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夢幻水滸伝

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第三十一話 神具同士の攻防その十五

「こちらも術を使ってな」
「一人も取りこぼさずにか」
「後で土座衛門が上がってそこから復活させるよりもその方がええやろ」
「海で死ぬと屍が惨い」
 吉川はマーマンだ、海のことはよく知っている。それで海で死んだ者の屍もどうなるかを知っているのだ。
 そのことからだ、彼は芥川に述べた。
「我々には幸い術もあるしな」
「何処に誰かおるか把握する術とな」
「引き寄せる術もな」
 その両方がというのだ。
「ある、だからだ」
「そうした術をフルに使ってや」
「味方の者も敵の者もな」
「一人残らず助け出すで」
「わかった、人道的にだな」
「政治的にでもある」
 そうすべき理由はというのだ。
「助けた将兵はちゃんと九州の軍勢に引き渡す」
「何も見返りは要求せずにだな」
「見返りは要求せん、けどな」
 それでもというのだ。
「わかるやろ」
「恩だな」
「連中も仲間になるんや」
 関西としてはそのつもりだ、最初から彼等を自分達の陣営に組み込むつもりだ。これはこの世界の戦いの絶対のルールの一つであり負けた方は星の者も彼等が率い治めている軍勢も領民も勝った方に組み込まれるのだ。
「そうなる」
「それならか」
「悪い様にしたら後々影響する」
「その通りだな」
「わかってるな、ほな話が早い」
「私も賛成だ」
 水軍を預かる者としてだ、吉川は芥川に答えた。
「ではな」
「追撃はせずにな」
「海に落ちてるモンを全員助けるで」
 こうしてだった、関西の水軍は博多の港まで逃れる九州の軍勢を追わず今は敵味方関係なく将兵達を救い出した、九州の将兵達は多くは救われていたがやはり助け損ねていた者もおり屍も同じだった、この世界では屍から復活させられるので助けておくのが普通なのである。
 その彼等も味方の者達への救助活動をはじめ数時間後だった。芥川は吉川に明るい笑顔で話した。
「もう反応はないらしい」
「全員か」
「ああ、助け出せたで」
「それは何よりだ」
「戦に勝って将兵も助けられた」
「万々歳だ、ではだ」
「あらためてやな」
「九州に向かう、その前にな」
「萩の沖に行くか」
「ここで井伏達と合流だ」
 彼等が率いる艦隊とだ。
「そうするぞ」
「予定通りにな」
「そのうえで九州攻めだ」
 そちらに移るというのだ。
「そうするとしよう」
「わかったわ」
「まずは海で勝ったな」
 中里も艦橋に戻っていた、彼はこのことを会心の笑みで言った。
「ほなな」
「九州上陸や」
「そうなるな」
「捕虜の返還もしてな」
「それをしてからか」
「上陸するで」
「敵はあえて返すか」
「自分にも言うけど政治的人道的な理由や」
 中里にも言うのだった。
「わかるな」
「人は助けて返すべきやな」
「そや、無償でな」
「それが僕等の評判を上げる」
「そういうこっちゃ、ほなまずは萩や」
 そこに行くと中里にも話してだった、壇ノ浦で勝利を得た関西の軍勢は次の動きに移った。緒戦を制し次の戦いに向かうのだった。


第三十一話   完


                  2017・8・25 
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