夢幻水滸伝
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第三十話 壇ノ浦の戦いその一
第三十話 壇ノ浦の戦い
中里達は正岡達が率いる四国の軍勢と呉の南西の海で合流した、中里はその正岡と織田の率いてきた船達を見て二人に言った。
「そっちもかい」
「見ての通りぜよ」
正岡がその顎に手を当てつつ中里に笑って応えた。
「今は蒸気船ぜよ」
「石炭で動くな」
「鉄の船ぜよ」
日清、日露の戦争の頃の軍艦であった。
「何かオーバーテクノロジーぜよ」
「いや、これが科学や」
芥川がその中里に言う。
「それや」
「こっちの科学ってことか」
「そや、そう考えるんや」
「科学も魔法も何でもある世界っちゅうことじゃな」
「それは自分もわかってるやろ」
「先輩の言う通りぜよ」
正岡はここでは芥川をこう呼んだ、彼等の世界では学園での学年が違うからそう呼んだのである。
「わしにしてもそのつもりぜよ」
「こうした科学もあるねん」
「そういうことぜよ」
「それでや」
ここでだ、芥川は上を見上げた。するとだ。
宙には空船達が飛んでいるがその空船達もだ。
鉄の船だ、しかも砲も多い。まさに空飛ぶ軍艦達だ。
その艦達を見上げながらだ、芥川は正岡に話した。
「空船もな」
「鉄の船じゃな」
「今の日本では最新鋭や」
その船達はというのだ。
「しかも数も多い」
「そうしたのがうちが勝てる要素ぜよ」
「そや、後はや」
「戦術を間違えなければ」
どうなるかとだ、織田が言ってきた。
「勝てますね」
「確実にな」
「そして勝った後は」
「九州上陸や、萩におる井伏、山本達と合流してな」
そのうえでというのだ。
「九州自体や」
「そうなるか」
「ああ、それで負けたらな」
その場合についてはだ、芥川は自ら話した。
「呉に戻ってな」
「敵の上陸を迎え撃ちますか」
「そうする」
こう織田に答えた。
「そしてあらためてな」
「勝ちますか」
「それを狙ってくわ」
「そうですか」
「どっちにしろ最終的には勝つ」
「これからはじまる戦に敗れても」
「緒戦で敗れてもや」
瀬戸内のマリンブルーの海を見つつだ、芥川は話した。今は波は穏やかでそのマリンブルーの中に銀の波も見える。
「最後には勝つ」
「そうなっていればいいですね」
「そや、逆に言うとあれやろ」
「途中まで勝っていようとも」
「最後に負けるとな」
「それで駄目ですね」
「そや、最後の最後で勝ってればええんや」
あくまで、というのだ。
「そやからな」
「最初に負けてもですね」
「最後に勝てる様に考えてるわ」
今からというのだ、こう話してだった。
関西の軍勢は海を進んでいった、呉から九州北部大宰府の方を進んでいたが。
吉川は己の神具である海図を見てだ、それから羅針盤で自分達の艦隊の位置を確かめてそうしてだった。
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