DOREAM BASEBALL ~ラブライブ~
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合宿開始
翌日・・・
「まずはアップだが、いつもとやり方変えるぞ」
ランニングを始めようとしたところで止められる選手たち。剛は彼女たちをライトポールに集めるとこれから行うことを説明する。
「向こうにもポールがあるだろ?ここを往復を10本で・・・タイムは1分で行こうか」
「えぇ!?」
アップというよりトレーニングになっていることに嫌そうな顔をするものもいたが、全員がそう言うわけではない。やる気に溢れているものもおりそれを見ると自然と反発するような発言は出なかった。
「2グループでやってみよう。じゃあ・・・」
なんとなく真ん中っぽいところで第1グループと第2グループを決める。先に走るのは穂乃果、凛、花陽、にこ、ことり、その後に海未、絵里、希、真姫が走ることになった。
「はい、それじゃあ用意ドン」
「「「「「早ッ!?」」」」」
大して重要とは思ってないメニューなのでやり方は非常に雑。唐突に始まったランメニューに先頭グループが大急ぎで走り始める。
(凛がダントツで速いか。にことことりはイマイチ・・・花陽と穂乃果は悪くないけど・・・バッテリーとしては・・・)
ずば抜けて速い凛を見つつちょっとバッテリーを担っている花陽と穂乃果に物足りなさを感じる。特に花陽はずっと走らせていたのでもう少し頑張ってほしいと思ってしまう。
(あれだけ走れるなら凛に投げさせてみるか?球は速いだろうし、多少はいけるかもな)
選手たちが走っているのを見ながら今後のチームの戦い方も考えていく。そうこうしているうちにランメニューが終わると、すぐにストレッチを開始させた。
(ストレッチさせてる間にメニューをホワイトボードに・・・ん?)
ベンチにあるホワイトボードにその日の練習メニューを記載しようとしたが、あるものに気が付き外野でアップする9人をすぐに呼び寄せる。
「どうしたんですか?」
「どうしたんですか?じゃない!!なんだこれ?」
バンと叩いたホワイトボードを見ると彼女たちは目を点にしていた。1人の少女を除いて。
「それなら私が書きましたが?」
「お前かよ!!なんでだよ!!」
何食わぬ顔で手を挙げた海未に思わず突っ込む。彼女がイタズラをすること事態に驚いてはいたが、それ以上に内容が問題だったのだ。
「これ何のメニューだよ、どこのトライアスロンやる奴だよ」
書かれているのは彼女なりに考えたトレーニングメニューなのだろうが、その内容は明らかにおかしい。
・遠泳 10km
・ランニング 10km
・腕立て、腹筋 20セット
・精神統一
・バッティング
・守備練習
「遠泳10km・・・」
「そのあとランニング10km・・・」
「はい、せっかく近くに海もあることですし」
あまりのメニューに青ざめる海未以外の8人。その様子に気が付かない海未はいつも通りの態度で答えている。
「・・・マジでこのメニューでやってやろうか?」
「「「「「えぇ!?」」」」」
なんかからかってみたくなった剛の言葉に断末魔に似た悲鳴を上げる8人。その後絵里や穂乃果の説得で剛の予定通りに行うことになり、海未には一応厳重注意という形でこの場は収まった。
「海未ちゃんやめてよぉ」
「すみません。せっかくの機会ですから体力面も強化しようと・・・」
「でもあれはやりすぎニャ」
そんな会話をしながら芝生でアップを再開する穂乃果たち。その間に剛はメニューを書いていく。
(午後から和成さんたちが来るからその時に何を教えてもらうかだな・・・うちのネックなのは・・・)
しばしの時間思考した後、午前の部と午後の部のメニューを決める。練習メニューを書き終えた頃にアップを終えてベンチに戻ってきた少女たちに内容を説明し、早速メニューへと移っていった。
「ふぁあ・・・なんか眠てぇな・・・」
時刻は午後1時。そろそろ午後の部が始まるだろうと様子を見に来た徳川は眠たそうな表情でグラウンドへと足を向けている。
「ショート!!」
「OK!!」
近づくにつれて大きくなってくる甲高い声。その内容から今は何のメニューをやっているのかすぐにわかった。
「守備練習か。基本中の基本だな」
グラウンドの見えるところに来ると予想通り守備練習を行っている少女たち。外野に守備がついていないのを見たところ、内野の守備練習を行っていることが伺える。
徳川はグラウンドに入るのではなく、まずは外でどの程度のレベルなのか観察してみる。
「なんだ、あのショートヘアの子はセカンドか」
昨日可愛いと称していたのは凛のこと。彼女が着いているポジションを見て彼は首を傾げていた。
(てっきりあの金髪をセカンドに置いてると思ったが・・・あの子は肩がいいのか?)
セカンドには肩のいい選手を置く傾向にある現代野球。背丈の小さい凛をそこに置いている理由がイマイチわからない徳川はとりあえず様子をもう少し見てみることにする。
「サード!!」
「任せるニコ!!」
ボールを捕ってセカンドゲッツーの形を完成させる内野陣。その動きを見てこの布陣の理由がよくわかった。
(サードもちっこいけどスローイングが安定してる。セカンドも身のこなしが速い。肩もいいみたいだし、適任といったところか)
その後もノックをこなしていく少女たちの様子を観察するが、全体的に守備は鍛えられているようで、これといって何かを言う気にはならない。
(決勝でコールドになったって話だが、守備力というより投手力が問題なのか?)
マウンドにいるのは茶髪の少女とロングヘアの少女。彼女たちも守備力はそれなりにあるようで、負けた理由がイマイチわからない。
ガチャ
そこで徳川は一度見切りを付けグラウンド内へと入ってくる。それに気付いた剛や穂乃果たちが挨拶すると、彼は片手を挙げて答え剛の元に歩み寄る。
「剛、ピッチャーは投げ込ませるのか?」
「そうですね。最後の方に一気に投げさせようかと」
このグラウンドにはブルペンが両ベンチ前に2つずつ。室内練習場にもいくつかのブルペンがあり一斉に投げさせることも可能である。
「なら1人ずつ投げさせろ。俺が受けてやる」
「え?いいんですか?」
投手出身である徳川に彼女たちを間近で見てもらえるのはありがたい。お言葉に甘え、まずは花陽をブルペンに入らせ、他のものは守備練習を続ける。
「じゃあまずはやってみよう。球種は?」
「はい!!ストレートとスライダーとナックルとスプリットです!!」
その球種を聞いて1人の投手の顔が脳裏を過る。あと1つあればまさしくその通りだなとか思いながら、徳川は防具を着けてブルペンに入る。
「ほれ、ここに来い」
軽い肩慣らしを終えて投球を開始する。まずは無難にアウトローへのストレート。花陽は憧れの人物に投げることに緊張しつつそれを投じると、徳川はいい音を響かせキャッチングする。
(スピードの割りに沈みが少ないな。かなり回転がキレイだ)
その後も花陽の多彩な球種を受けつつそれぞれのボールの感想を抱く。その後に海未、絵里、にこのボールを受け終えると、時間も時間なので練習が終了になる。グラウンド整備する少女たちとは離れたところで、途中からやって来て守備を指導していた八崎と徳川は、剛にそれぞれの感想を伝えていた。
「守備はいいな。全体的に纏まってる」
「もう少し練習させればノーエラーで大会も乗り切れるんじゃないか」
まずは守備の評価。これは2人とも非常に高い。多少悪い点もあるようだが、全体的には十分な力を持っている。
「問題はピッチャーによって守備力が変わりすぎることだな。特に矢澤と絢瀬、あの2人が守備から抜けるのは大きい」
三遊間の重要ポジションを担っている2人を動かさなければならない。それがどうにも引っ掛り不安を拭えないらしい。
「てかあの2人に投げさせる理由はなんだ?小泉以外の投手はどれも大したことないじゃないか」
「それはですね・・・」
剛は1人の投手に負担をかけすぎることがどれだけリスキーなのか知っている。だから例え力が劣っているとしても人数を擁して誤魔化してしまおうとしていたのだ。
それを聞いた2人の先輩は大きくタメ息をつく。
「お前、そんなお利口ちゃんでよく甲子園で勝てたな」
「え?」
「お前は選手のことを考えてるようで考えてない。お前はあのことから目を背けたいだけだろ?」
「「でもそれで後悔するのはあいつらなんだぞ」」
2人の声が被った。確かにその通りなのかもしれない。自分は過去のしがらみの中でいつまでと囚われている。ただその拭えない過去から目を背けるために、出し惜しみをしていたに過ぎない。
「じゃあ・・・どうすればいいんですか?」
勝つための投手はいる。だが1人に頼りすぎてはまたかつての過ちを繰り返す。多くの監督を悩ませるジレンマを前に、彼は何が正解かわからなくなった。
すると徳川が八崎に何かを耳打ちする。それに彼は驚いたが、不満そうな顔をしつつも頷いてくれた。
「剛。明日の午後、シートバッティングを入れてくれ」
「シートバッティング・・・ですか?」
守備に野手を着かせた実践的な打撃練習。だが強化練習を名目にしている彼としては、まずはゲージを使い量を打たせたい。
しかしそれに徳川は耳を傾けない。彼はどこかに電話すると、再度彼の方を振り向いた。
「明日は俺が投げてやる。心して準備しろ」
「え?和成さんが?」
突然の提案に困惑せずにはいられない剛を尻目にその場から立ち去っていく先輩方。呆然としていた彼が正気を取り戻すのは、穂乃果に呼ばれてからだった。
後書き
いかがだったでしょうか。
ちょっとしたイベント的な感じで次の話は行こうと思います。
今回の合宿は穂乃果たちよりも剛に刺激を与える感じになりそうです。
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