八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百四十話 夏の雨を見てその二
「お口の中に食べものを入れたら」
「噛むわよね」
「どうしても」
「それが習慣だから」
癖以上のものだ、最早。
「だからね」
「噛んで食べる」
「あっちに行っても」
「そうなるよ、ついでに言えば」
僕はさらに言った。
「天ざるがいいね」
「ああ、天婦羅付きのざるね」
「あのお蕎麦ね」
「あれはいいよ」
最高に合う、この組み合わせは。
「天婦羅とお蕎麦が互いにいい影響を与えてね」
「天婦羅そばもそうだけれど」
「熱い方の」
「あれのざるもね」
それもだ。
「いいよね」
「あれはね」
「確かにね」
二人共僕の天ざるの話に頷いてくれた。
「前八条荘で食べたけれど」
「物凄く美味しかったわ」
「ざるそばと天婦羅の味が合わさってね」
「とんでもない美味しさだったわ」
「私お蕎麦四杯食べたわ」
「私もよ」
「僕は五杯だったよ」
ざるそばは杯と数えるのだろうか、何かこの辺り今一つ自信がない。関東と関西では違うとかそういうのはないと思いたい。
「とにかく食べたよ」
「天婦羅も美味しかったしね」
「小野さんそっちも上手だし」
「海老もキスもね」
「お野菜も」
「そうだったね、また食べたいね」
僕は心からこう思った。
「あのお蕎麦は八条家お抱えの蕎麦職人の人が打ってくれたものだったしね」
「あれ小野さんが打ってくれたいんじゃないの」
「そうだったの」
「違うんだ、小野さんが茹でたけれど」
このことは事実でもだ。
「小野さん蕎麦打ちは出来ないから」
「だからなの」
「それで専門の蕎麦打ちの人がなのね」
「打ってくれたのを八条荘に持って来て」
「それで小野さんが茹でてくれた」
「そうだったのね」
「そうなんだ、お蕎麦はね」
これはおうどんの方もだ、実は。
「専門の人を抱えていて」
「八条家で」
「うちの一族も結構お蕎麦というかおうどん食べるから」
関西だけあっておうどんがメインだ、きし麺も人気がある。
「それで代々雇ってるんだ」
「そうなのね」
「いつもなのね」
「うん、それで小野さんがお願いして打ってもらって」
それで八条荘まで車で運んでもらってだ。
「小野さんが茹でてくれたんだ」
「そうなのね、というか一族で蕎麦打ちの人雇うなんて」
「凄いわね」
「普段はおうどん屋さんやってるんだ」
神戸のあるお店でだ。
「けれど時々ね」
「あの時みたいになの」
「打ってもらってるの」
「そうなんだ、それであのお蕎麦だったんだ」
抜群のコシと風味のだ。
ページ上へ戻る