夢幻水滸伝
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第三十九話 熊本城孤立その一
第三十九話 熊本城孤立
瑠璃子達四人は自分達が率いる軍勢と共に天草から肥後に入った、するとすぐに軍勢を熊本城に向けたが。
城を囲むとだ、四人はすぐに自分達が率いる軍勢に命じた。
「囲んだらこれまでや」
「もう攻めへんで」
「絶対に攻めたらあかんで」
「囲むだけや」
「そうしてですか」
部将の一人がその四人に問うた。
「熊本城は動けへん様にしますか」
「そや、主力はや」
雅美が答えた。
「薩摩との境に向けてな」
「薩摩から攻められへん様にする」
「そうしてくで」
「あとここには一万の兵を置くけどな」
今度は由香が話した。
「その一万で肥後の北全体を頼むで」
「そして残り一万で、ですか」
「薩摩との境と人吉城や」
肥後の南、薩摩との境に比較的近いこの城をというのだ。
「あそこを手に入れるで」
「人吉城を肥後でのうち等のとりあえずの拠点にするんや」
こう言ったのは紗枝だった。
「それが大事や、もう豊後は抑えたしな」
肥後に北に面しているこの国が関西の軍勢の手に落ちたことは芥川の貝殻からの連絡で受け取っているのだ。
「熊本城は完全に孤立してるし」
「余計に攻める理由はないですか」
「あの城はそうそうなことでは攻め落とせん」
紗枝は言い切った。
「ほな囲んで常閉が出られん様にしてな」
「他の場所の統治を進めていく」
「そうしていきますか」
「そや」
その通りだというのだ。
「そうしてくで」
「まあこんな城攻めてもええことないわ」
瑠璃子は囲んでいるその熊本城を見た、黒を基調としている城は大きいだけでなく堀は広く壁も石垣も高い、しかもその石垣は見事に反り返りあちこちに上から兵が攻められる様になっている。櫓は多く見事な天守閣もある。
その熊本城を見てだ、瑠璃子は言うのだった。
「空から攻めてもな」
「反撃されますね」
「そや」
城には空に向けて放つ大矢の台がある、しかもそれが結構な数だ。空船で攻めてもそれで反撃を受けることは明らかだ。
「弓兵も鉄砲隊も多いしな」
「それで、ですね」
「大砲もな」
それで攻める手はというと。瑠璃子は城の壁の方を見ると大砲を撃って来る場所も多く大砲自体も結構な数だ。
「撃ち合いになるやろ」
「それで今は相手の射程から離れてますし」
「ほんま攻めにくい城や」
それでというのだ。
「それでや」
「攻めたらあきませんか」
「絶対にな、しかもうち等の仕事はあの城を攻め落とすことやない」
「肥後まで抑えて統治の足場を固めてや」
紗枝がまた言ってきた。
「薩摩から攻められん様にすることやし」
「余計にですか」
「攻める理由ないのに攻めてもしゃあないわ」
実にこの四人らしい返事だった。
「それでや」
「全然やな」
「そや」
まさにというのだ。
「囲むだけでええんや、九州の西を抑えるのが目的やし」
「熊本城は攻めずに」
「囲んでな、人吉城に行くで」
そして薩摩との境にというのだ。
「勿論薩摩に隙があったら攻め込むしな」
「薩摩に攻め込んだら薩摩揚げとかるかん、きびなごや」
雅美は笑って薩摩の名物の話をした。
「豚肉もあるしあそこもラーメンが有名やし」
「そこで食べものですか」
「焼酎もあるわ」
酒の話もする雅美だった。
「そういうのがある、けど攻め込むのもな」
「あくまでやな」
「相手に隙が出来たらや」
その時だというのだ。
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