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ラピス、母よりも強く愛して

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12ラピス29号分割

 火星では警察までがネルガルの支配下で、やりたい放題だったが、今回はアキトの両親の死体を回収もできず、何故か離反者まで出て、ラピスに汚染されていなかったモノも、今日の実行犯全員が捕らえられ、生きながら死ぬことも許されず、極上の地獄を味合わされた。
 それはネルガル会長ですら例外ではなく、自分達に転がり込んできた利権である、「火星の異星人による遺跡」の独占を揺るがす者を一人残らず始末するよう指示し、決済したトップまで捕らえられ地獄を味わった。
 子供のアカツキの所には、首だけになって鉢植えにされた、祖父、父、兄が届けられた。
 生命維持装置でもあり拷問器具である植木鉢から生えた物体が、壮絶な悲鳴を上げ続け、何度も何度も「殺してくれ」と哀願するのを見せられた。
 その物体は、ハンマーで殴ろうが100万トンプレスに掛けても破壊できず、燃焼、爆破、加速、圧力などの破壊に耐え続け、後にご学友となったアカツキ・アキトが見付けて、あの世に送ってやるまで苦痛と地獄の日々が続いた。

 テンカワ夫妻の破損状況は、ドアノブが吹っ飛んだことによる、父親の利き腕喪失、爆破の加速で飛んだドアにより、後方に飛ばされた負傷、脳震盪、後頭部、背中の打撲で済まされた。
 家も以前のように爆発炎上せず、ネルガルの爆薬は不発、入口付近の破損程度で終わった。
 それらは簡単に修復されて「亡命」扱いでテンカワ夫妻とその息子、後のブラックアキトは救出されて木連へと向かった。
 同じように火星政府やネルガルに反逆した者として、ラピス、ラピスの母も亡命したが、アイちゃんは選ばれず火星に残った。

 フォボスにある宇宙港
「息子は、息子は無事なんでしょうか?」
「ええ、別働隊が息子さんをお連れしました」
「父さんっ、母さんっ」
 火星のオリジナルのアキトとは違う、別のアキトに引き合わされる両親。
 今まで隔離され、アキトと同じ記憶を植え付けられたが、脳が休んでいる間は戦闘マシーンとしての英才教育を受け、それが可能な体へと改変されている。
 このボディーは木連の支配者である戦闘指揮官ラピス(赤)が産んだ子で、遺伝情報に関しては全く同じなので、ラピス以外には見分けがつかない。
 こうしてアキトの人生は分岐し、もう一人のアキトは木連で暮らす事になった。

 監視小屋
「29号、出なさい」
 強力な手枷と足枷を付けられたまま、牢から出されるラピス(子供)。
 どっかのエヴァみたいなテーブルには、各地の遺跡の管理者の映像が並び、氷のような目でラピス29号、8歳のラピスを見ていた。
「貴女は私達の計画を妨害し、爆破前にアキトを帰宅させて危険に晒そうとしました、何か弁明は有りますか?」
「あの時、アキトはこう言った「ネルガルに父さんや母さんを殺させない、木連に火星の人達も殺させない」って、みんなそれを忘れたのっ? これはアキトの願いじゃない、私達の勝手でアキトの人生を変えていいはずがないっ!」
「アキトと両親は無事です。今後木連に渡り、人類を滅ぼすために人類を嫌う教育と経験を積む事になります。これは当初の計画と何ら変更はありません」
「そんなのアキトじゃないっ!」
「いいえ、私達のアキトはヒトが嫌い、人類がとても嫌いだった。全てを憎み、平然とヒトを殺して進み、攫われたミスマル・ユリカを追う悪鬼でテロリスト、プリンスオブダークネスこそが我らのアキトなのです」
「ああ~~~っ!」
 長い間、子供生活と共同生活を続け、優しいアキトこそがアキトだと書き換わっていた子供ラピス。
 しかし大半のラピスには、何の罪もない一般兵士まで殺戮するアキトが、オリジナルのアキトだった。
 絶望した子供ラピスは膝を着いてその場に崩れ落ちた。

「では判決を言い渡します、29号、貴女の右半身を木星に追放します」
「えっ?」
 すでに解体か消去を覚悟していただけに、この決定には意表を突かれた。
「半身を追加した後は、ラピス8号の指示に従い、アキトを守りなさい。左半身は今まで通り、ここに残るアキトを守るように」
「どうして?」
「リンクを再開しなさい、貴女は自分の命も顧みず、アキトの願いを叶えようとしました。これは誉められる事はあっても、罰せられる行為ではありません、製造から8年で、よくそこまで成長しました」
「そんな…」
「貴方が身を裂かれる思いをしているのは分かります、これからアキトは知らない世界へ行き、不安な思いをします。私達としても、新しく自分を製造し、木星のアキトを任せるのは不安です、貴方の記憶だけでなく、体の半分も同行しなさい」
 オヤジギャグなのかBBAギャグなのか「身を裂かれる思い」だけに、左右を割って送るらしい。
「でも、貴女は考え違いをしています、もし貴女が消えればアキトはどう思うでしょう?もっと自分を大切にしなさい」
 自分がいなくなった時、アキトがどう思うか想像してみるラピス29号。
(アキトにあんな思いはさせられない、私ほどでは無くても、ユリカを探していた頃のような気持ちだけは……)
 さらに、自分が消えた後、自分に似た「私」がアキトの傍にいる状況を思い浮かべた。
(アキトは気付くだろうか? いいえ、全く同じ顔と記憶を持った私がいれば、疑問を抱く筈が無い)
「今後木連の貴方は、29Rと呼称されます」
 どこかの車か、エンジンの形式のような名前だった。
「では29R、私からの最後の指令です。これからもアキトを守って、必ず木星のアキトと結ばれなさい。既にアキトを産み育てた私達とは違う私。アキトと恋をして、愛し合い、その遺伝情報をアキトの遺伝子と掛け合わせ、別の亜種、アキトとの子供を産み育てなさい、いいですね?」
 その表情は、まるで人間の母親が娘を見守るような、暖かい物にも見えた。
「ママ……」
 現実世界での呼び名で、火星での責任者を呼ぶラピス29号
「ではアキトが出発します、貴方は同じ船に乗って木星に行きなさい」
「はいっ」
 ラピスは犯罪者や反逆者ではなく、今まで通り自分の分身として扱われた。
 一旦脳梁を切断され、右脳と左脳が分離されたが、新しい半身を追加されて、記憶や小脳モデルもコピーされて開放された。

 フォボスにある宇宙港
「ラピスッ、どこに行ってたんだ? もう火星ではくらせないそうなんだ、とうさんもかあさんも、ラピスやおばさんも、地球人とかネルガルに追われてるんだって、だから木星に行こう」
「え? うん…」
(このアキトは今までのアキトとは違う、私の左手もアキトを知らない。でも記憶や心は繋がっているはず、またこれから新しい絆を作って、思い出を紡いで行けばいい)
 それがまた新たな「喜劇」を産むとは、思いも寄らないラピス達。

 その頃、火星では監視小屋に引き取られたアキトが、ラピス29Lに抱かれて泣いていた。
「大丈夫よ、私がずっと一緒にいるから、ママも、アイちゃんもいるから、もう泣かないで。どこかの反政府組織がアキトのパパとママを保護したそうよ、ずっと隠れるか、木星に亡命しないと危ないけど、また会えるわ」
「うん、いつかあえるし、それに(ポッ)ラピスとわかれるのはもっといやだ」
「えっ?」
 普通、両親と一緒に生活したがる子供が、友達であるラピスと共に暮らすのを選んだ。
「どうしてかな、ユリカだったらこんな感じしなかったのに、もしラピスと合えないと思ったら何だか……」
 そう言ってまた、ポロポロと涙を流すアキト。
「アキトッ!」
 抱き着いたラピスを愛おしそうに撫でて行くが、顔の右側に触れた時、手が止まった。
「どうしたの? こっちだけ顔がちがう」
 例え親や自分でも気付かない、ラピスの僅かな違いに気付いたアキト。
「えっ? ううん、何でもないの」
 そしていつも自分に触れている右手の感触や、動きが全く違うのにも驚く。
「そういえば、なんだか右手も違う……」
 両親と引き離され、ラピスの様子も違う、アキトはとても不安な表情をしていた。
「違うの、ちょっと火傷しただけだからっ」
 右手を隠して右を向き、アキトには左半身だけ見えるようにする。
「えっ? やけど? だいじょうぶっ」
 苦しい言い訳だったが、不安な表情から、ラピスを心配する表情に変える事には成功した。
「心配しないで、もうママに治して貰ったから」
「ほんと? ほんとにだいじょうぶ?」
 隠していた右手や顔に頬を擦り付け、何の絆も無い右半身に温もりが伝わって来る。
「だ、大丈夫、だから、他も調べて……」
 自分からブラウスのボタンを外し、調べやすいように、またどこを調べて欲しいか示して行く。
「うん、ぜんぶきれいだよ」
「あっ!」
 普段のように、お風呂の中で見られているのとは違う調べ方をされ、首筋にキスまでされたので、声を上げチャうラピスちゃん。
「ああっ、ここもいつもどおりだよ」

 ちょっと興奮してどこかが「ビンビン」になるラピラピだったが、それはいつもの風呂場と同じで、アキトが見慣れた光景だった。
「あっ、アキトッ!」
 興奮してすっかり冷静さを失い、されるがままになっていたが?
「ヒック、ぐすっ」
 胸を触られても、どこかの女のように「もう~、アキトったら甘えんぼさんなんだから」とか「うふっ、アキトさぁん、お母さんだと思って、甘えてもいいんですよぉ」みたいな甘ったるい声を出す余裕も無く、泣いているラピス。
「どうしたの? いたかった? もうやめる?」
「違うの、嬉しいの、凄く嬉しかったから、だからやめないで、お願いっ」
 好きな女の子にそこまで言われ、やめる男はいない。下着も脱がされ、足も全開、あ*こも全開に広げられ、中までじっくり観察されチャうラピラピ。特殊な事情があったとは言え、二人は僅か8歳で結ばれた。
 
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