八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百四十一話 怪談その二
「岩藤かな」
「それも雨月物語?」
「そこにあるの?」
「いや、歌舞伎なんだ」
草履で相手の額を打つ場面が有名だ、もっともこのことから敵討ちを受けて成敗されてしまうけれど。
「この岩藤は殺されて蘇るんだ」
「幽霊になって?」
「そうしてなの?」
「うん、骸骨になっても動くし」
そうした場面もある。
「幽霊が宙に浮かんだりするから」
「それが怖いの」
「その場面が」
「そうなんだ、これも怖いんだ」
岩藤という悪女もだ。
「あと累ヶ淵も怖いし番長皿屋敷もあるしね」
「そっちも幽霊なのね」
「幽霊が出るのね」
「そうだよ、牡丹灯籠もだよ」
この作品もだ。
「幽霊だよ、ただ牡丹灯籠は奇麗だけれどね」
「怖いことは怖くとも」
「それでもなのね」
「うん、これは雨月物語もなんだ」
確かに怖い、だがそれと共にそこに美もある。そうしたことはポーも同じだろうか。
「怖いけれどね」
「それでもなのね」
「奇麗でもあるの」
「悲しさもあって。耳なし芳一もだね」
この作品にしてもだ。
「怖いけれど悲しさもあるんだ」
「平家よね、確か」
ニキータさんは耳なし芳一と聞いてこう言ってきた。
「あの源平の」
「そう、平家の怨霊の話だよ」
「平家の怨霊が出て来るの」
「毎晩芳一を呼んで墓の前で平家物語を言わせてたんだ」
「そうだったの」
「日本じゃ怨霊が強くて」
本当に妖怪なんか目じゃない、人の憎悪や恨みがどれだけ恐ろしいのかを伝えている。
「魔王にもなるから」
「魔王って」
モンセラさんは眉を顰めさせて言った。
「悪魔じゃない」
「日本じゃ違って」
「人間がなるの」
「そう憎しみとか恨みとかでね」
「そうなのね」
「またこれが強くて」
それも桁外れにだ。
「国を滅ぼす位なんだ」
「キリスト教の魔王みたいじゃない」
「力はそれ位怖いね」
物語でもそうだ、太平記等でも出て来る。
「だから太宰府天満宮でも大切に祀られてるし」
「天神さん?」
「そう、菅原道真さんもね」
この人は日本三大怨霊の一人とされている。
「そうした意味でも祀られているんだ」
「怨念を鎮める為にも」
「亡くなってから大変なことも起こったから」
何と歴史書にもそう書いてある。
「それでなんだ」
「怨念にも気をつけて」
「それで祀ってるんだ」
「祟りあるの」
「そうされてるよ」
少なくとも僕は否定しない。
「他にも怨念の話があるしね」
「魔王になってなの」
「うん、日本を乱すんだ」
「じゃあ日本の戦いって」
今度はニキータさんが言ってきた。
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