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夢幻水滸伝

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第二十八話 呉からその十

「それもな」
「難儀な話やな」
「難儀でもな」
「それでもか」
「そうした戦になるかも知れん」
「そしてそうした戦になってもやな」
「やるしかない」
 戦、それをというのだ。
「九州を完全に併呑するまでな」
「腕が鳴るけれどね」
 これまで黙って茶を飲んでいた玲子が不敵な笑みで言ってきた、右手には今も茶が入った湯呑みがある。
「戦なら、けれどね」
「自分としてはやな」
「延々と潰し合いみたいな戦は性分じゃないね」
「決着がつけばやな」
「それで終わる戦が好きさ」
 玲子の性格的にそうだというのだ。
「やっぱりね」
「そうやろな」
「どうしてもね、けれどだね」
「そや、向こうが降参するまでな」
「やるんだね」
「そうした戦になるかも知れん」
「最後の最後までだね」
 玲子も応えた。
「やることもだね」
「有り得るっちゅうことや」
「わかったよ、じゃあね」
「そうした場合もやな」
「やらせてもらうよ、戦って傾いて」
 そしてというのだ。
「暴れ回ってやるさ」
「天下一の傾奇者の舞も見せてもらうで」
「楽しみにしておいてくれよ」
「実際にな、ほな井伏と山本は明日の朝にや」
 芥川はあらためて二人に話した。
「五万の兵を連れて萩に行ってや」
「次の動きに備えていく」
「勝った場合も負けた場合もですね」
「こっちが勝った場合はすぐに僕等と海で合流してや」
 そのうえでというのだ。
「それからや」
「九州上陸ですね」
「そちらになりますね」
「負けた場合は本州、多分周防か長門に来る九州の奴等をな」
 その彼等をというのだ。
「迎え撃つんや」
「両方の備えをしておく」
「そういうことですね」
「そや、こっちは負けても後がある」
 芥川はあえてこのことも話した。
「本州での戦で巻き返せる」
「海の戦で負けようとも」
「それでも」
「そや、そのこともわかっておくことや」
 余裕があるということもというのだ。
「戦略としてな」
「後があるってことか」
「そや、そう思うと楽やろ」
「その通りや」
 中里はすぐに答えた。
「後やないってなるとな」
「どうしてもな」
「苦しいわ」
「所謂背水の陣やな」
「背水の陣は背水の陣で力を出せるけどな」
 項羽や韓信が使った、そうして戦いに勝ってきてはいる。
「けどな」
「出来る限りはな」
「余裕のある方がええわ」
「負けても巻き返せる状況の方がな」
「ええわ、ほなやな」
「呉に行くで」
「わかったわ、それぞれの道に行くか」
「そうしよな」
 芥川はこう中里に話してだ、それぞれが率いる軍勢も決めた。井伏と山本が率いる軍勢と自分が率いる軍勢もだ。 
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