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DOREAM BASEBALL ~ラブライブ~

作者:山神
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初戦の相手

『UTX学園1番!!UTX学園1番』

合宿終了から数日後、全国大会が開かれる東京都のとあるホールでは全国大会の組み合わせ抽選会が行われていた。

「全国大会って秋葉ドームでやれるのね」
「すごいニャ!!」
「あそこってプロ野球とかアイドルのコンサートもするよね!?あぁ、楽しみ~」

全国大会の会場を聞き興奮状態の面々。しかし、それを聞いた野球大好き少女たちは目付きを鋭くする。

「ぬぁーに言ってるのよ!!秋葉ドームで出来るのはテレビ放送がある準決勝からだけ!!他は都内の野球場を使うのよ!!」
「秋葉ドームでやるには32の出場チームで最後の4チームにならないとダメなの!!」

にこと花陽のあまりの迫力に気圧される面々。しかし、彼女たちの大きな声で周辺の視線が集まっていることに気が付くと、2人は恥ずかしそうに小さくなっていた。

『東京都代表、音ノ木坂学院』
「じゃあ、行ってくるね」

抽選会が進んでいくと音ノ木坂の順番になる。穂乃果は立ち上がり壇上へ上がるとくじを引く。彼女が係員から指示された場所くじを引く。音ノ木坂は関東で準優勝だったため、関東優勝のUTXとは反対側のブロックに入るようになっているので、予選の時よりは緊張感は和らいでいる。

『音ノ木坂学院18番、音ノ木坂学院18番』

UTXとは反対側のブロックの第一試合となる数字を引き当てた。対戦相手の欄はまだ空いており、どこがくるのか皆目検討もつかない。

(あと12校残っててその中には強いチームも残ってる。今回は楽なチームと初戦をやらせてほしいもんだ)

予選の一、二回戦が強豪だったため今回はと心のどこかで思っている剛。

『履聖舎高校17番、履聖舎高校17番』

思わずタメ息が漏れそうになる。なぜこうもくじ運がないのか、これが初出場の宿命なのかと頭を抱えたくなる。

「履聖舎高校かぁ・・・」
「またすごいところ引くよね」
「えへへ/////」
「穂乃果、恐らく褒められていませんよ」

知識豊富なにこと花陽も剛と似たような反応。他の面々はその理由を訪ねると、彼女たちはいつものように語り出す。

「履聖舎高校は毎年全国に出てくる高校よ。今年の春は決勝でUTXに負けたけど得点は2対0。A-RISEを擁する強力打線をわずかに2点に抑えているのよ」

UTXとは乱打戦になった彼女たちはそのロースコアに驚愕する。さらには彼女たちはツバサとの対戦だったため点数を取れなかっただけで、打撃も全国トップクラスだ。

「ロースコアの試合になるだろうが、全国に出てくるところはみんなすごい。だが、お前たちも同じく勝ち進んできたんだ。自信持ってプレーしようぜ」

必死に弱気な心を見せないように取り繕う剛。それを見た少女たちは笑顔になり、仲間たちの顔を見回していた。


















それから2日後、試合の日がやってきた。

「整列!!」
「行くよ!!」
「「「「「オオッ!!」」」」」

激戦区関東をあれよあれよと勝ち抜いてきたこともあり注目度の高い音ノ木坂。さらには対戦校が全国トップクラス。となれば例え知名度があまり高くはない女子野球といえど、スタンドは人で溢れ返っていた。

(つっても元々スタンドが狭いんだけどな)

準決勝までの試合は都内にある様々な野球場で行われる。今回の試合会場は外野席もなく、スタンドも決して多くない。そのため人口密度が高くなっているのだった。

「礼!!」
「「「「「お願いします!!」」」」」

一同礼をしてベンチへと戻ってくる。今日の試合は先攻。打順は以下のようになっている。

1番 キャッチャー 穂乃果
2番 セカンド 凛
3番 レフト 真姫
4番 ショート 絵里
5番 サード にこ
6番 センター 希
7番 ライト 海未
8番 ファースト ことり
9番 ピッチャー 花陽

予選とわずかに変わっていることもあり向こうも監督が何やら指示を出しているがそんなことを気にする必要はない。剛はいつも通り選手を送り出すと、穂乃果はアナウンスに返事をしながら打席に入る。

「穂乃果!!初球から行きなさいよ!!」
「積極的に!!」
「ボールは振らないでください!!」

ベンチから様々な声が飛ぶ。穂乃果はその声が聞こえているのかいないのかわからないが、好投手と対戦できることに嬉しそうな表情をしている。

(履聖舎はエースの田中。球速は120kmに満たないけどコントロールがよくてテンポがいい。球種も多彩だし、フィールディングも優れてる・・・ね)

ストレートで押してくるツバサとは異なるが、彼女も全国屈指。ここで戦えるのは非常にありがたい経験になる。
そう思っていたのだが・・・

「ギャッ!!」

田中の投げた初球、すっぽ抜けたボールが穂乃果の背中に直撃した。

「ボールデッド!!テイク1ベース」

背中を押さえながら一塁へと駆けていく穂乃果。荒れた試合になりそうな予感に、剛の顔がひきつっていた。















(よくあることではあるけど、やっぱり可哀想だよな・・・)

スコアボードに目をやりながらいたたまれない表情で相手校のエースの姿を見つめるかつての天才捕手。そのスコアボードは試合前の予想を大きく裏切るものになっていた。

音ノ木坂 420 000 00
履聖舎 000 000 00

全国大会でもテレビ放送のある準決勝までの試合はコールドゲームが存在する。2回までにエンジンのかからないエース相手にどんどん点数を稼いだ音ノ木坂。しかし、3回から建て直した履聖舎エースはヒットを許さぬ好投。それゆえに序盤の乱調が悔やまれる。

(3回から9回の2アウトまでヒット0。立ち直ったとはいえ淡白になりすぎだ)

点差があるからかどこか雑なところが目立つ。高校生であるためその辺は多少あるが、仮想綺羅ツバサを掲げている試合でこの展開はまずい。

(初球は見送らせる。せめてここから1点取れよ)

積極的に打ちに行かせていたがここはじっくり攻めさせる。本当はもっと早くやりたかったが、想定外の時に自分たちでも対応できるようにと何も言わずにいたためこんなとこまで来てしまった。

初球は高めに外れボール。続く球は外角に厳しく決まるストレート。1ボール1ストライクとなった。

(ストレート以外振るな。出所をしっかり見ろよ)

変化球のキレは間違いなくツバサ以上。だがストレートのスピードは決して速くない。仮想綺羅ツバサよりもまずは点数がほしいのでそのストレートに狙いを定める。

だが、彼女のスライダーは非常にキレがいい。穂乃果はボール球を振らされ追い込まれてしまった。

(チェンジアップが決め球だけど、俺なら今のスライダーを続ける。浮いたのだけ狙っていけ)

ストレート狙いならどちらでも有効だが、チェンジアップは浮くと長打になりやすい。ここは3球目と同じように低めにスライダーを決めに来るだろう。

その予想は的中し投球はスライダー。これを今度は見送り2ボール2ストライクに戻した。

(ここからチェンジアップは効果が低い。高めにストレートが来る。見せ球だから狙っていいぞ)

見せ球のストレートを狙うのはあまり好ましくないが相手の実力を考えれば仕方ない。剛の読み通りの高めのストレート。だが力が入ったのか真ん中に入ってくる。穂乃果はこれをフルスイングで捉え右中間を破る三塁打とした。

(やっとヒットが出た。凛、転がせよ)

打者は初回にデッドボールで出た穂乃果を左中間への三塁打で返した凛。ここではそのことは忘れさせ、三遊間を狙ったゴロを打たせる。

「セーフ!!」

俊足の凛ならばそれで十分にヒットになる。続く真姫はサードフライに倒れたものの、打ちあぐねていた投手から追加点を取ることかできた。

「花陽、3人で絞めてこい」
「はい!!」

最終回もエースを送り出す。彼女は期待に応え見事に強力打線を封じ込め、音ノ木坂は見事初戦突破を果たした。



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
1回戦はこれにて終了です。
2、3回戦もこんな感じになるかと思いますのでご了承ください。 
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