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夢幻水滸伝

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第三十二話 九州上陸その十

「そうして勝ってきている」
「覇者の戦か」
「そうも言っていいか、あの二人は覇者だ」
 中里に彼等のことをこう話した。
「覇者の戦をしているということだ」
「それがええか悪いかは別か」
「二人は領土を拡大していっている」
「それで何時かはか」
「我々とも戦うだろう」
 日本と、というのだ。
「そうなるだろう」
「そうなるか」
「その時はそうした相手だとわかっておくことだ」
「勝つためには手段を選ばんか」
「卑劣なことはしない様だが」
 しかしというのだ。
「敵にも味方にも冷酷になれる」
「そうした相手か」
「ならわかるな」
「ああ、覚悟して戦うわ」
「勝つ為にはどれだけでも非情になれる者もいる」
 非情と冷酷、吉川は今はこの二つの言葉を同一のものとして使っていた。本来は違う意味の言葉であるかも知れないと思いつつ。
「わかっておくことだ」
「そういうことやな」
「しかし私は違う」 
 吉川はこれまで通り中里に強い声で述べた。
「そうしたことは出来ない」
「自分はクールやけど冷徹やないからな」
「自分では違うと思っていたが」
 何処か冷徹だと思っていたのだ、自分自身を。
「しかしな」
「実際はやな」
「そうしたことは出来ない」
「冷徹にはなれんか」
「戦になれば地が出るな」
 命を賭けたやり取りをする世界だ、この世界では蘇ることが出来るがそれでも死ぬことに変わりはない。
「どうしても」
「極限の世界やからな」
「それで戦ってきてわかった」
「自分はか」
「そこまでは出来ない」
「味方まで巻き添えにして攻めることはか」
「それはしない、安心しろ」
 中里達を撃つという意味においてだ。
「敵のみを撃つ」
「そうした援護攻撃でやな」
「攻めていく、ではな」
「これから上陸するわ」
「そうしろ」
 吉川はこう言ってそしてだった。
 中里は芥川と共に上陸する軍勢を率いる為にそちらの船に乗った。そうして船に乗ったうえでだった。
 同じ船に乗る芥川にだ、こう言った。
「ほなな」
「今から上陸するで」
「まずは博多を攻め取るか」
「そして大宰府、そこからな」
「ここもお城あるしな」 
 中里はそちらの方を見ていた、今は。
「福岡城な」
「天守閣も見えるな」
「ああ」
「こっちの世界ではないけどな」
「あったって説もあるんやったな」
「僅かな間な」
 このことについては諸説ある、福岡城の主である黒田家が江戸城天守閣の建築を命じられそこに費用がかかり自分達の城である福岡城の天守閣を建築出来なかったとも言われている。
「そう聞いてるけどな」
「そやけどこっちの城ではある」
「そやねんな」
「このことは金沢城も江戸城も同じや」
「江戸城もか」
「そや」
 あちらの世界では今は皇居となっているおことはあまりにも有名だ。 
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