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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百三十八話 忘れられないものその五

「出来れば」
「そうなんだ」
「だから六月はね」
 日本のこの季節はというのだ。
「本当によかったわ」
「好きだったんだ」
「雨も風情があってね」
「雨ばかり降ってね」 
 僕は日本人の感覚でテレサさんに答えた。
「僕はあまりね」
「六月好きじゃないの」
「雨も必要だけれど」
 正直降ってもらわないと困る、このことは事実だ。人間も作物も生きものも水がないとどうしようもない。
「けれど毎日毎日雨だから」
「嫌なのね」
「一気に降ってくれたらいいのに」
 どうせ降るならだ。
「まとめてね」
「スコールみたいに」
「そんな感じでね」
「そうなのね」
「長雨はね」
 僕としてはだ。
「あまりね」
「好きじゃなくて」
「望ましいことじゃないね」
「そうなのね」
「うん、テレサさんは違うみたいだけれど」
「この降り方好きよ」
 このしとしととした降り方がというのだ。
「もっとも日本も夏にはスコールがあったけれど」
「ゲリラ豪雨だね」
「そう、急にどかって降って急に止む」
「夕立だね」
 俗にゲリラ豪雨と言われているけれどやっぱり夕立だろう。何かこのゲリラ豪雨も温暖化の実例の一つだと言う人もいる。
「あれだね」
「あれがあったけれど」
「もうそれも終わりだよ」
「夏が終わって」
「それでね」 
 夕立はあくまで夏のものだ、秋にはない。そして秋は一体どういった降り方をするかというと。
「こうした降り方になるんだ」
「そうなのね」
「もうこの降り方ってことは」
 夕方に一気に降らなくなってだ。
「秋になってるってことだろうね」
「そうなるのね」
「そう、涼しくもなってきたし」
 まだまだ暑いのは事実でもだ。
「だからね」
「もう秋なのね」
「その季節になってきたよ」
「そうなのね」
「秋ははじめてだよね」
「ええ、それはね」
 フィリピンにいるとだ、テレサさんはここでまたお国のことを話してきた。
「秋も。他の季節もね」
「なくてだね」
「はじめてよ、春は素敵だったし」
 僕ににこりとして話してくれた。
「秋も楽しみにしてるわ、山の色も変わるのよね」
「うん、緑の葉がね」
 山の木々のだ、春は黄緑で夏は深緑になってだ。
「紅や黄色になるんだ」
「紅葉や銀杏よね」
「そうした木がね」 
 まさにだ。
「色が変わってね」
「赤や黄色になるのね」
「そうなんだ、奇麗だからね」 
 僕はテレサさんにこのことも話した。 
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