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艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~

作者:V・B
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第四十二話

 
前書き
どうも、イベントが始まって、胃がキリキリ痛み始めました。既に泣きたい。 

 

―長門さんの部屋の前―
 
 
「さてと…………取り合えず来てみたけどさ…………。」
 
「なかなか怖いですよね…………。」
 
俺と青葉は言われた時間に長門さんの部屋の前までやって来た。俺たちの部屋となにも変わらない入り口の扉が、逆に怖い。
 
「さすがにとって食ったりはしないでしょうけど…………。」
 
「とって食われてたまるかよ。」
 
もし扉を開けた先に長門さんがばかでかい鍋に油を入れて待ってたら、問答無用。直ぐに帰る。
 
「まぁ、ビビってても始まらないか…………。」
 
俺はそう言うと、扉を二回ノックした。
 
「長門さん、居ますか?千尋と青葉です。」
 
『ん、鍵は開いてる。入ってくれ。』
 
その言葉を聞いた俺は、ドアノブを回して、扉を開けた。
 
「よく来てくれたな。」
 
長門さんの部屋はかなり物が少な目に抑えられていた。簡素なベッドに俺の部屋のものと同じ机に箪笥。違うところと言えば少し大きめな本棚があることと、壁に東京マミルトツバメーズのユニフォームが飾られてる位だった。そうかそうか、マミルトファンか。来シーズン頑張ってくれ(因みに俺は神奈川スターズファン)。
 
そして、部屋の真ん中にはちゃぶ台が置かれ、その上には……。
 
「さてと、飲むぞ。」
 
二桁位はあるであろう数の酒瓶と、何種類ものツマミがあった。恐らく、間宮さんにつくってもらったのだろう。
 
「「……………………………………。」」
 
俺と青葉は二人して黙ってしまった。
 
いや、別にいいんだよ?こんな感じで酒盛りするのも全然嫌いじゃないよ?自分の部屋でも飲むしな?
 
…………俺と青葉の脳裏には、いつぞやの歓迎会の時の事件を思い出していた(第十話参照)。あと、こないだ行った鳳翔さんの店でのこととか(第三十四話参照)。
 
全く懲りてないと見た。

「…………えぇ、そうですね。飲みますか!」
 
おいこら青葉。なにサクッと受けとるんですかい。酒の入った長門さんを下手に刺激したら那珂みたいなことになるぞ。
 
しかしまぁ、ここで俺が乗らないと失礼だよな…………あーあ。
 
「うっしゃ、飲むか!」
 
かくして、長門さん主催の宅飲み会が決定した。
 
長門さんは俺たちが頷いたのを見ると、「座ってくれ。」と促す。俺と青葉は等間隔にちゃぶ台の周りに座ると、長門さんがグラスに酒を注いでくれた。
 
「それじゃ、乾杯。」
 
「乾杯。」
 
「乾杯です。」
 
チンッ、という音がした。
 

 
―一時間後―
 
 
 
さて、酒盛り開始から一時間後が経った。その間に俺は木曾に、『長門さんと酒盛りしてるから合図があったらすぐ来てくれ』と言う連絡をした。
 
そんな心配とは裏腹に全員穏やかな様子で酒を飲んでいた。そこそこローペースだった。
 
「しかし、私も最初は男が艦娘になったと聴いたときは素直に驚いたよ。」
 
そのなかでもかなり口調がフレンドリーになってきた長門さん。普段もこのくらいだったら話しかけやすいんだけどな。
 
「んなこと言っても、俺だってビックリしましたよ。提督以外全員女の子で。」
 
正直、ToL〇VEるみたいなことにならないでくれと願うばかりだった。皆身持ちの固くって助かった。
 
「でもでも、案外すんなり溶け込めてたじゃないですか。」
 
青葉はやはり興味津々といった感じで聞いてくる。酒のせいか、若干頬が赤い。
 
「そりゃあ、木曾とか時雨とか夕立とか春雨とか天龍とか、いつも仲良くしてくれてる奴等が話し掛けてくれたからな。」
 
「そう言えば、あいつらといっつも一緒に居るな。」
 
「ええ、お陰様でだいぶここに馴染めましたよ。」
 
いやほんと、木曾達には感謝しかない。たまーに暴走するのが困り者だが。
 
「しかし、木曾はあまり人付き合いが得意な人では無いけどな。」
 
長門さんは遠い目になりながらそう言った。なんとなく、予想はしてたけどさ。特に今日の皐月の一言への反応。
 
『えへへ、ボク、木曾と遊ぶのって初めてかも!』
 
『―ッ。』
 
いつものメンバー以外とはあまり付き合いが良くないことがよくわかる。そりゃあ、敬遠されるわけだ。
 
話してみないとただのいかついネーチャンだもん。
 
「でも、アイツなりに頑張ってるっぽいですよ?」
 
裸の付き合いまで行ったぐらいだ(自虐)。ほんと、色々あったなぁ…………。
 
「どうした千尋?遠い目をしてるぞ。」
 
と、長門さんが顔を覗き込んできた。
 
「あぁ、気にしないで下さい。木曾にやられた数々の苦行やら奇行やらを思い出してただけですから。」
 
そう言えば俺、アイツに三回位気絶させられたっけな…………全部理不尽な理由で。
 
「しかし、そうなるとそんな木曾さんと遊んだりしてる他の人達って凄いですよね。」
 
「ん、あぁ。確かにな。」
 
例えば木曾と一番中のいい天龍。奴は駆逐艦の奴等からの人気も高い。もしかしたら、意外と子供っぽい木曾とは相性良いのかもな。
 
すると、急に長門さんが口を開いた。
 
「ふむ、となるとそのなかに気になる女の子とかは居ないのか?」
 
…………酔っ払いと言うのはかくも恐ろしいものであるわけで。こんな感じでいいネタになりそうな話を振ってくる訳で。
 
「それは私も気になる所ですね!居るんですか?」
 
無論、こいつのだが。
 
さて、どうしたものか。いや、別に知られたくなければ適当なこと言えばいいのだが…………。
 
俺はチラリと長門さんの顔色をうかがってみた。
 
 
 
 
なんか変なオーラが出てた。
 
 
 
 
 
…………うん、絶対見破られる。だって、この頭おかしい奴等の集りである呉鎮守府の旗艦なのだ。なにかできるに違いない。おとなしく正直に言うか。
 
しかし…………気になる女の子ねぇ…………。
 
「………………………………うーん。」
 
俺は立ち上がってちゃぶ台の周りをウロウロ歩き始めた。
 
まず失礼な話だが、木曾、冬華は除外だよな…………。
 
木曾は昼間話した通りだし、冬華は拓海ラヴだし。
 
天龍…………は、違うかな…………いいやつであることには違いないんだけど、精々友達、かなぁ。
 
時雨…………は、なんてんだろ。怖いってのかな。もし彼女にでもなったら、なんか、ヤバイことになりそう。別に嫌いじゃないけどさ。
 
……………………うん、意識して避けてるな俺。
 
……………………春雨。
 
「……………………誰か、居るのか?」
 
どうやら、難しい顔でもしてたらしいのか、長門さんが声を掛けてきた。
 
「……………………えぇ、居ますね。誰かは伏せますけど。」
 
俺はそう言って、自分の席に座る。そのまま飲み掛けの日本酒をぐいっと一気に飲み干す。
 
「そう言えば、千尋さんって夕立さんとか拓海さんとかと昔からの知りあいでしたよね?どんな感じでした?」
 
と、俺と長門さんが変な空気になったのを察してか、青葉が話を変えてきた。
 
「んー?拓海は…………大人しい奴だったな。よく暴走する悠人止めたりしてたな。俺が艦娘になった原因の一つは悠人と拓海だったな。」
 
あとから考えて見れば、そうとう運命に呪われてんな俺。
 
「ふ…………夕立は、なんだろ、なに考えてるか分かんなかったな。多分、当時から頭ん中は拓海で埋め尽くされてたんだろうな…………。」
 
ほんと息の長いカップルで。たまに死んでくれと思うけどな。
 
「ふむ、では、ここで千尋の一発芸どうぞ。」
 
「〇はどこだ、〇を出せ(ダミ声)。…………って、いきなりなんですか!」
 
長門さんの無茶ぶりについつい反応してしまった。酔っ払いってのは話がよく飛ぶことで…………。

「〇と千尋の〇隠しですか。面白いですよね、あれ。」
 
青葉、解説しなくていい。
 
「似てなかったけどな。」
 
うるせぇ。
 
「そんなこと言うなら、長門さんも一発芸してくださいよ!」
 
さぞかし、レベルが高いのだろう。
 
「うむ、では、保育園の先生。」
 
……………………うん?
 
長門さんはそう言うと、咳払いをひとつして……………………飛びっきりの笑顔になった。
 
 
 
 
 
 
 
 
「はぁい、みなさん、おはようございまーす!きょうもげんきにおうたをきかせてくださいねー!」
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
保育士が現れた。
 
「ぶっ………………くっ…………くふぅ………………。」
 
「ぷふっ…………ふっ………………ふふっ………………。」
 
我慢してたけど、やっぱり無理だった。
 
「ぶぁっはっはっはっは!なんだよ今の!もっ、もう!完成度高すぎるわ!」
 
「はははははははははっ!ほんと、なんですか!オーラが、オーラが出てるっ!」
 
二人して盛大に吹き出してしまった。いやだって、完成度高すぎてもう。
 
「ふっ、これでも昔は保育士を目指してたからな…………子どものお世話ならお手の物よ。」
 
と、酒を煽る長門さん。保育士は保育園児の前で酒を飲まねぇよ。
 
「じゃあ、はいはい!次私が!電さんのまね!」
 
……………………はい?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「電の本気をみるのです!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そのまんまだった。
 
「え、キモッ!似すぎ!キモッ!」
 
「あぁ、千尋は初めて聴くのか。ほんと、似すぎて気持ち悪い。まぁ、面白いけどな。」
 
どうやら前にも聞いたことがあるのか、なんともないといった様子の長門さん。いや、声帯同じってレベルで似てたぞ今の。
 
「さぁて、盛り上がってきたし、じゃんじゃん飲むぞ!」
 
いや、こっちとしては謎が深まったんですけど。
 
そんな俺はお構いなしに、どんどん飲み始める長門さんと青葉。
 
……………………誰か、助けて。
 
 
 
 
―翌朝 大会議室―
 
 
 
 
 
「…………おい、千尋と青葉と長門さんは?まだ来てねぇのか?」

朝の朝礼が始まろうとしてるのに、未だにその三人が来ていない。
 
「んー、俺は知らねぇな。春雨、なんか知らねぇか?」
 
「いえ…………なにも。」
 
全く、まさか昨日のバスケの疲れが溜まった訳じゃねぇよな?しかし、それだと長門さんや青葉が来ない理由が分からない。
 
すると、大会議室の扉が開かれて、提督と大淀さんが入ってきた。

「ん、長門はどうしたんだ?」
 
いつもは提督が入ってくると必ず聞こえてきた長門さんの号令がなく、変な顔をする提督。
 
「それが、来てないんですよ。あと、青葉に二号も。」
 
と、誰かが言った。
 
「ふむ…………?まぁいい。あの三人には後で執務室に来てもらうとして、始めるぞ。」
 
と、朝礼が始まった。
 

 
 
…………余談だが、あの三人はこの三十分後に起きたそうな。 
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。ほんと、よくタイトル詐欺だろっていう話を書くものでして。まぁ、たまーにシリアス入る(?)程度ですし、それはそれと言うわけで。
それでは、また次回。 
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