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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百四十話 夏の雨を見てその一

            第百四十話  夏の雨を見て
 三人で雨の道を傘をさして帰りつつだ、テレサさんは僕の向かい側にいるイタワッチさんに言った。僕から見てイタワッチさんが右、テレサさんが左にいる。
「東京のお蕎麦だけれど」
「あの噛まないっていう?」
「イタワッチもよね」
「ええ、噛まないとかね」
 それはという返事だった。
「ないわよね」
「そうよね」
「変な食べ方よね」
「お素麺でも噛むのね」
「多少でもね」
「それを噛まないで飲むって」
「消化に悪いわ」
 絶対にという言葉だった。
「お素麺でもね」
「味もわからないしね」
 噛まないと、というのだ。
「変なことするわね」
「全くよ」
 こう二人で話していく。
「何かね」
「東京のお蕎麦ってね」
「それで味わえるのか」
「美味しいの?噛まないで」
「そんな食べ方してね」
「喉で味わうって」
「舌で味わうんでしょ」
 食べものはというのだ。
「消化に悪いし美味しいとも思えない」
「変な食べ方ね」
「お素麺でもしない様な」
「それだけれど」
 部活で聞いた話をだ、僕はここで二人にした。三人共違う傘をさしている。
「最近そうした食べ方ばかりじゃないって聞いたよ」
「そうなの?」
「噛んで食べてるの」
「そういう人も増えたみたいなんだ」
 僕は二人に今の東京の話をした。
「他の地域から来る人も増えたし」
「それは知ってても」
「昔の食べ方?」
「それが変に思えて」
「そばつゆのせいでも」
「それがわかっていてもよ」
 聞いてだ。
「変ねって思うのよ」
「噛まないことは」
「よく噛みなさいって言うじゃない」
「よくね」
「子供の時は言われるけれど」
 親からの教育だ、これも。そう言ってちゃんと消化にいい食べ方を教えているのだ。
「それもなかったのって」
「蕎麦に関してはね」
「東京じゃそうだったの」
「うん、辛いおつゆのせいもあって」
「蕎麦だけは違ったのね」
「ざるそばはね、辛い味を味わいたくない」
「何度聞いてもわからないわ」
 どうしてもという返事だった。
「私は」
「そうなんだ」
「実際食べてみないとわからないのかしら」
「食べても」 
 ここで言ったのはイタワッチさんだった。
「わからないかもね」
「もう条件反射で噛むわよね」
「お口の中に入れたらね」
「それで噛まずに飲めって言われてたら」
「何でってなるわね」
「どうしても」
「それは東京にいないからね」
 もっと言えば昔の江戸っ子じゃないからだ。
「そう言うのかもね」
「その場所にいないとわからない」
「ちょっと行って食べた位じゃなのね」
「わからないこともある」
「そういうことね」
「そうかもね、僕もね」 
 かく言う僕自身もだ。 
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