ラピス、母よりも強く愛して
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11.5家庭崩壊
少し戻って平和な地球。
地球に引越し後、ミスマル家ではダグラムのヒロインみたいに、頬骨が出て痩せこけていたユリカさんが、少し健康になってふっくらして来た。
「ねえママ、むりしないで、また病気になっちゃうよ」
家事に精を出す母の体を気遣い、休ませようとしていた。
「大丈夫よ、私は元気だから」
「だめ~、もうラピスちゃんいないんだから~」
「あら、どうしてラピスちゃんがいないと駄目なの?」
事情を知らないユリカの母は、目線を合わせ娘に問い掛けた。
「だって、あのときは、ラピスちゃんが治してくれたの、お医者さんじゃあ治せなかったの」
「そう」
それでもすぐ家事に戻り、子供の戯言のように聞き流している母を見て泣き出す。
「違うの~! ラピスちゃんがナノマシン注射してくれたのっ「今の医学では治せないないから秘密」だって」
母を思うあまり、つい禁じられていた話まで口走ってしまった哀れな子。
「じゃあ「ユリカさん」は、どうして秘密を喋ってしまうのかしら」
母の呼び方も話し方も、いつもと違うのに気付き、上を見上げると?
「キャアアアアッ!」
そこにはラピスのような表情をした母が、金色の瞳でユリカを見下ろしていた。
「とうとう喋ったわね(ニヤリ)」
「ヒィッ! ヒィイッ!」
自分の味方だと信じていた母はラピスの操り人形だった。
ユリカは腰が抜けて逃げる事もできず、絶望しきった表情で後ずさっていた。
「どうして喋ったの?」
「イヤアアッ」
「泣いてちゃ分からないわ、あれほど約束したのに」
まだ目の前の出来事が信じられないのか、信じたくなかったのか首を左右に振って「えぐえぐ」と泣いているユリカ。
「もう貴方とママには死んで貰うしか無いわね」
ユリカを片手で軽々と持ち上げ、喉に手を回すママだった物。
「さあ、このまま捻り殺されるのと、ママと心中するのと、どっちがいい?」
「ヒィイッ」
究極の選択を迫られる哀れなユリカちゃん。
「ぐふっ!」
そのまま柱にぶつけられ、脇腹に激痛が走る、
そこでママ?は車のキーを持って、外に出る用意をした。
「車で全速で対向車にぶつかって、親子でグチャグチャになるのもいいわね?」
「イヤッ、やめてえっ」
そこにペットロボットのアキト君が走って来て、ユリカの母?を止めた。
「どうしたのママさんっ、ユリカちゃんが泣いてる、やめてよっ! もうやめてよ!」
アキトと同じ声を聞き、少しは正気?を取り戻すラピス。
ユリカも殺気が減ったを察したのか、硬直した状態から回復した。
「いやあ~~! ころさないでっ! ママをころさないで~~! わたしをころさないで~~~!」
まるでどこかの弐号機パイロットのようなセリフを言うユリカ。その心の中も精神汚染され、誰かと同じようにトラウマの塊となって行った。
(警察に通報しなさい)
ペットロボットに、緊急通報機能を使うよう指示するラピス。
「えっ? うん。助けてっ!僕の友達がいじめられてるのっ! 助けてっ、助けて~~!」
奇妙な通報に戸惑う係官だったが、虐待の映像を見せられ、緊急出動を要請した。
「さあ、このまま捻り殺されるのと、ママと心中するのと、どっちがいい?」
「ヒィイイイ!」
「殺さないで欲しいの?」
「うん」
「ママを返して欲しい?」
「うん」
「じゃあ、三回回ってワンよ」
ペットロボットが来てしまい、まるでアキトに見られているような感じがして、恐ろしいお仕置きは出来ず、傍では腰が抜けたままのユリカが、言われた通り回っていた。
「ワン……」
もうこのユリカは、精神的にも人格やプライドなど、全部駄目になっていた。
「今度だけはアキト君に免じて許してあげるわ」
「ほんと?」
「じゃあ、貴方のママが目を覚まして、何で泣いているか聞いたら「ママが急に怒り出して、私の首を締めた」って言うのよ」
「ええっ?」
「それでも平然としていたら、貴方のママじゃない、まだ私がいるって意味よ。驚いて医者にでも相談に行ったら貴方のママが戻って来た証拠よ」
「うん」
やがてユリカの母は、穏やかな表情に戻ると急に力が無くなり、片手ではユリカを持っていられず下に落とした。
「ママ?」
「どうして泣いてるの?ユリカ」
「…………」
ユリカの耳の中では、先程のラピスの命令が繰り返されていた。
(ママが急に怒り出して、私の首を締めたって言うのよ)
「マ、ママがきゅうにおこりだして…… くびをしめたの」
「えっ?」
「ママがわたしの……」
そこでようやく、ユリカの首に締められたような、赤いあざがあるのに気付く。
「なっ! 何で?」
ついさっきまでの自分の記憶が無く、何をしていたのかは、どうしても思い出せない。
「まさか?」
そこで家の周辺でパトカーが走って来る音が聞こえていた。
「警察です! 開けなさい! 開けないと鍵を壊しますよ!」
ペットロボットの通報により、ユリカの母は幼児虐待の疑いで逮捕された(笑)。
ペットロボットへの事情聴取
「じゃあ、ユリカちゃんは、いつもママに叩かれたり、虐められていたんだね?」
「そうだよ、僕がこの家に来てからユリカちゃんはいつも叩かれていて、ママさんは怒ったら人が変ったみたいになって、僕が止めても聞いてくれなかったんだ」
嘘で塗り固めて証言し、ユリカの母を陥れるペットロボットのアキト君。
その言葉は「ロボットは嘘をつかない」との仮定から、証拠として採用されてしまった。
さらに防犯ビデオの機能で、当時の様子を再生するアキト君。
(再生)「車で全速で対向車にぶつかって、親子でグチャグチャになるのもいいわね?」
(再生)「どうしたのママさんっ、ユリカちゃんが泣いてる、やめてよっ、もうやめてよ~~!」
所々、声が小さい部分は聞き取れなかったが、母やユリカが叫んでいる所は明瞭に聞き取れた。
(再生)「いやあ~~~~! ころさないでっ! ママをころさないで~~! わたしをころさないで~~~!!」
その内容を見せられ愕然とするユリカの母。
「何て事を……」
ラピスの狙い通り、ミスマル家は崩壊の危機に陥った。
精神科医との面談を受けるユリカの母。もう逮捕拘束されて、娘と面会など到底許されない立場になった。
「この人格は多分、ミスマルさんが子供の頃、虐待されていた頃に派生した人格だと思われます、ご自身を傷付けるため、または、お嬢さんを虐待する時に現れるようです」
「そんなっ」
「お嬢さんが「ママを殺さないで」と言っている所からも、お嬢さんはミスマルさん自身と、この人格が別人であると認識していますね」
もう顔を覆って泣き、自分こそが今まで娘を虐待し、家出させて来た犯人なのだと思い知って、肩を震わせる。
「お嬢さんは貴方をかばっているのか、何度も貴方の別人格に脅迫され、正直に答える事もできないようです」
そう言ってため息を漏らす医師。
「もしくはすでに人格が乖離して、虐待された時の記憶は閉ざされている、とも考えられます」
「ううっ! うわああああああっ!」
口を抑え、泣き崩れるユリカの母。
「娘さんの体にも、いくつもの骨折の跡がみつかりました(ラピスに虐められたため)、それと火星でも、娘さんは家出の常習者として、何度も遠い場所で保護されていますが、これは交通機関を使わず子供だけで移動できる距離ではありません。あちらでの調査がどうだったのか不明ですが、我々は貴方が連れて行って捨てたと仮定しています。取調べにご協力願えますか?」
「はい……」
その時、別室で聞き取り調査を受けているユリカは。
「お嬢ちゃん、今までにもよくあんな事があったの?」
「ううん、ちがうの、あんなこといままでなかったの」
しかし、ラピスの事を隠すあまり、ポリグラフはビンビンに反応していた。
「隠さなくてもいいんだよ、これはママのためにも、君のためにも大切な事だから」
周囲を大人に囲まれ、パニック障害を起こしてしまうユリカさん。白目剥いて痙攣し始め、あらぬことを叫び始める。
「ひいいっ、ママをっ、ママをころさないで~~~っ!」
すでに誤解が誤解を産み、大変な事になっていた。
その後、一部の週刊誌では「お手柄、ペットロボットにより、幼児虐待多重人格母ついに逮捕」などの刺激的な文面が踊り、テレビのワイドショーでも大きく取り上げられていた。
「このペットロボットなんですけど、これがまた賢いんですよ、飼い主が母親に虐待される所を止めて、警察に通報したんです」
一部脚色され、再現ドラマまで放送されてしまうミスマル一家の内情。
「どうしてあなたは私の言う事が聞けないのっ!」
子供を叩いている、放送上不適切な部分は影で表現される。
『(ナレーション)こうして毎日のように母親から虐待を受けていたユリコちゃん(仮名)は、体に何箇所も骨折の跡が見付かり、適切な治療も受けさせて貰えませんでした』
「また服を汚してっ! 今日こそ許さないわよ!」
「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ!」
『しかしこの日は、引越し前にユリコちゃん(仮名)が友達に貰っていた、ペットロボットがいたのです』
「お母さん、やめてくださいっ! ユリコちゃんが泣いてます!」
「邪魔よっ!」
「ギャッ!」
蹴り飛ばされ、壁にぶつかるペットロボット。
「誰か、誰かユリコちゃんを助けて」
テレビ的な脚色が入り、涙に濡れる画像の中に震える前足が揺れていた。
『このロボットは最後の望みを託し、警察への緊急通報機能を使いました』
ここで「レスキュー911」のように、実際に通報を受けた担当官が映される。
「ええ、始めは子供のいたずらかと思ったんですが、あの映像を見せられて」
「(再現映像)はい警察です」
「(プライバシー保護のため、音声には処置が施されています)助けてっ!僕の友達がいじめられてるのっ!助けてっ!助けて~~!」
「(プライバシー保護のため、映像と音声には処置が施されています)さあ、このまま捻り殺されるのと、ママと心中するのと、どっちがいい?」
母親が子供の首を締め上げ、柱に叩きつける凄惨な光景が展開され、お茶の間の誰もが息を飲んだ。
『やがて急行した警官によって、この母親は逮捕されましたが、もしこのロボットがいなければ、ユリコちゃん(仮名)は今頃どうなっていたでしょうか?」
このニュースが各局で放送され、ゴールデンタイム、プライムタイム、土日のニュースで繰り返し、何度も放送されたので「ネルガル製の優秀なペットロボット(笑)」は飛ぶように売れ、一体どこで生産されたのか、在庫が尽きる事も無かった。
「これはユリカを痛め付けるための手段でしたが、意外な効果がありました、ヒトの各家庭にロボットが配備され、監視体制が強化されました。これは処分するヒトの選別にも役立つでしょう、さらに」
大型の番犬タイプから、ハムスタータイプのロボット以外にも、人類の夢「猫型万能ロボット」「女子高生型メイドロボ」「鋼鉄天使」まで現れた。
「これは!ドラ**ン!」
「マ*チ、メ*、く*みまで・・・・」
どうもネルガルは、来栖川工業とか、三*重工なんかも吸収していたらしく、そこには「メイっぱい頑張る」メイドとか「きゅいーん」なメイドも現れ、花右京メイド隊のような沢山のメイドが並んでいた。
親族やコウイチロウの体面も考え、ノイローゼとして入院したユリカの母、もうユリカとの同居は許可されず、退院した時点で児童愛護団体かコウイチロウの親族がユリカを保護するよう手配されていた。
「ほらママッ、お花っ」
見舞いに来ていたユリカに花を手渡され、受け取ることも出来ずに泣いている母。
「ごめんなさい、今まで私が貴方を虐めてたなんて。何度もいなくなったのも、私から逃げたか、私が貴方を連れて行って置き去りにしていたのね」
ラピス(母)と近所のヒトの証言により、すでに当社比2倍は話が大きくなっていた。
「ちがうのっ、ママじゃないの、あれは……」
ラピスとかボソンジャンプとは言えず、そこでつかえてしまうユリカ。
「やっぱりそうなのねっ」
「ちがうのっ、ママはあやつられてただけなの」
あそこまでされても、未だに母を信じている幼い少女の姿に、そっと涙する一同。
「そうだね、おじちゃん達がすぐにママを助けてあげるから、元気を出してね」
そこでまたラピスに乗っ取られ、表情が急変したユリカの母
「フッ、そんな事ができると思うなっ!」
一直線に壁に叩き付けられ、壁をも壊す花瓶と花束、それは明らかに常人の力ではなかった。
「マ、ママッ!」
「地震か?」
病室全体が揺れ、地震のように揺さぶられる
「「「うわあああっ!!」」」
見えない力で、壁や床に投げ出される医者や警官。
「(ヘブライ語)私を助けるだとっ?ふざけるなっ! その前にお前達を始末してやるっ! ふははははははははっ!」
周りの器具やベッドまで空中に浮き、周囲を飛び回っていた
「やめて~~~! ラピスちゃん! もうやめて~~~~!!」
「ち、鎮静剤をっ!」
「はいっ!」
その日から、この事例は「エクソシスト」として取り扱われ、ユリカの母の管轄は教会に移り、牧師が治療に立ち会う事になった。
その後、さすがにコウイチロウも妻を庇い切れず、実家からも強制され、ユリカの母は離婚させられてから入院という運びとなった。
それからも入院先でユリカの母を乗っ取り、人形の首を締めているラピス。
「ユリカちゃん、パパは私達がいらないのよ、死んで頂戴、ママと一緒に死にましょう」
どうやらこちらは、今後の脚本が決定したのか、さらにアレな人になっていくアスカ、もとい、ユリカの母、きっとユリカが変な事を言えば、「天井から首だけでぶら下がる」荒業を使うらしい。
「いつものママじゃない~~~~!」
こちらはお笑いの脚本らしく、ネネちゃん(誰?)のようになっていた。
後書き
番外になっていたので入れ忘れました。
続きもどこかに行ったか消えてしまい、捜索中です。
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