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DOREAM BASEBALL ~ラブライブ~

作者:山神
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2人の先輩

沖縄のある場所・・・

「もうすぐか、あいつが来るのも」

ユニフォームに着替えて真夏の太陽の下に現れた大男。その身長は190cm近くあり、周りにいる同じ格好をした男たちを見下ろしていた。

「カズ、早くアップしようぜ。あいつに社会人野球のレベルを見せてやろうぜ」

彼より頭半分小さなガッチリした青年が立ち止まっている彼にそう叫ぶ。それを聞いた大男は軽く返事をするとゆっくりとグラウンドに向かう。

「しかし剛が女子高の先生とは・・・世の中何が起こるかわかんねぇな」

のんびりとした雰囲気を身に纏った彼はグラウンドが見えるとすぐさま走り出し、道具を置いて外野でアップを開始しているチームメイトの元へと駆けていった。
















「海だぁ!!」
「海未は私ですが?」

合宿場所である真姫の別荘へと着いた穂乃果たち。穂乃果は別荘の目の前にあるプライベートビーチを見るとハイテンションで叫んでおり、それに海未が珍しくボケを咬ましている。

「遊んでないで荷物整理しろ。このあと明日から借りるグラウンドを見に行くからな」

部の道具をリビングの隅に纏めておいている剛がそう指示をする。少女たちは返事をすると、寝泊まりができる部屋に荷物を置き、準備ができた者からリビングに再度集まる。

「んじゃ、早速行ってみるか。明日からそこで練習させてもらうから道とかも覚えておけよ」

先陣を切って歩き出す。それの後ろに少女たちが付いていく光景はなかなか珍しいような気もするが、周りに人もいないので特に注目を浴びることもなく進んでいく。

「グラウンドまでどれくらいなんですか?」
「徒歩5分」
「「「「「近ッ!?」」」」」

あまりにも近すぎて逆にちょっと驚き。真姫もそんな近くに野球場があったか心当たりがないようで首を傾げていた。

「ほら、あそこだ」

すると早速グラウンドが見えてきた。それと同時に大きな声で練習をしているのが耳に入ってくる。

「あら?ここに那覇電気なんて書いてありますけど・・・本当に大丈夫ですか?」

見たところ企業チームの所有物と思われるグラウンドにまさか間違いではないかと不安になる絵里。だが剛は全然気にした様子もなくグラウンドに近寄ると、その近くにある管理室の前に立つ。

「失礼します」

ノックをして中に入っていく監督を見届ける生徒たち。しばらく待っていると剛とふくよかな体型の優しそうなおじさんが外にやって来た。

「こんにちは!!」
「「「「「こんにちは!!」」」」」
「あぁ、こんにちは」

優しげな笑みで少女たちを迎え入れた人物はこの那覇電気の監督らしい。そこから話を聞いていくと、明日からの数日間このグラウンドを貸してもらえるらしくその挨拶と高いレベルを見て刺激を受けてほしいということらしい。

「これからは自由行動にするから、どんな練習をやっているのか色んな角度から見てほしい。何かあったら俺は本部にいるから声をかけに来てくれ」
「「「「「はい!!」」」」」

指示を受けそれぞれ思い思いのところに散っていく選手たち。それを見た那覇電気監督は微笑ましいものを見たように笑みを浮かべる。

「いやはや、あんな少女たちが野球をしてくれるとは、我々の頃は想像できなかったよ」
「そうですね。俺もちょっと驚きましたよ」

女子野球は剛の頃からあったがそちらにあまり興味を寄せていなかったこともあり知らないものは多い。2人はそんなことを思いながら練習に取り組む男たちを見つめていた。

「徳川と八崎を呼ぶか?久々だろう」
「いや、練習中ですし・・・」

遠慮気味に断ろうとしたが気にするなの一言と共にアナウンスを入れる。それが響くと2人の人物がケースノックを行っているグラウンドから抜け出し本部席へとやって来た。

「チーッス」
「お疲れさんです」

適当なノリで現れた大男とガッチリ体型の男。剛は2人を見るや否やすぐさま直立不動で立ち上がり頭を下げる。

「ご無沙汰してます!!和成さん!!駿平太さん!!」
「んなガチで挨拶しなくていいよ・・・」
「相変わらずだな、お前は」

どこか緊張気味の剛とそれを宥める徳川と八崎。それを見て監督は気を効かせてか席を外す。
その姿を確認してから徳川と八崎と呼ばれた男が席に付くと、剛も同じように席に付く。

「どうだ?足の具合は」
「走ったりはできないですけど、日常生活には影響がないところまでは治ってきました」

ちょっとずつリラックスしてきたのかいつも通りの雰囲気に戻りつつある剛。それに気を良くしたのか徳川と八崎は色々と聞き出してみる。

「球場の周りにいる子たちがお前の教え子か?」
「あのショートヘアの子可愛いな、今度紹介してよ」
「和成さん結婚してるじゃないですか・・・」

どうやら穂乃果たちに気が付いていたらしく話題にあげてくる。本気なのか冗談なのかわからない徳川の言葉を流しつつ、会話を続ける。

「今回は自分の無理なお願いを聞いて頂いてありがとうございます」
「気にしなくていいぞ。どうせしばらくは軽い調整の予定だったしな」
「都市対抗も早々に負けちまったしな。選手権も予選終わったし、今は疲れを取ることが先決だよ」

比較的真面目な性格の八崎もおちゃらけムードだった徳川も野球のことになれば本気だ。負けるのは嫌いだし、やるからにはベストなプレーを心掛けたいと常に考えている。

「光の妹がいるんだったか?」
「そうですね。それにUTXは全員がかなり鍛えられていることもあって2人にアドバイスがもらえればなと」

今回の目的はグラウンドでの練習時間の確保だけではない。実力のある社会人野球チームに所属する先輩2人に彼女たちのプレーを見てもらい、アドバイスがもらえればと企画したのだった。

「野球は経験値がものを言うし、できてまだ浅いチームなんだろ?そんなんで3年間やって来た奴等を倒せるのか?」
「それはなんとも・・・ただ、ベストは尽くすつもりです」

予想通りの台詞に思わず笑ってしまう2人の先輩。しばらく笑い落ち着くと2人はスッと立ち上がる。

「午後から時間があれば見に来るからよ。ただ仕事の方も今色々詰まってるからできる限りでって感じだけどな」

通常の社会人野球をやっている企業とは異なり選手たちも普段は仕事に従事することが多い那覇電気。この日のように午後から練習する日もあれば定時後に練習を行うこともある。

「はい!!よろしくお願いします」

忙しい中時間を作ってくれた先輩方に深々と頭を下げる剛。徳川と八崎はそれを直させた後、練習へと戻るため本部席を後にした。

















日が暮れて夕日が沈み始めた頃、練習も終わりに近付いたこともあり剛は穂乃果たちを集めてミーティングに入っていた。

「各々感じたことはあるだろうし、刺激を受けたこともあるだろう。で、ここでお前たちに紹介したい方たちがいる」

突然敬語になったことに違和感を覚える穂乃果たち。剛が招いた人物たちを見た瞬間、野球マニア2人の顔がパッと明るくなった。

「俺の高校時代の先輩でこちらが徳川和成さん、こちらが八崎駿平太さんだ」

本部席で会話をしていた2人の先輩。明日から時間があれば見に来てくれるとのことだったので事前に紹介しようと考えたのだが、それがにこと花陽には悪影響を与えてしまった。

「徳川さんと八崎さん!?すごい本物だよにこちゃん!!」
「えぇ!!まさかこんなところで会えるなんて!!」

大人しそうな見た目の2人が手を取り合って大騒ぎしているのを見て呆気に取られる徳川と八崎。どういうことか剛に説明を求めようとするよりも早く、2人は彼らに迫っていた。

「夏の準々決勝と準決勝の好投すごかったです!!」
「成瀬さんからのフェンス直撃の先制打!!今でも覚えてます」

圧されまくっている先輩方に申し訳なくなった剛がずっとしゃべっている2人を引き剥がし落ち着かせる。後ろでそれを見ていた仲間たちは何がなんだかわからず呆然と立ち尽くしていた。

「えっと・・・詳しいことはにこと花陽に後で聞いてもらえばいいから、簡単に紹介させてもらいます。
徳川さんは俺の1年の時のエースで一昨年まではプロでプレーしてました」
「プロ・・・ってプロ野球!?」
「えぇ!?すごい!!」

今度はさっきまで静まっていたメンバーが騒ぎ始めたのでそれを静かにさせて話を続ける。

「それで、八崎さんは本職はショートだが、高校時代はサードを守ってました。2人ともクリンナップを担っている担ってたし内野も外野もこなせるので、明日から時間がある際に見に来てくれるので色々教えてもらってください」

そう話してから2人に軽く挨拶してもらおうと思ったが、先のにこと花陽とのやり取りのせいで放心状態だったためまともな挨拶ができなかった。

(今度から知り合い紹介する時は事前にこうなるかもって伝えておこ・・・なんか申し訳ないわ)

いつもテンションが変わってしまう2人の対策を考えつつその日はグラウンドを後にした剛。目前まで迫った全国大会、果たして音ノ木坂は優勝することができるのか、この合宿にかかっていた。



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
次から合宿開始です。
彼女たちが成長できるかどうか、見届けてください。 
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