八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百四十話 夏の雨を見てその九
「そうしてもいいかな」
「俺にか」
「うん、畑中さんもいてくれているけれど」
「俺でよかったらな」
親父らしい返事だった、これまた。
「その時はな」
「それじゃあね」
「まあ俺でよかったらな」
またこう言ってきた。
「何時でも何でも話してくれよ」
「じゃあそうさせてもらうね」
「逃げはしないからな」
「そうだよね、親父は」
「これでも御前の父親だからな」
だからだというのだ。
「それはしないさ、というか誰でもな」
「相談してくれたら」
「逃げたらな」
その相談してきた人からというのだ。
「やっぱり駄目だろ」
「そういう時に逃げたら」
「逃げていい時もあるけれどな」
「そうした時はだね」
「やっぱり駄目なんだよ」
「それでなんだ」
「俺も逃げないからな」
何があってもという返事だった。
「安心して言えよ」
「言いたい時は」
「何でもな」
「悪いね」
「ははは、お礼もいいさ」
親父はまた僕に笑って話いた。
「そっちもな」
「当然のことだからだね」
「医者が患者さん助けるのも親が子供の為に何かをするのもな」
そのどちらもというのだ。
「当然のことなんだよ」
「だからお礼はいいんだ」
「ああ、けれど御前が言いたいならな」
お礼をというのだ。
「いいさ、お礼を言うことはいいことだからな」
「言わなくていいっていう相手にもだね」
「俺はともかく言われて悪い気がする人もいないしな」
「それ親父もだよね」
お礼を言われて悪い気がしないのはとだ、僕は親父に返した。
「お礼言われると嬉しいよね」
「それはな、けれどな」
「お医者さんとしても父親としても」
「当然のことをしてるんだよ」
「そうなんだ」
「だから言っておくな」
「お礼は特にいいんだね」
僕から親父に言った。
「そうなんだね」
「そうさ、しかし元気だとな」
親父はまた笑って僕に言ってきた。
「それだけでいいことだ」
「うん、何処も悪くないよ」
「酒も美味いか」
「凄いね」
「酒がまずくなったら注意しろよ」
親父こうも言った。
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