DOREAM BASEBALL ~ラブライブ~
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チーム一丸
UTX 000 000 011 0
音ノ木坂 000 000 200 0
スコアボードに刻まれる数字。両校のエースの激しい投げ合いにより延長戦に突入した試合は、1つの山場を迎えようとしていた。
「花陽ちゃん!!ファイトだよ!!」
「うん!!」
キャッチャーから笑顔を送る恋女房に同じように笑顔を見せる花陽。穂乃果はマスクを被り座ると、打席に入った英玲奈を観察する。
(ここまでは三振、デッドボール、ライト方向へのツーベース、そしてライト方向へのタイムリー。脳震盪も治ってるみたいだし、まずは流しにくい内角から行くよ)
打球は全てライト方向。外角の球を持っていかれていると判断した穂乃果は内角から攻めていくことにした。球速は今の段階で110km弱。しかし花陽には鍛え抜かれた高い制球力がある。
初球のストレートがいいところに決まり1ストライク。英玲奈はそれを見てわずかに笑みを見せた。
(笑ってる?確かにスピードは落ちてるけど花陽ちゃんのコントロールは抜群。変化球を混ぜればそんな簡単には打てないはず!!)
挟むスプリットはもう投げれない。ストレートだけでは幅がない。残るはナックルとスライダー。ここでバッテリーはスライダーを選択する。
ビシュッ
ストライクゾーンに放たれたスライダー。これが外に逃げていくが、英玲奈は逆らわずにライトへと流す。
(ウソッ!?これも届くの!?)
手を出せば空振りするしかないと思っていたボールを拾われライト前に落とされる。海未がすぐさま拾って内野へ返したことで長打にはならないが、ノーアウトのランナーを出されてしまった。
(次は送りバントが鉄板のはず。でも強行策もありえるかも・・・)
剛からの指示はバントシフトはなし。ツバサは当たりこそよかったもののヒットはない。ここは2番打者で何かを仕掛けるのが剛としては最善策。
コッ
そう思っていたのに、UTXは手堅く送りバントを決行してくる。一塁線への見事なバントが決まり1アウト二塁。ここで迎えるは先程の打席いい当たりを放っているツバサ。
(歩かせてもいいけど次のあんじゅさんはもっと怖い。となると5番の鈴木さんで勝負した方がいいのかな)
しかし鈴木にも前の打席でいい当たりをされている。ここは怖くとも当たりがないツバサで勝負をするべきだと割り切る。
(最初からスライダーで行こう。うまく読みを外れれば打ち取れるはず)
ワンバウンドするスライダーをツバサが空振りしてくれたおかげで1ストライク。せっかくのチャンスに力んでいるツバサに落ち着くように西村がジェスチャーすると、彼女は苦笑いしつつ深呼吸する。
(もう小泉さんに力はない。ここはヒットで1点取れる。しかも狙うべきなのは・・・)
2球目もスライダーを投げさせる。ツバサはそれをこの日初めて見るのではないかというほど小さなスイングで捌くと、一、二塁間を襲う強烈な打球を放つ。
「ヤバい!!凛ちゃん!!」
抜ければスローイングできない海未に打球が行く。そうなれば二塁走者の英玲奈は当然ホームに返ってくる。
(届いて!!)
ダイビングで止めに入る凛。ツバサの放った打球は守備範囲の広い凛のグラブの先を掠め外野へと抜けていく。
「抜けた!!」
「英玲奈!!」
「わかってる!!」
ついに出たヒットに思わずガッツポーズするツバサ。ホームコーチャーに入っているあんじゅが英玲奈を呼び込む。
三塁コーチャーが手を回しているのを見て英玲奈も勢いよくベースを蹴る。
「バックホーム!!ことりちゃんカット!!」
凛がギリギリまで追い掛けていたこともあり中継にはことりしか入れない。しかしことり、今の海未の肩ではとてもじゃないが英玲奈より先にホームに戻るより速く到達するとは思えない。
(ここで1点取られたら裏で取り返せるかわからない。私が捕ってもカットを入れたらホームには絶対に間に合いません。それなら・・・)
ボールに最短の距離で追い付いた海未。彼女はボールを握り変えるとテイクバックを大きく取る。
「行きますよ!!穂乃果!!」
「え!?海未ちゃん!?」
内野に手早く返していたこれまでとは違いまるで遠投をするかのような大きな動作から放たれたボールは中継のことりの上を越えホームを守る穂乃果にストライク返球。
「なっ!?」
穂乃果がボールを受け取ったことで回り込もうとスライディングする英玲奈。彼女の左手がホームを掠めるかと思われた瞬間、穂乃果のミットがその手を弾いた。
「アウト!!」
勝ち越しの1点が入るかと思われた一打。しかしそれは海未の捨て身の返球によって阻まれてしまう。
「海未ちゃん!!」
「大丈夫です。あと1人、集中しましょう」
明らかに肩を痛めているのが見て取れる。それでも彼女は何事もなかったかのように守備に戻ると、次の準備を行う。
「すまん・・・」
「まだ私がいるわ、英玲奈」
勝ち越しのチャンスを逃したことに責任を感じている英玲奈の肩をポンッと叩く。あんじゅは打席に入ると、海未の返球の間に二塁を陥れたツバサを見る。
「東日本学園の孔明さんみたいなフルスイングばっかりだったのに、ここにきてあんなバッティングをするなんて・・・やっぱりかわいいわ、ツバサは」
イヤらしい笑いが止まらない。そんな頑張っている仲間のために、ここで点数を取らなければと気持ちを高める。
(前の打席はホームラン。その前も三塁打に内野安打・・・ここは歩かせるべきですよね?)
(そう思うけどな)
今日のあんじゅはあまりにも当たりすぎている。ここは敬遠が無難だと立ち上がった穂乃果。その初球、想定外のことが起きた。
「走った!!」
二塁走者のツバサが突如盗塁を敢行。慌てて投げようとするがすでに三塁に来ていたツバサを見て投げるのをやめる。
(しまった・・・敬遠するから完全に気が抜けていた・・・)
信じられないようなミス。これには指揮官も後悔の色を隠しきれない。
(穂乃果、敬遠をするな)
(え?でも・・・)
(ここで敬遠したら奴はホームスチールすらやりかねないぞ)
立ち上がっても、返球時にも、次打者が入る時にもホームに突入する機会はいくらでもある。ここは勝負してホームスチールをやれない状況を作り出した方が得策だと判断した。
(1ボールからだけど、スライダーで行くよ)
(うん。ワンバウンドしたらごめんね)
(大丈夫、止めるから)
穂乃果が座ったことでツバサはホームスチールの姿勢は取らない。それでも彼女から目を切ることはできないが、多少落ち着いて投げることはできる。
ビシュッ
ボールからストライクに入ってくるスライダー。コースは際どく非常によかった。しかし、高さがベルトの高さに入ってしまった。
(もらった!!)
カキーンッ
快音を響かせ打ち上がる打球。左中間へと向かって伸びていくそれはUTXのスタンドを沸かせた。
「行け!!抜けて!!」
抜ければ勝ち越し。クッションを誤ればあんじゅの脚でもランニングホームランにできるかもしれない最も深いところ。
タタタタタタッ
どんどん落ちてくるボール。その白球めがけて一直線に駆けていく少女の姿。
「真姫ちゃんクッションボールお願い!!うち飛ぶわ!!」
「え!?ウソでしょ!?」
打球はフェンスギリギリの危険なところ。これに追い付こうとしているのはセンターの希。彼女は直感的な物に優れており、剛からセンターに任命された。その直感がこの時冴えており、希は深いポジショニングに守っていたのだ。
「はっ!!」
決死のダイブ。希のグローブの先っぽにボールがひかかった。
(やった!!)
そう思ったその時、宙に浮いていた希の体がフェンスに激突した。ぶつかった彼女はそのまま地面に倒れ動かなくなる。追い掛けてきていた真姫が真っ青になりながら希の状態を確認する。
「希!!ちょっと希!?」
体を揺さぶって意識を確認する。すると、希はグローブを突き上げ中の白球を見せる。
「捕ってる!!捕ってるわよ!!」
「あ・・・あぁ」
その手を掴みながら審判に声をかける真姫。それに追い掛けてきた二塁審判が手を上げてアウトを宣告する。
「あれが捕られるなんて・・・」
ホームまで返ってきていたあんじゅは驚き、呆然としながら打球を捕った少女を見ていた。
「チーム全員が勝利に向かって一心不乱に戦っている。これがあるからチーム力の乏しい彼女たちがここまで来れたんだな」
冷静な表情で仲間たちの肩を借りてベンチに戻っていく音ノ木坂学院を見ている英玲奈がそう言う。
「だけど、チーム力なら私たちも負けないわよね?」
チーム一丸となっているのは彼女たちだけでもない。3年間共に戦ってきた彼女たちも負けじと守備へと散っていった。
後書き
いかがだったでしょうか。
次はμ'sの攻撃からです。
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