夢幻水滸伝
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第三十一話 神具同士の攻防その四
「棟梁と雪路さんも間合いですね」
「そうでごわす」
「じゃあやってやるよ」
それぞれ鹿児島弁と長崎訛りの言葉で応えた。
「そろそろね」
「派手にやるでごわすよ」
「私のこれはちょっと違うよ」
雪路は既に拳にあるものを付けていた、それは両手にそれぞれ備えている左右一対の黄金に輝く西洋のナックルだった。
「カイザーナックルはね」
「備えたものの力を神の域にし光まで放つ」
「そうさ、まさに皇帝の力をね」
それをとだ、雪路は美鈴に応えて話した。
「備えているのさ、皇帝の虎だよ」
「皇帝は皇帝でも」
「虎だよ、ただ私は野球は鷹だけれどね」
ソフトバンクファンだというのだ、九州生まれだけはあるということだろうか。
「どっちもね」
「八条リーグの方も」
「そうさ、野球は鷹だよ」
プロ野球機構の方も八条リーグの方もというのだ。
「本当にね」
「そうですか。私もそうですが」
美鈴も鷹党だというのだ。
「八条リーグでも」
「そうなんだね」
「はい、何はともあれ」
「ああ、今からやるよ」
「それでは」
「おいもまた」
北原は両手に巨大な金棒を出して持っていた、それは明らかに地獄の鬼が持っている金棒だった。それも普通の鬼が持つものではなかった。
「この地獄でもどの鬼も持てなかったという金棒で」
「やってくれますね」
「そうするでごわすよ」
「その金棒は確かにです」
美鈴は彼の神具である金棒を見つつ言った。
「特別ですね」
「金剛石よりも堅固な金属でごわす」
「そしてその重さたるやまさに如意棒の如く」
「威力もでごわす」
「そしてその金棒で」
「やるでごわす、ただおいは」
金棒を構えつつだ、北原はその犀の顔を少し苦笑いにさせてこうも言った。
「神具で武器はこれだけでごわす」
「そうでしたね」
「後の二つは書でごわす」
「島津斉彬言行録と西郷翁遺訓ですね」
「政治と智慧の書でごわす」
その二つの神具はというのだ。
「どの所も統率と魅力も授けてくれているでごわす」
「優れた神具ですね」
「そうでごわすが」
政と智についてはだ、しかし彼の智は軍師としての才覚ではなく学問としてのそれに向かっている。
「武具はまさに金棒一本でごわす」
「そしてその金棒で」
「今から攻めるでごわす」
「棟梁、やってやろうぜ」
雪路は今度は北原に声をかけた。
「純奈さんだけじゃなくてね」
「おい達もでごわすよ」
「そうしようね」
こう話してだ、雪路は左右の拳をストレートの要領で繰り出しそこから光の球を無数に繰り出した。
北原は金棒を振り回し竜巻を出してそれで関西の軍勢の船を攻める。だがその二人の攻めに対してだ。
鵺は己の口から超音波を出した、超音波は三笠の艦首から艦隊前方全てに行き届いて光も竜巻も相殺する、中里はその状況を見て唸った。
「これはまたな」
「どないや」
「凄いな」
「わしの声は色々でな」
「超音波も出せてやな」
「超音波にはこうした使い方もあるねん」
「障壁にもなるか」
「そや」
その通りだというのだ。
「見ての通りな」
「敵を攻めるだけやなくてか」
「息にはこうした効果もあるねん」
「凄い奴やな、自分は」
「いやいや、空を飛んで龍並の息を出せるだけや」
「その二つが凄いわ」
中里は珍しく謙遜を見せた鵺に笑って話した。
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