか」
 織田は郷里の英雄のことから聞いた。
「その野球は」
「そや、大体な」
「本当に初期の野球ですね」
「そんな野球があっちでやってるわ」
「そうなのですね」
「まあ後々こっちにも入って来てな」
 そうしてというのだ。 
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