夢幻水滸伝
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第三十七話 肥後へその五
「佐世保の人達も困るからね」
「九州のままでいるか一時でも関西に降るか」
「そのことをですね」
「下手に蜂起なんてしたらね」
それこそというのだ。
「困るのは佐世保の人達だからね」
「はい、そうなれば関西の軍勢も鎮圧するしかありませんし」
「それは誰にもいいことではないですね」
「犠牲者は出て街も傷付く」
「そうなるので」
「だからそれはね」
絶対にというのだった。
「言っておくよ、そのうえでね」
「はい、長崎に退きましょう」
「そして長崎でもですね」
「そうして退き」
「天草から肥後に行きますか」
「そうなりますか」
「そうなるよ、結局今の私達は戦うよりもね」
軍勢としているがというのだ。
「時間稼ぎだからね」
「こうしてですね」
「適度に時間を稼いで、ですね」
「そうして退いていく」
「戦うよりも」
「そうなるね、私的には好きじゃないけれどね」
どうしてもとだ、苦笑いで言ったのだった。
「こうした時はね」
「仕方ないですね」
「それが今の務めですし」
「ではですね」
「このまま退きますか」
「時間は稼ぎましたし」
「及第だね」
時間稼ぎという観点から言えばというのだ。
「だからもう下がるよ」
「佐世保の人達に話して」
「そうしてですね」
「今度は長崎ですね」
「あの街に入り」
「それでそこでも時間稼ぎをしてね」
今の様にというのだ。
「そしてだよ」
「天草、そして肥後ですね」
「そうしていきますか」
「今の私達はいるだけでいいってところがあるからね」
敵を警戒させる、そうして無人の野を行く様な進撃をさせないことこそが目的だというのである。
「まあ戦って勝てないにしても」
「はい、務めは果たしている」
「ならそれをよしとしますか」
「今は」
「自分に言い聞かせているみたいだけれどね」
そう思ってもというのだ。
「それでもね」
「はい、では」
「長崎ね」
兵達も雪路に応えてそうしてだった、彼等は雪路が民達に事情を話して自制を強く言ってからだった。そのうえで。
長崎に移った、このことはすぐに四人の耳にも入ったが。
四人共だ、今はこう言った。
「ほな佐世保占領してな」
「それからやな」
「長崎や」
「そうしていこうな」
「無欠入城になりますが喜ばれないのですか?」
報告をした旗本は落ち着いている四人に意外といった顔で聞いた。
「そうされないのですか」
「ううん、そうしたいとこやけどな」
「実は思ったより進撃が遅いんや」
「予定よりも遅れてるっていうか」
「そうなっててな」
それでというのだ。
「喜べる状況やないねん」
「まあ悪い状況でもないけどな」
「そんな遅れてるわけでもないし」
「想定の範囲内の遅れやけどな」
それでもとだ、四人は旗本に微妙な顔で答えた。
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