DOREAM BASEBALL ~ラブライブ~
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似た者同士
初戦を圧勝した音ノ木坂。次の2回戦の間には1日感覚があり、彼女たちは学校のグラウンドで軽く体を動かしていた。
「穂乃果!!花陽!!このコースで軽くロードしてこい」
「ロード?」
「ロードワークのことだよ、穂乃果ちゃん」
2人はバッテリーと言うこともあり別メニューで調整させることにした剛。他のメンバーがTバッティングに入ろうとしている中、穂乃果と2人はコースマップ通りの道へと駆けていった。
「フッ、フッ」
「ハッ、ハッ」
「フッ、フッ」
「ハッ、ハッ」
大会期間中なのでペースは上げすぎず、軽く汗を流す程度にするジョギングをしている穂乃果と花陽。彼女たち黙々と走っていると、突然穂乃果が立ち止まりバックしていく。
「ハッ、ハッ?」
バックしてある店の前で足踏みをしている穂乃果。彼女を心配して立ち止まった花陽は乱れる呼吸で問い掛けると穂乃果はこの上ない笑顔で花陽に問い掛ける。
「フッ、フッ?」
「ハッ、ハッ?」
穂乃果の問いに苦笑いを浮かべる花陽。この日の練習時間を考えると、早く帰らないとみんなを待たせてしまうと思っているからだ。
「フッ、フッ」
そんなことなど微塵も考えていない穂乃果は自分の横にある定食屋にある旗を指さす。そこには『黄金米』と書かれており、花陽は思わず笑顔を見せる。
「ハッ、ハッ!!」
お米大好きな花陽に取ってその文字は大いなる魅力を放っているのは確かだった。
しかし、花陽はすぐに正気を取り戻すと、両手でバツを作る。
「ハッ、ハッ」
「フッ、フッ」
誘惑に揺れ動きそうになっている花陽が懸命に穂乃果を止めるが能天気な彼女はそんなことなどお構い無しにお店に入ろうと促す。
「ファー!!ファー!!」
これ以上やり取りをすると自分の心が負けてしまうと感じた花陽は踵を返し走り出そうとしたが、追い掛けてきた穂乃果に腕を掴まれ身動きが取れなくなる。
「フッ、フッ」
再度旗を見るように促す穂乃果。『黄金米』と書かれた旗を見た花陽の心は負けてしまった。
ウキウキとした足取りでお店の中へと駆け込んでいった2人の主力選手。彼女たちは席に付くと、思い思いの定食を注文していった。
「遅いな、あいつら」
予定だったらとっくに帰ってきてもいい時間。それなのにまだ戻ってきてない2人に嫌な予感を感じている。
「見てきましょうか?」
「あぁ、頼む」
海未の申し出をありがたく受け彼女たちと同じルートを辿ってもらう。コースさえ間違えてなければ、どこかしらで会うことができるだろうし、万一行き違えになっても海未ならすぐに帰ってこれるからだ。
「そういや、前にもこんなことあったな」
高校時代のとある記憶が甦り思わず苦笑い。それも穂乃果たちならやりかねないことなので、ますます不安な気持ちが膨れ上がっていた。
「いやぁ、おいしかった」
「ご飯大盛り無料なんて最高だよね!!」
ハンターが向かっているとは露知らずようやく定食屋から出てきた穂乃果と花陽。2人は食後すぐとあってまずは歩いていこうとしたところ、後ろから咳払いが聞こえゆっくりと振り返る。
「「ひっ!!」」
2人の表情が固まった。そこにいるのは怒りに震えているにもかかわらず、無理に笑顔を作ろうとしている海未だったのだから。
「さ、説明してもらえますか?」
誰がどう見てもご立腹の表情。2人は泣きそうになりながら、彼女に連れられグラウンドへと帰ってきた。
「お前らって似た者同士なんだな」
海未からことの詳細を聞いて呆れたようにタメ息を付く剛。2人はさぞ怒られることだろうと震えていると、意外な質問が飛んできた。
「何を食べたんだ?」
「ランチパック定食です・・・」
「炒飯定食ご飯大盛りです・・・」
「ならいい」
「「「「「いいの!?」」」」」
まさかの許しに意味がわからずにいる他のメンバー。だが怒られなかった2人は先程までの沈んだ様子から一転、一気に明るくなった。
「ただし、次の2回戦で穂乃果はヒット2本以上、花陽は3失点以内に抑えること、いいな」
「「はい!!」」
「わかったらバッティングに参加してこい」
ヒフミトリオが来てくれたので彼女たちにマシンを担当してもらい打撃練習を行っているところに加わる穂乃果と花陽。ホッと一安心の2人に絵里が辛口コメントをする。
「2人とも、誰も見てないからってサボってちゃダメよ」
「ごめん絵里ちゃん」
「すみません・・・」
反省しているようなのでこれ以上は叱らないことにする少女たち。しかし、それでもなぜ剛に怒られなかったのか疑問はあるため、穂乃果がそれを話題にする。
「でもなんで怒られなかったのかな?」
「食べたものがよかったとか?」
「そもそもランチパック定食と炒飯定食って何?」
「どれも炭水化物ON炭水化物になってるわよね?」
不思議そうな顔をしている少女たち。そこにゲージから戻ってきたにこが予想できる理由を述べる。
「剛さんの高校時代もロードワークに行ったピッチャー2人がサボって食事してたらしいわよ」
「あぁ、なるほどそれで」
自分たちも経験があるから怒るに怒れなかったのかと納得する。するとにこはその武勇伝をさらに語り出した。
「にこの情報だと、近くにある食べ放題の焼肉屋で孔明さんと光さんが食べてたらしいんだけど、あまりにもたくさん食べるからお店から「もう勘弁してください」って連絡が学校にあったらしいわよ」
「どんだけ食べてるんや!?」
食べ放題店では元を取ることすら大変なはずなのに、お店が悲鳴を上げるほど食べるとはにわかには信じられない。ただ、甲子園で優勝するレベルの2人の投手ならそれくらいはと納得してしまう。
「私たちもそれくらい食べた方がいいのかな?」
「野球は体が大きい方が有利って言うしね」
「凛ラーメンならいくらでも食べられるよ!!」
「お前ら真面目に練習しろ!!」
お喋りが止まらなくなってきた少女たちに怒声を上げる。怒られた彼女たちは取り繕うように練習へと意識を戻していった。
「初戦履聖舎に7対0・・・順調に仕上げてきたみたいだな」
音ノ木坂の2回戦の日、前日までに1、2回戦を終えたUTX学園のA-RISE並びに他のレギュラー陣数人はライバルとなり得る可能性のある音ノ木坂の試合を見に来ていた。
「大勝したって言っても履聖舎が勝手に自滅したんでしょ?それで打撃のリズムも崩れたんだろうし」
感心している他のメンバーと異なり辛口なのはエースの綺羅ツバサ。その言葉に頷きつつ、スタンドに入るとスコアボードを確認する。
音ノ木坂 200 312
広劉 000 10
「6回表が終わった時点で8対1。あと2回0で抑えるとコールドが成立するな」
「予選と少し打順が変わってるわね。あの小さい子が5番に入ってるんだ」
現時点でコールド間近の得点差となっている試合。その後、マウンドに上がったエースがランナーを許しながらも無失点に抑えたことでますますそれが現実味を帯びてくる。
「少し速くなったかしら、小泉さん」
「120kmに届くかもしれないわね」
1ヶ月ほどしか経っていないのにぐんぐん成長していくライバルに、英玲奈が試合終了後の整列で言った言葉を思い出す。
「本当に決勝まで来るかもね、あの子たち」
「楽しい試合ができそうだな」
「それは無理だな」
やる気が上がってきている一同に水を指す声。その正体はUTX学園の監督、西村だった。
「はっきり言おう、このままなら次もうちが絶対勝つ。絶対にな」
まだわずかな時間しか見ていないのに確信を持ったかのように宣言する西村。その言葉の意味を知るものは、ほとんどいなかった。
後書き
いかがだったでしょうか。
2回戦もここで終わりになります。
次は3回戦ですか、ここはちょっと詳しく行きます。
やりたいシナリオがあるもので。
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