| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

夢幻水滸伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三十九話 熊本城孤立その十一

「あれはあれでいいのですが」
「何かちゃうやろ」
「はい、西のそばつゆとは」
「蕎麦は関東っていうけどな」
 中里は関西人として話した。
「関西の方がな」
「いいですね」
「僕としてはな」
「拙僧もです」
「けどあのつゆやったらわかるわ」 
 関東のそばつゆならとだ、中里はあらためて述べた。
「蕎麦をちょっと漬けて噛まずに飲み込むのはな」
「あれはまっこと身体に悪い食い方ぜよ」
 正岡は江戸っ子の蕎麦の食べ方について即座に駄目出しをした。
「噛まないと駄目ぜよ」
「それな、最初その話聞いて何でやって思ったわ」 
 中里は正岡にも応えた。
「蕎麦は噛まんで喉ごし味わうとかな」
「わしもぜよ」
「噛めって思ったけどな」
「つゆに関係あったんじゃのう」  
 井伏も関東のそばつゆの話をしてきた。
「つゆが辛いからじゃな」
「大根おろしの汁は辛いわ」
「そこにお醤油もじゃ」
「関東のお醤油は辛いしな」
「それもあるけんのう」
「こっちは薄口醤油や」
 関西の醤油はだ、中里は述べた。
「向こうの醤油派とにかく辛い」
「辛いものに辛いものを合わせてのう」
 井伏はその辛さのことを思い出しつつ述べた。
「それじゃあのう」
「そばつゆにはちょっと漬けてな」
「噛まずに飲み込む様になるんじゃな」
「そうみたいやな」
「それで美味いんかのう」
 山本は腕を組み首を傾げさせて関東の蕎麦の食べ方について話した。
「わしはそこが不思議じゃ」
「あっちではそれで美味いみたいやな」
「わしも噛むわ」 
 蕎麦、ざるそばやせいろの食べ方はだ。せいろは蒸したそばだ。普通のざるとはまた違うのである。
「そうした蕎麦は」
「まあ関西やとそやな」
「東国の連中と争った時そこでも揉めるかのう」
「かもな、すき焼きはともかくとしてや」
「蕎麦ではのう」
「絶対に揉めるわ、あとうどんな」
 こちらは何といってもと言う中里だった。
「あっちのうどんはあかんわ」
「あれ何や」
 芥川も関東のうどんについては駄目出しだった。
「おつゆ墨汁か」
「めっちゃ黒いからな」
「しかも辛いわ」
 関西人はこの辛さをだだっ辛いという、勿論褒めてはいない。
「あっちのだしとお醤油の関係やな」
「それやな」
「それや、ほんまにや」
 それでというのだ。
「そのせいで辛くてな」
「口に合わんな」
「うどんは論外や」
 蕎麦以上にというのだ。
「僕等にはな」
「そやな、あともんじゃな」
「あんなもん興味もないわ」
 芥川はもんじゃについてはうどん以上に辛辣だった、最早食べる気もないといった感じが出ていた。
「食う気も起こらん」
「お好み焼きもやな」
「摂津や安芸の話は置いておく」
 丁度関西の人間と山陽の人間がいる、お好み焼きの対立は同じ陣営となっても容易に終わるものではないのだ。
「お好み焼きやからな」
「そうじゃ、それはな」
「やるもんじゃないわ」
 その井伏と山本が応えてきた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧