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夢幻水滸伝

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第三十話 壇ノ浦の戦いその二

 望遠鏡で遠くを見てだ、艦橋にいる者達に言った。
「敵は北西にあり」
「北西ですか」
「そこにですか」
「一路我々の方に向かっている」 
 こう言ったのだった。
「我々の位置はまだ知らない様だがな」
「やはり提督の神具のお力ですね」
「海のことは全てわかりますね」
「その三つの神具で」
「この神具は陸や空も見せてくれるしな」
 海だけでなく、というのだ。
「非常に有り難い」
「まことにですね」
「敵味方の場所がわかる」
「それに自然環境のことまで」
「素晴らしいものです」
「私も思う、そしてだが」
「ああ、敵の場所がわかったからにはな」
「やることは一つや、この場合は」
 吉川と同じく艦橋にいる中里と芥川が応えた。
「敵に向かうで」
「そして戦や」
「勝ってくで」
「一気にな」
「その通りだ」
 吉川はその二人に強い声で応えた。
「だからこれからな」
「勝つ為にやな」
「艦隊を敵に向けるか」
「敵味方の場所、海の状況はわかっている」
 そうしたもの全てがとだ、吉川は二人に己の海図から話した。
「後はだ」
「攻撃やな」
「艦砲射撃からはじめるが」
「空と海からか」
「そうする」
 吉川は艦隊を率いて動かしている身として芥川に答えた。
「総力でな」
「最初からやな」
「そうだ、敵の動きはわかるな」
「敵には美鈴ちゃんがおる」
 芥川は自分の顎に手を当てて話した。
「又吉のぼんもな」
「ぼんか」
「そんな感じするからな」
 こう呼んだとだ、芥川は吉川に笑って答えた。
「おもろい呼び名やろ」
「関西独特だな」
「三重でもこう言うやろ」
「中間だ」
 吉川は彼の生まれである三重県について地理的なことから芥川に答えた。
「近畿と東海のな」
「そういえば両方に含まれてるな」
「だからその表現は使わない場合もある」
 ぼんというそれをというのだ。
「だからこう言った」
「そうなんか」
「そうだ、それで話を戻すが」
「ああ、美鈴ちゃんにぼんもおる」
「軍師も出来る陰陽師に船を動かせる者がな」
「だからや、相手はちゃんと動いてくる」
「棟梁の北原の下でな」
 吉川は彼の名前も出した。
「そうしてくるな」
「そや、こっちは相手の場所も動きもはっきりとわかる」
 芥川も吉川の神具のことはわかっている、敵味方の場所も動きもダイレクトにかつリアルタイムで把握していることはこのことだけで非常に大きな力だ。
「つまり奇襲は通じん」
「その様なことはさせない」
 吉川もはっきりと言い切った。
「絶対にな」
「そやな、そやったらや」
「敵は最初から奇襲はしない」
「絶対にな、それにや」
 芥川はさらに言った。 
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