八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百三十七話 八条荘に帰ってその十四
「しかし希望があるのとないのとではです」
「全く違いますよね」
「人はパンと水だけで生きるものではありません」
キリスト教の言葉だ。
「心も必要です」
「例え働けてもですね」
「希望がなければ」
「何でもないですからね」
「まさに機械です」
それではというのだ。
「何も思うことなく、プラスのことは」
「不安と絶望だけを感じていて」
「鬱々として仕事をしていたでしょう」
「あの頃の畑中さんは」
「それが大きく変わりました」
その星達を見てというのだ。
「あの時にこの星達を見て」
「希望を見いだせて」
「働けました、そして実際にです」
「日本もですね」
「早くに復興出来ました」
そしてそこから未曽有の発展を遂げられた。
「山下大将が願われた通りになりました」
「山下奉文大将ですね」
「そうです、あの方です」
帝国陸軍の名将の一人だ、マレーの虎と言われ大戦初期の快進撃を本間雅治中将と共に支えた。
「あの方が処刑の時に願われたのです」
「日本の復興が早からんと」
「そう願われて粛々と旅立たれました」
あえて絞首刑という屈辱を受けてだ、山下大将は世を去った。その時にそう願ったというのだ。
「その願い通りにです」
「日本の復興は速かった」
「よかったです」
「希望は適えられますね」
「そうですね、もっと言えば適うものです」
「自分自身で努めて」
「そうしたものと今は考えています」
その希望を目指してということだろうか。
「私は今はそう考えています、ですが」
「あの時の星の瞬きに希望を観られて」
「そのうえで今に至ります」
「そうですか」
「そして今その時を思い出しています」
そうだというのだ、畑中さんはこう僕に話してくれた、そしてその話を聞いてだった。僕は畑中さんと共に今は夜空を観た。
第百三十七話 完
2017・4・24
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