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夢幻水滸伝

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第三十一話 神具同士の攻防その十四

「見事でごわすか」
「この一騎打ちは引き分けやろ」
 二人は今は対峙しているだけだ、攻撃は互いに止めている。
「中断したんやから」
「退くからでごわす」
「あくまでそう言うんやな」
「そうでごわす」
「わかった、ほな今は僕の勝ちやな」
「しかし次はでごわす」
 次に一騎打ちをする時があればというのだ。
「おいが、そして戦では」
「九州がか」
「勝つでごわす」
 そうなるというのだ。
「わかったでごわすな」
「その言葉逆に返したうえでな」
 そうしてというのだ。
「わかったわ」
「いい返事でごわす、では」
「またな」
 中里が言うとだ、九州の星達は。
 美鈴が転移の術を使い一斉に船から消えた、それは船を動かしていた兵達も同じだった。そして。
 船団もだ、砲撃で陣形が乱れていたが。
 又吉がまとめてだ、海に放り出されていた兵達も術も使って助け出された。攻撃を受けつつもそうして。
 すぐに撤退に移る、囲まれていたが又吉は彼等から観て後方に空いている場所を見出してだった。
「あそこだ」
「あそこですか」
「あそこからですか」
「逃げる」
 こう兵達に告げた。
「いいな」
「わかりました」
「狭い穴ですが」
「それでもあそこから逃げましょう」
「そうしましょう」
「脇目も振らず逃げろ」
 即座にというのだ。
「いいな」
「わかりました」
「ではこれより」
「博多の港まで退くぞ」
 こう言ってだ、又吉は船団を自分が乗る船を後詰にして即座に戦場を抜けさせた。その彼等を見て。
 芥川は艦隊の僅かな穴を見事な動きで抜け出て風の様に囲みを突破していく状況にだ、唸って言った。
「ええ感じやな」
「見事な動きだ」
 吉川も同じものを観て言う。
「又吉の船団の統率もな」
「自分と同じだけか」
「そう言って遜色ない」
 実際にそこまでだというのだ。
「あの采配やな」
「そうか、これまで砲撃やったけどな」
「あそこまで迅速に抜けられるとな」 
 艦と艦の間をだ。
「銃撃を加えようにも」
「各艦でそうしようとしてな」
「指示が追い付かない、そして船団が完全に囲みを抜けると」
 吉川はここでは九州側の視点に立っていた、そのうえで考えていて艦隊の運営を行っているのだ。
「また守りを固めてくるな」
「美鈴ちゃんがな」
「そうしてくる、間違いなくな」
 再び結界と風を幾重にも張ってだ。
「だから攻撃も期待出来ない」
「仕掛けてもな」
「ならばだ」
 吉川はその目を鋭くさせて芥川を見て言った。
「やることは一つだな」
「これは政治的そして人道的な判断や」
「そこから来るものだな」
「敵味方関係なく海に取り残されてる連中助けるで」
 海戦で海に放り出されている彼等をだ、九州の軍勢も助け出しているが急いでいたので助けられなかった者もいるというのだ。 
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