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夢幻水滸伝

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第二十九話 九州の星達その十一

「指揮に入ろうな」
「ほなな」
 中里は芥川のその言葉に笑顔で頷いた、そうして風呂から出ると実際に吉川を助けて指揮に入った。そして。
 艦隊は出港した、程なくして正岡と織田が率いる艦隊とも合流し九州の艦隊との戦いに向かうのだった。
 その九州の艦隊は既に海に出ていた、その海の上でだ。
 日本の昔ながらの、江戸時代のそれを思わせる船達が筑前の海から安芸の海の方に向かおうとしていた。 
 その先頭の船においてだ、男達が話をしていた。
「これからごわす」
「はじまるたい」
「関西の勢力との戦が」
「いよいよたい」
「それでごわすが」
 黒い具足を着た犀の頭の男だ、見れば皮膚も犀の者だ。
 名を北原当麻という、九州の棟梁であり志士である。薩摩から九州を統一した男で星は天暴星だ。八条学園高等部工業科三年A組所属だ。
「向こうは神星が二人来ているとのことでごわすな」
「はい」
 鼠の顔をした陰陽師の服の者が答えた、声は女のもので博多の言葉のニュアンスで喋っている。
「式神達の報では」
「そうでごわすな」
「そして吉川殿も来ておられます」
 鼠の陰陽師は彼の名前も出した。
「あの御仁も」
「関西の水軍の棟梁でごわすか」
「そして船は」
「鉄の船でごわすな」
「そうでした、石炭で動く」
「最新型でごわすか」
「我が国では」
 即ち日本ではだ。
「そうです、そしてかなりの数です」
「五万というところでごわすか」
「乗っている者を含めると」
 それだけになるというのだ。
「そしてその五万を以て」
「おい達に勝てばでごわすな」
「攻め込んできます」
 彼等の領土である九州にというのだ。
「間違いなく」
「そうごわすな」
「ですから」
「おい達にとっては」
「勝負の時です」
 こう北原に話した、この陰陽師の名を山田美鈴という。博多にいた陰陽師であり九州の軍師的な立場にもある。星は天伏星である。八条学園普通科三年F組に在籍している。
「我々にとっても」
「その通りでごわすな」
「ですから」
「武器も数も劣勢でごわすが」
「勝たねばなりません」
「その通りでごわすな」
「はい」
 その通りだというのだ。
「我々が天下を統一したいなら」
「わかっているでごわす」
「だからばい」
 今度は長弓を持った具足を着た女が出て来た、具足は平安時代の大鎧で色は緑だ。見れば肌は茶色で髪の毛や目、爪の色は緑ですらりとしたエルフを思わせる長身だ。森人という木から進化した種族だ。
 名前を林純奈という、弓を使い職業は弓使いだ。星は地明星だ。八条学園高等部では商業科の二年B組の所属だ。
「うち等が全員いるばい」
「九州の星の者全員がでごわす」
「そうばい」
「だからですね」
 鰐と人の間の子の者だった。大柄で着ている服は琉球の派手なもので具足は着けていない。赤と黄色の花々が青地の生地の上にある。
 名前を又吉一雄という、職業は船乗りであり種族は観ての通り鰐人である。八条学園では水産科の一年A組所属だ。
「こうして五人全員で攻める」
「おまんさあが水軍の指揮をしてじゃ」
「そうしてですね」
「頼むでごわすよ」
「はい、わかっています」
 又吉は北原に笑って応えた。
「それでは」
「思う存分暴れますんで」
 黄色い詰襟の制服、カラーギャングを思わせるそれを着た二メートル以上の逞しい身体の大女だ、胸も大きく派手な顔立ちで黒髪が腰のところまである。 
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