八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百四十話 夏の雨を見てその五
「何か、ね」
「バイクも恰好いいけれどね」
「モトクロスだから乗らないけれど」
この前置きからだ、イタワッチさんはこんなことも言った。
「サイドカーもいいでしょ」
「ああ、あれね」
「うちの学校でサイドカー通学の娘いるし」
「うん、うちバイク通学いいしね」
女子寮の娘でもバイクに乗っている娘がいる、関東の方から来た娘で中国拳法の達人らしい。
「大学にもいるよね」
「ええ、黒と銀色のカラーリングいいわね」
「乗ってる人はこの大学の学生さんでね」
一度見たけれどクールで恰好いい雰囲気の人だ、駅前の喫茶店でアルバイトもしているらしい。
「悪魔博士とも知り合いらしいよ」
「ああ、あの仙人みたいな人ね」
「百二十歳とか百五十歳とか言われてるね」
「そのお話何度聞いても信じられないけれど」
「嘘か本当かわからないよ」
けれど八条家の百歳になる長老さんがあの博士から講義を受けたと言っている、大戦前の話だ。
「けれどかなりね」
「怪しいのね」
「確実に百歳は超えているよ」
長老さん曰く百二十歳以上は間違いないとのことだ。
「あの人はね」
「それでまだ大学にいて」
「そうなんだ」
「働いてるのね」
「講義もあるよ」
「その人とも知り合いなの」
「学部は違う筈だけれど」
それでもだ。
「よく一緒にいるみたいだよ」
「そうなのね」
「それでイタワッチさんサイドカーも」
「何時か乗ってみたいわね」
実際にという言葉だった。
「恰好いいから」
「サイドカーもロマンなんだ」
「そうよ、バイク自体がそうでしょ」
速く移動出来る便利さ以上にというのだ。
「格好良くてね」
「ロマンで」
「だから乗るんだね」
「バイク好きはね、それでサイドカーにもね」
「ロマンを感じてるんだ」
「私が運転して」
そしてとだ、イタワッチさんは正面を見て笑う顔になってそのうえで僕に対して話をしてくれた。
「横に誰か乗せてあげるのよ」
「その誰かは?」
「どう?」
ここで僕に顔を向けて誘いをかけてきた。
「乗ってみる?」
「横の席にだね」
「思いきり飛ばすけれど」
「機会があれば」
僕も微笑んでイタワッチさんに答えた。
「そうさせてもらうよ」
「それじゃあね、実家で最近サイドカーも扱ってるらしいのよ」
「そうなんだ」
「だからね」
「サイドカーを買うんだ」
「ルートは知ってるから」
買うそれをというのだ。
「もうね」
「安く買って」
「そうして乗るわ」
ロマンを見ていての言葉だった。
「サイドカーもね」
「じゃあ」
「日本にいる間は無理でしょうけれど」
「機会があったら」
「飛ばすわよ」
また僕の方を見て言った、そうした話を雨の中帰りながら話した。そしてその話の後でだった。
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